1099・探索者ギルドにて
Side:ルルラーナ
私達が探索者ギルドで新しい登録証を待っていると、何か金と銀で出来たキンピカ服を着た頭のおかしいのが入ってきた。もしかして何処かの王族か何かだろうか?。
本物の金銀なら高いんでしょうけど、テラならキンピカ服なんて最高に趣味の悪い物の一つでしかない。品が無さ過ぎるチンピラの服なのよね。
そこまでとは言わないけど、それでもキンピカ服を着ている男の服はダサい部類に入る。それよりも、そのダサい服を着ている男の後ろに居るヤツが、周りに何かプレッシャーを放ってるんだけど。アレって間違いなく威圧よね?。
私達だって圧を受けているけど、それでも動けない訳でも話せない訳でもない。何故ならミクから威圧されても動ける訓練を受けたから。あの時の恥ずかしい結果が無ければ、今も周りの連中と同じく怯えてたと思うわ。恥ずかしかったけど!。
私達はミクから【念話】が飛んできて、「普段どおりの雑談を続けろ」と言われたから続けてるんだけど、さっきからニニが相槌しか打っていない。だから多分だけど、あの王族はニニが召還された国の王族の筈。だから雑談を続けろと言ったんだと思うわ。
「それにしても、何処も変わらないのならば見に来る意味は無かったな。どうやら我が国の<アーククラス>が随分と迷惑を掛けているようだし、ここで………どういう事だ?」
キンピカ服のバカがニニに気付いたらしい。ニニは顔を伏せてしまったが、王族のヤツはツカツカとこっちに来てニニに手を出そうとした。しかしその手首をミクが握って止める。
「私の仲間に何をしようとしている? お前が誰かは知らんが、私の仲間に手を出すというならば容赦はしない」
「なに? 貴様、私が何者かも分からずに手を出したのか。万死に値するぞ。……やれ」
「「「「ハッ!」」」」
後ろに居た男じゃなく、その更に後ろに居た騎士っぽい奴等が剣を抜いた。その直後、その騎士達の首が飛ぶ。あっさりと宙を舞った騎士の首は、探索者ギルドの床に落ちて転がっていく。その後、ゆっくりと胴体の方が後ろに倒れた。
「あらあら、バカねえ。下らない事をしなければ死ぬ事もなかったでしょうに。仕えている者が無能だと、命は簡単に散るのよ」
「なに!?」
「あらら、気付いてないの? その程度で私達を敵に回すなんて、余程に死にたいようね。何ならここで今すぐに殺してやってもいいんだけど、さっさと後ろを見なさいな」
「後ろだと?」
キンピカ服の男が後ろを見ると、そこには騎士の倒れた胴体と首が転がっている光景だった。キンピカ服の後ろで威圧していた男も後ろを見て驚愕している。音も無く殺害されたからでしょうけど、私としては当然だとしか思えない。
<幻想精霊種・空間>。つまり空間を操る精霊だと聞いている。空間を自在に操るって事は、人間の首なんて簡単に切り離せる訳で……。ようするに強さの桁が違いすぎるのよ、冗談でも何でもなく。
「貴様!! 我が国の騎士に何をしたぁ!!!」
「何をも何も、私が何かをしたという証拠はあるのかしら? まさか証拠も無しに疑って掛かってるの? 随分と野蛮ねえ……。どうやら貴方の国には法というものが無いみたい。いったい何処の蛮族かしら」
「な!? おのれぇぇぇぇぇ!!!!」
「あら? 蛮族でないなら証拠を出しなさい。私がやったという動かぬ証拠をねえ。だったら私を犯罪者扱いするのは分かるけど、貴方がやっているのは言い掛かりじゃない。唯の言い掛かりじゃないなら、さっさと証拠を出しなさいよ。ほら、早く」
「グ、ウグググググググ………」
まあ、証拠なんて無いわよねえ。直接空間を操ってるらしいし、そもそもそんな事が出来るなんて法律は想定していない。しょせん法律なんてものは人間なんかが作るものでしかないんだから、人間の想像力以上のものにはならないのよ。それは元の星でも変わらなかった。
「き、貴様がやったに決まっている!!」
「だーかーらー、それは言い掛かりだって言ってるでしょう? その程度の事も分からないの? 分からないって事は、やっぱり蛮族なのねぇ……」
「ウググググググ………!」
「君。そんな事よりも殿下の腕を放してもらえないか? 失礼だろう」
後ろに居た威圧していた男が話題を変えたみたい。あのまま有耶無耶にして出て行かせようとしていたのかもしれないけど、話の方向を修正されたわね、
「私の仲間に勝手に手を出そうとする方が失礼だけどね? やはり蛮族には理解できないらしい。お前達が先に手を出してきたというのに、まるで私が悪いかのような言い種。どうやら蛮族には時系列すら理解できないみたいだ」
「………」
男が凄いプレッシャーを放ってきた。今までのが嘘みたいに強くて、息すら出来ない!。
「やはり蛮族か。威圧すれば何でも押し通せると思っているらしい。その行動そのものが蛮族だというのに、未だに分からないとは……。あまりにも野蛮に過ぎる。本当に無様な連中だ」
「!!!」
ミクが何かをしたのか呼吸が出来るようになったのも束の間、気付いたらミクの右手が剣を摘んで止めていた。いつ剣を抜いたのかも分からないけど、男はあまりにもビックリしたのか唖然として口が開いている。
「ん? 何を驚いているのか、意味が分からないね。まさかとは思うけど、お前の鈍間で愚図な剣が私に通用するとでも思っていたの? この蛮族は自分の力の弱さすら理解していなかったのか。本当に無様で憐れなヤツだ」
「………そんなバカな」
「<輝剣>の剣を止めただと!? しかも汚い物でも摘むように止める? そんなバカな事がある訳なかろう!! <輝剣>! 貴様、手加減をしたな!!」
「手加減などしていない。私は間違いなく全力で抜いた。にも関わらずコレだ」
「そんなバカな事があるか!! 貴様にどれだけの長い期間、我が国が金を渡してきたと思っている! この役立たずめ!!」
ミクが両方の手を放してやったんだけど、そうしたら床を「ドスン! ドスン!」と踏み鳴らしてギルドを出て行った。あの強そうな男は<きけん>なんて呼ばれてるのね。危険なヤツなのかな? ……あっ、それよりもニニ!!。
「ニニ、大丈夫?」
「う、うん。だいじょうぶ……」
「問題ないよ。私が精神を癒していたし、単に見られたくなかったってだけ。連れ戻されると思ったのかもしれないけど、私がそれを許す訳が無いでしょうが。ルルもそうだけど、【浄化】スキル持ちは奴隷の首輪を解除できるからね。冷静になったらこっちに手を出してくる可能性が高い。ま、蛮族なんて相手にならないけどね」
「そろそろ床を掃除してあげたらどうですか? 死体で酷い事になってますよ?」
「あ、忘れてたわ。ミク、死体をアイテムバッグに入れてくれる?」
「仕方ないね。ダンジョンにコソッと捨てるか」
そう言ってミクはアイテムバッグに騎士の死体を入れ、その後に【浄化魔法】だと思う魔法を使った。あまりに精密で緻密な魔法陣は、小さくて細かすぎる所為で私には全く理解できない。いつも使ってる【浄滅】という魔法だけど、相変わらず意味不明なほどに高度な魔法だと思う。
そんな魔法が全てを綺麗にしてしまい、今までよりも遥かに綺麗っていうかピカピカになった。これって綺麗にしす過ぎな気がする。宿だって部屋の中と外じゃ全く違ってるし、そこまで綺麗にする必要があるのかっていうくらいに綺麗なのよ。
あれ? 上から「ドタドタ」聞こえてきた?。




