1094・ハルキの冒険 その20
Side:ハルキ・ゴトウ
オレ達はちょっとしんみりしながらも食事を終わらせ、上の階へと戻っていく。牛を獲るのは亀の出てこない15階より上でと決まったので、そこまでは軽く走りながら戻っていく。そこまで体力も使わないし、さっさと戻って行こう。
そして14階、ここからは牛を倒してゲットしていく。オレ達は牛を見つけると挑発役と攻撃役に分かれて戦う。ちなみに挑発役はオレとフィグリス、攻撃役はアムとラトだ。両方共に動きが素早いのと足が潰せる者で構成した。
オレは牛の前で適当に動いたり、槍で地面を叩いたりして挑発する。牛はあっさりと引っ掛かりオレへと突撃してきた。ギリギリまで待ったオレは横っ飛びで突撃をかわし、後ろに居たアムが牛の後ろ足をハルバードでぶった切る。
当然だが足をやられた四つ足など大した敵ではなく、その後は首を切られて大量に出血して死亡した。オレとアムは協力して足を持ち上げ、牛の血が少しでも早く抜けるようにするものの、やはり簡単に血が抜ける事はない。
仕方なくアムが噛みついて一気に血を抜こうとしたその時、アムの体が「ビクッ」と跳ねる。慌てたオレはアムに近寄るも、アムはすぐにオレの首筋に噛みついて血を吸う。……ちょっと待ってくれ、これ、ヤバ…………。
…
……
………
オレは浮き上がるように目が覚めると、周りを見回す。すると、そこは荒地で女性達が喋っていた。ミュー、アム、ラト、フィグリス。オレは寝ていたようだけど、いったい……?。
「おっ、兄ちゃん起きたか。アムがいきなり兄ちゃんの血を吸い始めてな、それが強烈で気絶したんよ。猛烈な速さで飲んでたからなぁ………兄ちゃんも御愁傷様だ」
「あ、ああ……オレはアムに血を吸われたのか。まったく覚えてないけど、ダンジョンの中で気絶するまで吸うってどうなんだ?」
「ゴメン!! 本当に申し訳ない!! まさか発現しなかった私に、ようやく発現するとは思わなかったの。だから嬉しさのあまり噛みついて吸っちゃったのよ。本当にごめんなさい!」
「はつげん?」
「血の操作能力よ。ヴァンパイアは儀式を経てなるんだけど、そこから100年ほど掛けて血の操作が出来るようになるの。とはいえ私は100歳を越えても出来ない、いわゆる落ちこぼれだった訳ね。でもさっきの牛の血が口に入った瞬間、血の操作が出来る事がハッキリと分かったの」
「牛の血が重要だった?」
「いえ、多分それはキッカケね。おそらくはハルキの血の御蔭だと思うわ。<レッドカウント>とかいう奴との戦いからハルキの血は美味しくなっていた。血が美味しいって事は、それだけ力ある者の血って事。それを毎日飲んでいる訳だから、発現するのも当然なんでしょうね」
「ふーん……。それで血の操作能力ってどんなの? 何か凄い能力?」
「それはね。飲んだ血もそうだけど、自分の中の血も自由に操作できるのよ。その御蔭で体の力を自在に変えられるようになったわ。血流を加速させる事で大きな力を出せたりとか、色々と出来るようにもなったの。後、血抜きもね」
「血抜きも?」
「さっきやってたけど、手を触れるだけで大量の血が噴出するように出てたわよ。御蔭で死体の血抜きが物凄く楽になったし、時間が掛からないから待つ必要が殆ど無くなったわね。流石はヴァンパイアってところかしら」
「へー、それは凄い! 血抜きが楽になったら、その分だけ待っている時間が減る事になるしね。血抜きの時間がボトルネックになるかと思ってたけど、そうじゃなくなりそうで良かった」
「「「「ボトルネック?」」」」
オレはボトルネックの説明をし、それが終わったら立ち上がる。少しフラッとしたが堪えたオレは、再び魔物を探しながら皆と移動を開始。流石に走れないので歩いて戻る事になった。
その道中でも牛を倒し、終わったらアムに血抜きをしてもらう。まだ血の操作能力を手に入れたばかりなので、対象に触れていないと使えないそうだが、上手くなると触れる必要すら無いらしい。それと生きている者の血は操作できないそうだ。出来るのは死体などだけ何だってさ。
まあ、生きている人から自在に血が抜けたら最強すぎるもんなぁ、そりゃ無理に決まってるか。ちなみにアムの氏族の一番強い人は血の剣を作ったりして戦っていたそうだ。凄くヴァンパイアらしい感じだなー、マジでイメージにそっくり。
そんな話をしつつ牛の魔物を狩り、一人三頭をアイテムバッグに入れたら地上へと戻る。オレが走れないので皆には迷惑を掛けたが、皆は笑って許してくれた。そういえばフィグリスから睨まれなくなったな。睨まれたくないから今の方が良いんんだけど、何か心境の変化があったんだろう。
地上へと戻ってきたオレ達は解体所に行き、獲物をどんどんと出していく。驚かれたものの、牛は丸々一頭で大銀貨一枚だった。つまり銀貨10枚なんだけど……。5階以降の豚よりは高いとはいえ、そこまで大きくは変わらないんだな。10階以降なのに。
「残念ながらそれぞれの部位の値段を合計した金額だからな、これで売れる以上は仕方がないさ。15階以降の亀の甲羅なら高く売れるがな。べっこう細工とかいうのに使うらしいんで、かなりの金額で売れるぞ? 代わりに危険だがな」
「流石にアレと戦いたくはないかな。危ないと甲羅に閉じ篭もるし、その状態で魔法を使ってくるしさ。アレはちょっと反則じゃないかって思う」
「まあな。多くの探索者が一攫千金みたいに狙うが、アレを狩って来れるのは一部の実力者だけだ」
そんな話を聞きつつ木札を貰い、オレ達は町へと戻る。亀を狩る気は一切無いし、皆にもその気は無い。勝とうと思えば勝てるだろうが、あまりにも面倒臭そうなんだよ、あいつ。
だから皆も狩る気は無いし、そもそも戦う気が無い。オレ達は豚の方が面倒が無くて良いんじゃないかという話をしつつ、町に戻ったら探索者ギルドへと入った。中で受付嬢に木札を渡し、序にボスドロップを出してラトのランクを上げておく。
ランクが低いと舐められたり馬鹿にされたりしそうだが、ブロンズくらいあれば舐められたりしないだろう。そういえば冒険者ギルドもあるらしいが、オレ達はそっちには行っていない。
理由? そんなもの強制依頼があるからに決まってる。それに冒険者って荒くれというイメージが定着していて、イメージがあまり良くないらしい。探索者や狩人よりも素行の悪い奴等がやる、何でも屋。それが冒険者となる。
流石にそんなイメージの悪いのにはなりたくないのと、強制依頼が鬱陶しそうなので所属はしない。オレ達はお金を貰ったらすぐにギルドを出て宿へと戻る。あのギルドマスターに関わりたくないので、一秒も長く居たくないんだ。
「話を聞くと、よく居る高慢ちきなエルフそのものじゃな。そもそもエルフ種はやたらにプライドが高い者が多いから、それだけ他種族を見下す。何故ワシらを助けてくれたのかは知らんが、金を稼いだら離れた方がいい」
「樹神とかいう神が云々とか言ってなかった? 女神も含めて怪しいけども」
「それも本当はどうなんだろうね。ま、とりあえず宿は10日とってあるから、10日で出来るだけ金を稼いで出て行こうか。10日もあれば十分な金額が貯まる筈。まあ、今日からだから実質は9日だけど」
「一日で大銀貨3枚としても。10日で30枚。つまり小金貨3枚ね。それだけあれば十分でしょ。豚が大量だともうちょっと稼げるでしょうけど、あんまり数が多いと買い取り金額が下がるかも」
「なら牛で良いんじゃない? それとも牛二頭と豚二頭にする? それぐらいなら入ると思うし」
「そうね、そうしましょうか。終わったら竜人国とやらに行ってみるって事で」
「ただし襲われるかもしれないから、気をつけて行くのが良いわね。最悪はこっちに逃げてくれば済むでしょうし」
とりあえず行ってみないと話にならないし、まずは行ってから考えよう。
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