1100・先程の者達の素性
Side:ニニ
すっごくこわかったけど、ミクがたすけてくれたからだいじょうぶだった。あのにんげんぞくにみつかったら、ニニころされちゃうんじゃないかとおもってたけど、やっぱりミクのちかくにいるとまもってもらえる! ほんとうによかった。
「いったい何があった!? 急に机や部屋が綺麗になったの……。お前達が居るという事は誰がやったかは分かったが、いったい何の為に綺麗にしたんだ?」
「それよりも何処かの王族っぽいのが来てたけど、何でギルドマスターが出て来ないのかしら? もしかして逃げてたんじゃないでしょうね?」
「は? 王族……?」
「金糸と銀糸で派手に飾りつけた、小金持ちの成金が着るような服を着ていた者です。名は名乗らなかったので不明ですが、その男の後ろで控えていた者は<きけん>と呼ばれていました。それなりには出来る者でしたね」
「きけん? キケン、危険、棄権………<輝剣>!! そいつはウェルトゥーザ王国の<アーククラス>である<輝剣>か!! ならば、お前達が見た王族というのは、ウェルトゥーザの王太子であるフィスルトム・バルグクス・ウェルトゥーザで間違い無いだろう」
「ふーん……アレがここの王以外の<アーククラス>ねえ……。大した事のないザコが随分と調子に乗ってたけど、<アーククラス>って大した事が無いみたいよ? 私達までザコ扱いされるから止めてほしいわね」
「そういえば<アーククラス>なのはお前達もか。<輝剣>も思わなかっただろうよ、目の前に居るのが自分と同じ<アーククラス>だとはな。そのうえ位階が同じでも実力は別だ。どのクラスでもそうだが、強い者は強いし弱い者は弱い」
「それはそうでしょうが、あの<きけん>とやらには大した強さなど感じませんでしたよ? アレならドラゴンと戦っても負けるかもしれません。もちろん秘匿している力もあるのでしょうけど、隙があり過ぎます」
「ティアも瞬殺できるよ。アイツ精神的な防壁も碌に無いし、おそらく剣士として強いんだろうね。高がその程度なら殺す方法なんて幾らでもある。それこそ暗殺すれば済むし、その方法も一つじゃない。何であの程度のを殺さないんだか……」
「お前達は<アーククラス>だからそんな事が言えるのだ。下のクラスの者にとっては簡単な事じゃない。そもそも近付こうものならすぐに見つかるだろう。生半可な事ではどうにもならんのが<アーククラス>だ」
「その<アーククラス>である私達に随分と喧嘩を売ってきた奴等が居たんだけど………それは気のせいだったのかしら?」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
そんなことしたんだ。このりゅうじんのひとたちも、さっきのとおなじでわるいやつなのかな?。
「それは勘弁してくれ。この国にも色々と事情があるのは知っているだろう」
「それで? さっきの<きけん>? とかいうヤツに威圧されて全く動く事も出来て無かったけど、私達も最初からああした方が良かった? 何ならそのまま心臓を止めてやってもいいけど?」
「ああ、すまん。本当に悪かった。別にお前さん達に甘えていた訳じゃないんだが……」
「やっている事は単なる甘えですからね、言い訳は結構。私達は竜人国の探索者を〝そういう者〟としか思っていませんので。貴方がたのお仲間がやった事なのですから、当然でしょう?」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
なんかまわりのひとたち、だまっちゃったみたい。かおがゆがんでる? から、きっといわれたくないことを、いわれちゃったんだね!。
ニニにもあたらしいとうろくしょうがもらえたから、さっそくくびからさげた。きょうから<ぶろんずらんく>だ!。
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Side:???(輝剣)
「くそっ!! お前がもっと役に立っていれば、あんな愚か者どもに偉そうな口を叩かせなかったものを!!!」
いちいち五月蝿いヤツだ。そもそも私の剣を軽く摘むように持った、あの化け物の事が分からんとは………頭が悪すぎる。
本当の意味で全力ではないし不意打ちでも無いが、それでも<輝剣>と呼ばれる私の速度を捉えていたという事だぞ。少なくとも相手が避けられるようになど抜いていない。
にも関わらず、あの女は指先であっさりと私の剣を摘んで止めたのだ。それがどれ程に異常な事なのか、この愚か者は全く理解していないらしいな。しょせんは外戚の力で偉そうに振舞っているだけの小僧か。
それはともかく、あの女以外も色々と力を持っていると見て間違い無い。騎士の首を刎ねたと思わしき女も、どうやったのかが全く分からなかった。気配も空気の揺らぎも無く、私でさえ気付かぬ何かで切られたとしか思えん。
まず間違いなく切ったのは女の子を抱えていたあの女だろう。そして私の剣を止めた女といい、おそらくは<アーククラス>だ。でなければ、あそこまで理不尽な力を持ってなどいない。
「殿下、お帰りなさいませ。……何かございましたか?」
「何かも何もあるか!! あそこまで虚仮にされるとは思わなんだわ!!」
おっと、宿に戻ってきていたのはいいが、部屋に入った途端に当たり散らし始めたぞ。相変わらず癇癪持ちのままか。普段は王を守っているので、この小僧との接点は無いのだが、やはり前に見た時と何も変わっていないらしい。
私が思案しながらも適当に見ていたら、当たり散らされている外務卿がこちらを見てきたな。「何故こんなに荒れているのか説明しろ」というところか。
「探索者ギルドに行った際に、ここの探索者だと思われる者達と絡んだだけだ。そこの王太子が何故か猫耳の小娘を掴もうとし、その手首を探索者の女に握られた。そこからだったかな?」
「そうだ!! あの小娘を今すぐ始末してこい!! 今すぐにだ!!」
またバカみたいな事を言い出したな。頭がおかしいのか、コイツは。今回のお忍び訪問は竜人国にちょっかいを掛ける為のものだろうが。いきなり敵に回すような事をしてどうする? まだ召還者どもの鍛練すら終わってないのだぞ。
「いったいどういう事でございますか? そのような事をすれば、我らはここで殺されまするぞ。兵も軍も用意していないというのに、どのように御身を守られる気で? こちらが手を出せば必ず報復をされるでしょうな」
「何を言っておる! あれは召還された者だ! 私が始末しろと命じた【浄化】スキル持ちの小娘だぞ!! 居なくなっていたと報告があったが、こんな所に居たのだ! 我が国の者を勝手に攫ったとでも言えばよかろうが!!」
ほう? 確かに【浄化】スキル持ちが居なくなっていると聞いたが、あんな子供だったのか。しかしそれを正直に話そうとするとは、コイツはバカ過ぎるな。他の者達も呆れているではないか。その程度も分からんとは……。
「仮にそうであったとしても、今はここ竜人国に居るのです。手を出せる訳がありませぬ。「言い掛かりだ、貴国の者だと証明しろ」と言われればどうするおつもりですか? そのような事は不可能ですぞ」
「私が言っているのだ、返すのが当たり前であろうが!!」
駄目だな、コイツは。話にもならん。第二王子が優秀で、そっちの派閥が強くなってきたから慌てているのだろうが、あまりにもお粗末なヤツだ。こういうヤツは放っておいても転落するだろう。近付かんに限る。
「そのような事は不可能です。何より、その小娘が本当に召還者であるのならば、王太子殿下が不良兵士に犯させてから処刑しようとした事も知られておりますぞ。それでは左様な噂が流されても文句は言えなくなりまするが……本気でされるおつもりで?」
「うっ………」
そんな事を命じたのかコイツは? 頭がおかしいにも程がある。
そういえば第7軍に入れた役立たずも、他の所に入れた女どもも消えていたと聞いた。どうやら他国に連れて行かれたと見て間違い無いな。第7軍のヤツを何故連れて行ったのかは知らんが、おそらくやったのはフォレスターの<黒い悪魔>だろう。
「ええぃ!! では子供を連れた探索者の女を殺すか捕まえてこい! 奴隷の首輪を使えばすぐに済むであろう! 探索者でしかも人間だ、いちいち竜人国が守りなどするまい!!」
チッ! 面倒な事を言い出したな。




