1092・ハルキの冒険 その18
Side:ハルキ・ゴトウ
ダンジョン20階のボス部屋前で狼の人が襲われていた。オレ達はそれに対して助けに入ったが、当の狼の人の目が点になっている。既に4人のエルフを殺したオレ達は、すぐに死体をボス部屋に放り込み、そして有無を言わせずに狼の人をボス部屋の中に入れた。
「ちょっ、ちょっと! いったい何だ、急に!!」
「いいから、いいから。どうせ仲間なんて居ないんだろうし、ここまで来てるって事はアンタもダンジョンで稼ぐ事にしたんだろ? だったらつべこべ言わずに従いな。損はさせないよ」
「そうそう。エルフをブチ殺したところを見られても面倒臭いからね。ボス部屋で死んでるなら、いちいちこっちに文句も言ってこないわよ。血が通路に残ってたけど、あんなのは放っておいたら消えるもの」
「仮に見つかっても、アタシ達は知らぬ存ぜぬを貫けばいいだけさ。そもそもアタシ達と居ても特に問題は無いだろう? さっきまでより遥かにマシな筈さ。ハルキ! 頼むよ!」
「了解!」
オレは左端のオーガに対し、付かず離れずで動きミスを誘発させる。いつも通り縦振りが来たら回避し、地面を叩いたら【魔加速】を発動。アキレス腱ごと足を潰す。そのオーガは狼の人に任せ、オレは真ん中のオーガへ。
ミューと戦ってる隙を突いて足を潰すと、そのままアムの戦っているオーガまで近付き、そちらの足も潰す。最後に左端のオーガに戻るのだが、狼の人は短剣だからかオーガに対して完全に攻めあぐねていた。流石にリーチが短すぎるな。
既にミューが居るので合図し、オレはオーガのもう片方の足を潰す。その痛みと足を掬ったことで前に転倒したオーガは、最後にミューに頭をカチ割られて死亡。派手に噴水のように血を撒き散らす。
あっと言う間に片付けたオレ達に対して呆然とする狼の人だが、最初はオレ達も大変だったから気持ちは分かる。今は慣れで済むし、やっぱり二人の攻撃力が高いから出来る事だ。頭をカチ割らないとアイテムバッグが手に入らないからなぁ。
オーガ三体が消えていき、そして中央には鞄が出てきた。やはりアイテムバッグの取り方は物理のみで倒すで確定だろうな。しかも頭をカチ割る形での勝利だ。それが条件である可能性が極めて高い。
オレ達は鞄を狼の人に持たせて、そこに出てきた牙も収納させる。それが終わったらボス部屋を出るのだが、狼の人はようやく正気を居り戻したようだ。
「ちょっと待って、今の何? 凄く簡単そうにあんなのを倒すってどういう事!?」
「どうもこうも普通に倒しただけだよ。その程度でしかないんだから、いちいち騒がない。後、そいつはアイテムバッグっていって物が沢山入る鞄だから大事にしなよ? 簡単には手に入らないって言ってたろ」
「ちょっと待って、ちょっと待って。本当に頭がいっぱいだから落ち着かせて。………えーと、まずは助けてくれたのよね? それに対してありがとう。そしていきなりボス部屋? っていうのに突入するってどうなの?」
「貴女を襲ったエルフの死体が邪魔だったからよ。あれがあるまま誰かに見られたら、間違いなく私達が疑われるでしょう? たとえ連中が襲ってきたのだとしても、私達の方が悪いとされかねないわ。だから死体をボス部屋に放り込んだのよ。そこで死んでいても怪しまれないし」
「……うん、そこまでは分かった。次にボス部屋でデカいのと戦った訳だけど、何であんなのを倒せるわけ? いきなり強さとか大きさが跳ね上がってない? おかしいでしょ、あんなの」
「それ以前に、何で【筋力上昇】なんてスキルを持っておいて武器が短剣なのよ。明らかに合ってないでしょうが。もっと重くて強力な武器を持ちなさいよ。そうじゃないと強くなった力を活かせないでしょうが」
「そんなの買うお金がある訳ないじゃない。だからダンジョンっていう所に来たのに、あんな奴等に襲われるしさー。一緒に居たドワーフだってこの町に来てたわよ? 向こうもどうしようか迷ってるみたいだったわ。何かエルフばっかりで居心地が悪いって言ってたし」
「それなら私達の仲間に入れて五人でお金稼ぎをした方が良いわね。一度地上に戻ってドワーフを仲間に引き入れましょう。足は遅そうだけど力は強そうだし。明日もう一度ここまで来てアイテムバッグを回収したら、好きにお金儲けできるでしょ」
「だねえ。頭数が多ければそれだけ儲かるし、牛を一人二頭ぐらい持ち帰れば十分に儲かる筈さ。後はそれの繰り返しをするだけで十分にお金は稼げる。オーガもそこまで強いわけじゃないし、地上の武具屋に行ってアンタの武器を変えるのが先かな?」
「武器を変えるのは確定な訳ね。まあ、強くなった力を活かせないって言えば、確かにそれまでか。だったら武器をきちんとした方が良いのは分かるけど、私が使える武器ねえ……」
狼の人も落ち着いたらしいので、オレ達は扉を触って向こう側へと戻る。そして隠し通路の途中で立ち止まり、自分達が何処から見ていたかを説明した。それで納得した狼の人は横からバッチリ見られていた事に凹んでいる。
「こんな覗き穴みたいなところから見られてたなんて思わなかった。何ていうか、色々とガックリ来るわね。そしてここからあんたが突撃した、と?」
「ええ、まあ……そうですね。声を出す訳にもいかないですし、音を出すのもマズいですから。いきなり一気に突進するしかなかった訳です」
喋りながらも収納していた食べかけのサンドイッチを食べる。というより、食べてた最中だったのに変な揉め事に巻き込まれたと言う方が正しい。そこも説明しつつ完食したら、地上へと戻る事に。
オレ達は牛の足を潰しつつ逃走し、途中10階でゴブリンを倒しボスドロップを回収。その後に地上まで戻る。理由は狼の人が10階ボスのドロップを持っていなかったからだ。20階ボスのドロップアイテムだけ持っているというのはおかしいし。
地上まで戻ったオレ達はさっさと町に帰還して、探索者ギルドに移動すると狼の人がボスドロップを提出する。ブロンズランクの登録証を得たらすぐにギルドから離れ、ドワーフの人を探して回る。武具屋は後回しだ。
そしてウロウロとしていると酒場で発見。まだ酒は飲んでおらず、酒場に来たところだったので引っ張っていき、人の少ない所で話し合う。
「合わなくて困ってるんだろ? だったらアタシ達と一緒に行かないかい? エルフばっかりで合わないって言ってたって聞いてるよ」
「まあ、そうなのだが……良いのか? ワシはそこまで鍛冶が得意じゃないから、目当てにされても困る。それだけは先に言っておかねばならん」
「そもそも私達は貴女に鍛冶をしてほしいとは思っていないしね。仲間の頭数が欲しいというところよ。それと、フィグリスがダンジョン内でエルフに襲われたわ。そいつらは切り刻むのと悲鳴を聞くのが趣味のゴミだったけどね」
「やはりそういう奴等が居るか……。確かに皆と一緒に居た方が安全であるな。よし、ワシも一緒に連れてってくれ。鍛冶は父の真似事ぐらしか出来んが、武具の手入れは出来る。それが子供の頃からの仕事だったからな」
「本職が手入れをしてくれるのは助かるわ。私達がすると素人の手入れでしかないもの」
「まずは狼の人の武器を買いに行きましょうか。ドワーフさんの武具も必要ですし」
「普通、名前で呼ばんか? 知ってるじゃろうに」
「知ってますけど、勝手に名前を呼ぶと気持ち悪いとか言われるんで、女性相手には許可をとらない限り名前で呼んだりしませんよ」
「それは当然じゃろうが、その結果が種族名か? そっちも十分に失礼じゃが……ああ、これが兄ちゃんが言ってたヤツか。どっちにしたって面倒だから、関わらない方をとる訳だな。すまんが、種族名はアレ過ぎるので名前で呼んでくれ」
「分かった」
まあ、面倒臭くなければ何でもいいか。たまにヒステリー起こすぐらい発狂する女性が居るからなぁ。




