1102・監視結果と話し合い
Side:ミク
「ただいまー」
「おかえりー。それで、どうだったの? ウェルトゥーザとかいう国の奴等は。そいつらを見に行ったのは良いけど、見つかったっていうのは無いわよね?」
「<輝剣>とかいうヤツのすぐ近くまで寄ったり、視界に入ったりとか色々したけど見つからなかったね。仮にもし気付いてたら絶対に反応する筈なんだけど、それも無かったし。だから気付かれてはいないと思う」
「それなら問題無さそうですね。三人は既に宿の部屋で休んでいますし、ニニもそこまで何かがある訳ではないようです。自分を殺せと言った者ですからね、救出されたとはいえ思い出したくもない相手でしょうから」
「多少は影響があったでしょうけど、ニニなら乗り越えられるわ。ルルの方は命じたかどうかはともかく、元凶は既に潰されてるからね。あっちは特にどうこうは無いでしょ、そんな感じでもないし」
「まあ、意外に図太いというか、思っているほど繊細ではありませんね。とはいえ、ルルはそれでいいと思います。ニニは長く一人で生きてきた部分があるからでしょうし、それはゆっくりと回復している筈ですし」
「そうね。ベルもフィルもそうだけど、ニニもまだ子供なのよ。その子供相手に信じられない命令を出す異常者がアレって事でしょ。なんだか無性にブチ殺したくて仕方ないんだけど?」
「言いたい事は分かるけどね、この星じゃ勝手が出来ないからなぁ……。私達はあくまでも戦争での被害を減らせと言われてるし、それを頼まれてるだけなんだよねー。そこが今までの星と違うというか、さっさと殺して解決とはいかないし」
「本来さっさと殺して解決というのがおかしいんですけどね。いつの間にか私も慣れてしまって、今の状況が少々面倒になってしまっています。本来は法に則って粛々と罰を与えるのが正しいあり方の筈です………多分」
「多分って……」
「いえ、最近本当にそれが正しいのかと疑問を持つ事もありましてね。法に明記されている罰を与えたところで犯罪は無くなりませんし、幾らでも悪徳な者は湧いてくるのですよ。だったら法と罰とは何なのでしょうね? さっさと殺した方が次の被害が防げると思うのですよ」
「犯罪者の再犯率って結構高いし、罰を与えても被害者が出る。確かにさっさと始末しておけば、次の被害を防げるというのは間違い無いのよね。それに殺されるとなれば二の足を踏むヤツも居るし」
「全員では無いでしょうけど、減るのは間違い無いでしょうね。一度でも犯罪を行った者は高い確率で二度三度としますから、最初から始末しても良いような気がしてくるのです」
「何かティアも私達の側に染まってきたわねえ、とはいえ間違ってないわよ。それに、そういうのを1000年に渡って見てきたから、人間種というものに価値を見出せないの。私は」
「善なる者や真面目で誠実な者が苦しむのが、人間種の作る社会だ。そんなのは何千年や何万年経とうが変わらない。ある意味で真理みたいなものさ。人間種という者が醜いんだよ。それが大前提だ」
コンコン!
ノックの音が鳴ったので返事をすると、部屋の扉を開けてファーダ達が入ってきた。中に入ってきた二人と二匹は、ベッドや椅子に座ってゆっくりとしつつ報告を行う。
『そろそろドラゴン素材はいいって、そう王城の人が言ってたよ。何でもこれ以上持って来られると国庫が厳しいんだって。ドラゴンも今日で14頭かな? 確かにそろそろお金が厳しいかもしれないね』
「それでも14頭も買えたのですから頑張ったのでは? ハッキリ言って大変ですし、一頭で大金貨5枚ですからね。既に70枚も散財しているのです。これ以上は苦しいでしょう」
「そう考えると、私達の方は随分と儲かったわねえ。それに竜人国のダンジョンのドラゴンも素材として手に入れてるんでしょう? 後はそれを干し肉にしたらどんな味がするかね。美味しいとは限っていないし、アルデムのドラゴンとは種類が違う可能性もあるわ」
「食べた感じは普通かな? おそらくだけどアルデム程の物じゃないと思う。それでも美味しいとは思うけどね。普段食べるなら夢中にならないこっちの方が良いかもしれない」
「え? ……その話し方だと既に誰かに食べさせたって聞こえるけど?」
「フィルに食べさせたよ? それで夢中になるような事は無かったと分かったってわけ。それでも美味しそうに食べてたから、お肉としてのレベルは高いと思う。火竜だからその程度なのかもしれないけど」
「つまり、もっと潜れば別の竜が出てくると?」
「可能性としてはありそうなんだよね。そもそもファーダ達は51階までしか行ってないし、52階への階段を見つけてもいない。もちろん本格的に探してないからなんだけど、火山の地形だけに探すのが難しいというのもある。パッと見では無かったんだよね?」
「無かったな。そもそも火山なうえ噴石が飛んでくるからもあるのだが、思っているよりも面倒な地形で探し辛い。それに結構な群れでもあるので、倒す際はだいたい二頭か三頭を倒す事になる。おそらくだが<グランドクラス>か<アーククラス>がチームを組まんと進めんだろう」
「そんな危険な所に行く奴が居るとは思えないわね。それにこの国の<アーククラス>が無理ってハッキリ言ってるもの、行く気になるヤツは居ないんじゃない?」
「だろうな。俺達がダンジョンに行く必要も無くなったし、それでも行くなら<若返りの薬>と<再生薬>ぐらいだろう。ちなみにだが、ここの王に聞いたところ<若返りの薬>は30歳ほど若返るらしいぞ。既に10本渡したから、300歳は若返ったんじゃないか?」
「それだけでなく、この国の宰相にも3本渡したがな。我らは要らんのでタダでくれてやったが、その御蔭で色々と便宜を図ってくれるであろう。今のところは要求するものが何も無いがな」
「その情報はどうなの? そろそろ貴族の間に流れそう?」
「こっちに言ってくるかは知らんが、少なくとも<若返りの薬>の話は既に流れている。ま、取って来いと言ってきても取りに行く気など無いがな。俺達がいちいち頼みを聞いてやる義理は無い」
「それより、こっちでは阿呆が喧嘩を売ってきたみたいだな? それはどうするのだ?」
「いつもの通りだよ。なーに、皆が寝ている間に片付けるから、明日の朝をお楽しみにって感じかな。あの調子だと絶対に諦めないだろうし、手下はまだ居る。私達がダンジョンから戻る際に出会った奴等がね」
「成る程、あの者どもか。我らが地上に戻った際に、こちらをジロジロと見てきた奴等が居たのだよ。透明な触手を伸ばして監視していたが、あのウェルトゥーザの者どもが泊まっている大通りの宿に入って行った」
「そもそも奴等ってお忍びの体で来てる筈なんだけど、どうやって竜人国に喧嘩を売るつもりなんだろ? それも自分達が立場を悪くしない形で」
「さあ? どのみち最後には適当な屁理屈を捏ね回して喧嘩を売るんじゃないかしら。だから考える意味は無いと思うわよ? そもそも私達は止める立場じゃないし」
「それは確かにそうですね。私達は被害を減らす立場であって止める立場ではありませんし、それは政治の仕事です」
だよねえ。それをしなきゃいけないのは王や宰相であって私達じゃないんだし、ここは高みの見物かな? そもそも知っている事を全て伝える必要なんて無いし、そういった情報収集も国のするべき事だ。
むしろ諜報の連中はウェルトゥーザの者どもが来ている事を掴んでるのか分からない。私が部屋の中に入って監視している間も、外にはそれっぽい反応も無かったし。もしかして竜人国の防諜態勢って穴だらけ?。




