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1107・第二王子と魔導




 Side:???(魔導)



 流石にここまで役に立たないとは思わなかったね。王太子に比べて頭が悪いとか、魅力が無いとか言われてるらしいけどよく分かる。ドラゴニア王国にちょっかいと言うか、戦争を起こす為の火種を仕込みに来たっていうのに、満足にその役目も熟せやしない。


 ま、あの女達が居たんじゃ色々と考えないといけないんだけどさ、それにしても短絡的に喧嘩を売ってくれたもんだよ。気配しか感じないっていう、明らかな強者相手にあんな事をするなんて……。戦えもしないヤツはこんなものか。



 「それにしても<魔導>。貴様が先ほど探索者ギルドで言っていた事は本気か? 我が国に楯突くならば覚悟しておけよ?」


 「何を言ってるんだか? 私はそもそも王に雇われてるんであって、お前さんに雇われてるんじゃないだろ。更に言えば、契約で既に書かれているんだよ。私が何か不利益を被る場合は、自動的に契約を解除出来るってねえ。私の力、つまり<アーククラス>の力を自分勝手に使えるとでも思ったかい? 世の中そんなに甘くはないんだよ」


 「………チッ!」



 この王子は駄目だね。思慮深さが足りなさ過ぎる。簡単に口を開くヤツは駄目さ。道化としては優秀だけど、王族としては底辺だね。挙句ドラゴニアに喧嘩を売る為の揉め事一つ起こす事も出来てない。このまま帰れないだろうし、どうするんだろうねえ。


 っと、考え事をしてたら、宿に誰かが戻ってきたようだ。私達以外となると書簡を届けに行っていた外務卿しかいない。向こうの騎士を借りれば、守りは何とかなるだろ。



 「殿下、戻られておりましたか。こちらより早く戻られるとは何かありましたかな? ……そういえば近衛の者達は何処に?」


 「死んだ」


 「は?」


 「死んだ!」


 「………どういう事で?」



 外務卿がこっちに顔を向けているけど、ありゃ説明しろって表情か。私は【空間魔法】の応用で自分の周囲を調べられるけど、いちいち男の顔を詳細に把握したか無いんだけどね。まあ、目を〝使う〟訳にもいかないから仕方ないんだけど。



 「探索者ギルドでディビルトに恨みを持っている奴等を焚きつけるって決まってたろ? その策を実行しに行ったら、喧嘩を売った相手が冗談じゃない化け物だったというだけさ。で、尻尾巻いて逃げ出してきたってトコだよ」


 「化け物?」


 「そうさ。相手は気配しか分からない化け物だ。そのうえ周りにも怪しげなヤツが居た。そもそも明らかに自らの力を隠蔽している女が二人、それ以外には大した事のないのが三人居たよ。そっちは<ハイクラス>ぐらいか」


 「<ハイクラス>程度は相手にならぬであろうが、その実力を隠している者が分からぬから戻ってきたと?」


 「違うよ。力を隠している危険なのが二人。そして第二王子が喧嘩を売った、気配以外が完全に分からない化け物が一人だ」


 「………その隠蔽している二人と化け物の違いが、私には全く分からないのですがな」


 「その二人は私が探って〝隠蔽してるのが分かる〟相手だ。もう一人は気配以外〝何も分からない〟相手なんだよ。【空間魔法】を操る私が、気配以外〝何も分からない〟んだ。これで分かったかい?」


 「……つまり、どんな相手かも理解出来ないと?」


 「正しくは、どれだけの魔力で、どれほどの生命力を持ち、どんな精神をしているか完全に不明だという事さ。そもそも隠蔽している二人だって、明らかに隠蔽している事が分かるだけだ。その隠蔽を突破できた訳じゃない。それはつまり、相手の強さが不明だって事さ」


 「ふんっ!! 相手の強さが分からぬからといって、戦いもせぬのは如何いかがなものかと思うがな?」


 「バカだねえ。私が何も分からない以上、相手は<アーククラス>かそれに近しい実力者に決まってるだろう。そうじゃなきゃ、あり得ないんだよ。ここまで説明しなきゃ分からないのかい」


 「「「「「「<アーククラス>!?」」」」」」


 「今ごろか、話にならないね。そもそも近衛は探索者ギルドで殺されたけど、その方法が不明なんだよ。つまりどうやってか分からないが殺されたって事だ、私ですら全く分からない。気付いたら生命力が完全に失われていた。唯それだけしか分かっていない」


 「つまり相手は理解不能な攻撃で、いつでもこちらを殺せると? ……そんな相手に喧嘩を売ったのですか?」


 「知らん!! ガキを連れていたから都合の良い相手だと思っただけだ! 仮にお前が同じ立場なら、ガキを連れた女が<アーククラス>に近しい実力者だと思うのか!?」


 「それは………」


 「まあ、分からないね。ただ、いきなり「魔獣のエサにしてやるから寄越せ」なんて言って子供を奪おうとしたのは、いったい何処の蛮族だ? とは思ったけど」


 「いったい何をしておられるのですかな?」


 「私は揉め事を起こそうとしただけだ!! 命令に従って仕事を熟していただけではないか!」


 「それにしても、やり方というものがあるでしょう。<魔導>殿がおっしゃるように、それでは唯の蛮族ではないですか。殿下は我が国を野蛮な国にされたいので?」


 「そんな事があるか! それよりも相手が<アーククラス>だろうが、我が国の近衛を殺したのだ! 罪に問うて始末してしまえば良かろう!」


 「そもそも殿下が喧嘩を売ったのが先でしょう。そのうえ子供を魔獣のエサになどと言われて怒らぬ親は居ません、当たり前の事ですぞ? 我が国が蛮族国家だとののしられるだけですな。話にもなりませぬ」


 「何だと!?」


 「何故そんな事もお分かりにならぬので? 先に手を出したのはこちらであり、そのうえ子供をエサにしようとするなど野蛮の極み。近衛が殺されたとしても引き下がるしかない失態だと分かりませぬか? むしろ命が残っただけでも感謝しなければなりませぬぞ」


 「な!? 王族である私の命を奪うだなどという事が、許される筈があるまい!」


 「それは「普通なら」という言葉が手前に付きますな。普通なら許されませんが、我が国が蛮族扱いされかねぬ失態を犯したとなれば……見捨てられても文句は言えませぬぞ。それ程の失態であったと何故理解できぬのです?」


 「………そんなバカな、高が探索者のガキではないか。そのうえ人間種だぞ」


 「は? 人間種?」


 「ああ、言ってなかったか。相手は人間種だよ。ただし見た目は、としか言えないんだけどもね。何故なら私でさえ把握出来ないくらいだ、人間種に見えるだけの全く別の種族である可能性もある」


 「………そうですか。何処か人間種の国と手を結び、<アーククラス>を借り受けている可能性は?」


 「そんな事は知らないよ。それを探るのは私の役目じゃないし、今回ドラゴニアに来たのは護衛の為だけだ。それ以外はあんた達のやるべき事だろう? 少なくともこの国には、今現在<アーククラス>が二人以上居る。それは間違いない事だ。つまり喧嘩を売ってここの王が出張って来たら、私達は尻尾巻いて逃げるしかない」


 「「「「「「………」」」」」」



 実際には逃がしてくれるかも分からないけどね、私は私を安売りはしないから黙っておくよ。それにしても、あんな化け物が居るなんてね。相変わらず世の中はふざけたもんさ。どれだけ鍛えても上が居る。


 いったい何処まで強くなれば、自分の命が脅かされない日が来るのかねえ。ま、今でも半分以上は達成出来てるんだけど、今日の相手は弱かった頃の自分を思い出したよ。絶対に勝てない相手を目の前にした気分だった。


 あの頃は<ノーマルクラス>だったから仕方ないけど、<アーククラス>である今、同じものを感じる相手に会うなんてね……。アレは本当に<アーククラス>なんだろうか?。


 今さらながらに恐くなってくるよ。


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