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0007・新装備のナイフと鎧とブーツ




 男達の死体を喰らった後、ブラウンボーアの死体も貪り喰い。最後に赤茶色のボス猪を肉塊で覆うミク。今だ激しく暴れているボス猪だが、非情の肉塊に抗う術は無い。


 肉で覆われた瞬間、「ボリゴリバリベキ」という音と共に、生きながらに貪り喰われていった。正に弱肉強食。弱ければ喰われるしかないという見本であろう。


 ボス猪を喰らい尽くしたミクは剣を拾いに行き、ダガーも拾った段階で、入り口とは逆方向の壁が観音開きのように開いた。少々面食らったミクだが、こういうものなのだろうと思い、先へと進む。


 ある程度進むと、奥には魔法陣があり、これに乗ると脱出できると分かる。その前にミクは【清潔】で多くの汚れを落としておく。血の臭いも付いているかもしれないからだ。


 その後、脱出用の魔法陣に乗り、ミクは外へと脱出した。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ダンジョンの外へと出たミクは宿へと戻っていく。草原ダンジョンを攻略したからといって、特にギルドに報告する意味も無いし、草原ダンジョンの物は何も持って帰ってきてはいない。


 持って帰って来たのは、襲ってきた男達の持ち物だけであり、それは今本体が精査している。


 宿に戻ったミクは、カウンターに居る少年から鍵を受け取って部屋の中へ。部屋は昨日と一緒だった。中へ入ったミクはサンダルを脱いでベッドに寝転がり目を瞑る。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 本体は男達の装備を色々と弄り回し、分体にとって都合が良い物に作り変えていく。とはいえ出来る事は多くない。本体空間に炉があったり道具がある訳ではないのだ。なので多くの事を行うのは無理である。


 そこで本体は男達の装備していた鉄製の武器を、【火弾】を放たずに固定しながら燃やして熱し、骨を焼いた物で型を作ってそこに流し込む。出来たのは金床と言われる物だ。


 こんな物でも本体が工夫して作った物であり、喜びもひとしおであった。続いて何か作ろうと思ったのだが、そこまで素材が無い為、仕方なくナイフを作成する事に。やがては必要になる物でもある。


 残った鉄を熱して溶かし、金床の型を壊して作った新しい型に注ぐ。冷えたら中から取り出して、バリと呼ばれる部分を本体の牙で削り取る。最後に本体の牙で研げば、立派な鉄のナイフの完成だ。


 持ち手には革を巻き、ナイフの鞘も革で作る。ナイフに合わせた形に革を切り、2枚の革を本体の粘液でくっ付ければ鞘も完成。最後に革を使って剣帯を新しく作り、今の剣帯と交換すれば終了。


 男達の持っていた革鎧は本体が手を加え、女性用の革鎧のように胸部分を作り出した。簡単な革鎧であり、楽に脱ぎ着できる物にしてある。元々の男達が着ていた革鎧もそうだったので、そのまま流用した形だ。


 とはいえ胸の部分が膨らんでいるので完全に女性用の鎧である。誰も男どもが着ていた物だとは思わないだろう。残りの革鎧はバラしてしまい、次に作るのは革のブーツだ。


 これも本体の牙と粘液を使い、切ってくっ付けていき完成。分体の方に送り、サンダルと交換する。靴底は厚く、左右を革紐で結んで閉じる形にした。脛の部分まであるブーツなので、それなりにはゴツイ。


 しかし探索者ならこの程度のブーツを履くのも当然であり、ダンジョンの中の新人にも履いている者は居た。これでようやく本当に全てが終わったと言える。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ミクは部屋の中を歩きつつ、感触を確認しながら動きを修正していく。流石に革のサンダルと革のブーツでは大きく異なるので、動きをアジャストさせる必要がある。


 肉塊にとっては3分もあれば完璧に調整できる事だが、普通の人間種には無理な事であり、僅かな時間で完璧にアジャストさせる肉塊は、流石人外としか言えない存在だ。


 夕方になっていたので部屋を片付けて準備をし、荷物を全て持って宿の食堂へと行く。



 「今日も具沢山の大麦粥を一つ。はい、大銅貨1枚」


 「はい。具沢山の大麦粥を一つねー」



 今日も元気に厨房にオーダーを通す女性。その声を聞きつつ待っていると、周りから話し声が聞こえてきた。



 「また初心者エリアで迷賊どもが出たらしいぞ。幸い抵抗したら逃げていったらしいが、新人狩りでもしてやがるのかねえ」


 「助けてやりてえのは山々だが、オレらもダンジョン行って稼がなきゃ、おまんまの食い上げだからなぁ……」


 「本当になー。流石に荒地エリアに来るんなら相手してやるんだが、草原エリアは稼げねえんだよ」


 「仕方ない、あそこは初心者用のエリアだ。人が多すぎるし、7階までは孤児達が働いてる。迷賊どもも子供達は狙わないからいいが、初心者エリアで下らん事しやがって」


 「まあ、迷賊の多くは他国の孤児とか貧民らしいからなぁ。自分達の子供の頃よりマシとはいえ、似た境遇の奴等を襲うようじゃ終わりだ。奴等にも最低限の矜持はあるんだろう」


 「本当に最低限の矜持があるなら、足洗って探索者になれって思うけどな。ならない時点で、奴等の矜持なんてクソだろ」


 「ま、そりゃな」



 何となくだけど、ボス扉の前で会った奴等の事じゃないかと思うミク。おそらくは間違っていないだろう。


 夕食後、部屋へと戻ってブーツを脱ぎ、ベッドに入って寝転がる。分体を停止し、後は最低限の関わりだけにして本体で時間を潰す。色々と思考し、愚か者を喰う方法を考える。


 その内に時は過ぎていくのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 明けて翌日。ミクは朝早くから起き上がり、全ての準備を終えて食堂へと行く。大銅貨1枚を払い大麦の粥を食べたら、一度ギルドへと移動し、中へと入る。


 ギルドの依頼は現物を持って来なければいけない為、基本的には早い者勝ちだ。なので素早く割の良い依頼を見つけ、該当の階層に素早く移動し魔物を狩る。


 これが出来なければ良い報酬にはありつけない。もしくは圧倒的な実力で単価の高い魔物を狩るかだ。必然的に高ランクの方がお金が稼げるのは、そこに理由がある。


 ミクが来たのは依頼を探す為ではなく、第2エリアの地図を確認する為だ。ちなみに最高階層は46階だが、第4エリアまでの地図情報はギルドに貼り出してある。


 なので普通の探索者は自分で紙に書き写し、その書き写した紙に色々書き込んで、自分だけの攻略方法を記していく。


 ミクの場合は一目見て覚えればいいだけなので、書く必要は全くない。何より、書き込む必要も特に無いのだ。少なくともミクがダンジョンで困る事など、あり得ないのだから。


 貼り出されている地図情報を確認したら、ミクはギルドを出てダンジョンに向かう。まずは人間種に紛れられるだけの金銭を稼ぐのが目標となる。


 昨日は初心者エリアだったので全く稼げなかった。儲かったのは迷賊か不良探索者の持っていた金銭だけである。


 彼らの持っていた金額は、小銅貨が8枚、中銅貨が4枚、大桐貨が24枚、小銀貨が6枚、大銀貨が1枚だった。一人だけそれなりに金を持っていた奴が居たが、他は大して持っていない者だらけだ。


 所詮は初心者狩りを行うような連中である。頭も懐も寒い奴等でしかなかったのだろう。


 迷宮の第二エリアとなる、荒地ダンジョンに入る為の列に並んで待つ。愚か者を貪りに来たのだが、誰が愚か者で、誰が真っ当な者なのか。そこの線引きはしっかりしなければ、自分が神々に滅ぼされかねない。


 そういった理由からミクは一人でダンジョンを探索しているのだが、昨日はボス部屋前まで悪意の視線は無かった。


 あれは初心者エリアだったからなのか、それともダンジョン内の犯罪は多くないのか。ミクは現在も計りかねている。


 彼女が理解するには、まだまだ時間が掛かる。それは仕方がない事であろう。


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