1088・ハルキの冒険 その14
Side:ハルキ・ゴトウ
ボスドロップはオレが持つ事になり、適当に背負い袋に入れたら11階へ。下りてみて分かったが、そこは荒地だった。オレは一応アムに槍を渡し、木の板に紙を置いて地図を描いていく。とはいえ荒地なので描くのは難しい。どうしたもんか?。
そんなオレの悩みとは関係なく、ミューとアムはずんずんと先へ歩いていく。何か目的があるのかと思うも、特に無いとの事。どうやら適当だろうと歩かなければ階段が見つからないだろうという考えらしい。まあ、事実だけどね。
遠くの方に探索者と魔物が見えるけど、どうやらここには牛型の魔物がいるらしい。名前は知らないけど、牛型だと覚えておけばいいだろう。名前なんてそこまで重要じゃないし。それはともかく、次の階への階段が見つからないな。
そのままウロウロとしているとオレ達を見つけたのか、牛の魔物が鼻息を荒くして地面を掻いているのが見えた。オレは地図を描いているので回避の姿勢をとり、ミューとアムは素早く分かれた。
ミューが前に出ると、盾を振って相手から注目を集めようとする。アムはミューからズレて待機し、ジッとしたまま動かない。おそらくミューに突っ込ませてかわし、そこにアムが攻撃を加えるんだろう。牛だから派手に突撃してきそうだし。
そう思ったら案の定、牛はミューに対して頭を下げて突撃してきた。その予想通りの行動に対し、ミューは横っ飛びで回避する。そして通り過ぎた所で待っていたアムに横っ腹を突き刺された。
ヴァンパイアの力で突き刺されたのだから当然ダメージは大きく、それを見逃さずに近付いたミューに足を殴られて圧し折られた。アムは更なる追撃として牛の首筋を刺して頚動脈を狙って突き刺す。
それは成功し、ドッと血飛沫が舞うと、アムは素早く離れた。後は牛が死ぬまで放置すれば良いだけであり、オレ達は注意深く見つつも周りに意識を向ける。他の魔物に襲われる可能性もあるからな。一頭だけに構っては居られない。
幸い周りには居なかったので安堵し、オレ達は牛を置いたまま先へと進む。今は地図を完成させなきゃいけないから、牛の魔物を持ってなんて帰れない。それに他の探索者だって解体して高く売れる部位だけ持って帰るみたいだしな。
12階への階段を見つけたので下り、階段の途中で食事休憩にした。水筒なんかも持って来ているけど、あまり量が多くはないので節約している。とりあえず硬いパンのサンドイットを食うか。
「なかなか大変だけど、ここまでは来れたね。今は昼か昼前ぐらいだろうから、そこまで遅い訳じゃないと思う。やはり最短距離で進めるのは大きいんだろうさ。何としても20階に到達する道だけは見つけたいね」
「今日中に行けるなら行っておきたいところ。正直に言って時間が掛かれば掛かる程にやる気は減ると思うから、完全にやる気が無くなる前に一つぐらいは欲しいわね」
確かに移動だけでも大変だし、それを考えると早めに一つは欲しいな。その一つがあれば劇的に変わるだろうし、持ち運びも凄く楽になる筈。運が良いか悪いかは別にして、何とか一つだけでもビギナーズラック的なもので手に入らないかな。
硬いパンのサンドイッチを食べ、上の階の階段近くで用を足したら先へと進む。トイレ休憩も兼ねていたが、御蔭でスッキリしたよ。何故か女性陣二人の護衛をさせられたけど。
それはともかくとして、11階からの荒地は階段が遠くから見えるのでありがたい。階段を発見すればさえ、すぐに下れば良いだけだからね。洞窟と比べれば分かりやすくて助かる。
ちなみに荒地の地形では、牛の魔物とトカゲの魔物が出てくる。牛は元の世界の日本とあんまり変わらない大きさだ。ただし気性はメチャクチャ荒いけどな。
ただしトカゲの方は明らかにデカイ。どれぐらいかって言うと、ワニと同じぐらいの大きさと言えば分かると思う。正直に言ってワニと変わらないぐらいに恐い。そもそもワニと同じように牙が生えてるし、アレで噛みつかれたら肉が食い千切られる。
そんなトカゲだが、実は横移動は不得意らしくて簡単に避けられる事が判明。一人が囮になり、もう一人が攻撃すれば簡単に倒せた。ワニと同じ大きさなだけで、ワニのように鱗がビッシリ生えている訳でもない。その御蔭で防御は薄いんだよ。
アムが槍で簡単に突き刺して始末してる。ちなみに囮役はオレ。【魔加速】を使わなくても簡単に避けられるし、その程度しか役に立たないからね。この程度はやるよ。
15階からは巨大な亀が現れたけど、動きが鈍重だから近付かなければ被害は受けない。戦っている探索者が居たけど、魔法で攻撃されていた。多分だけど【土魔法】なんだと思う。大きな茶色の塊が探索者に向かって飛んでいたのを見たから。
それらを無視して進み20階。ここで休憩してボスへと挑むんだけど、オーガというのがちょっと恐い。ディオレッタさんは、そのオーガが三体も出てくると言っていた。ここからが本番で、ボスでの死亡確率は高いそうだ。
万全の体制で戦う為に回復しつつ、入念に打ち合わせを行う。このボス戦で鍵になるのはオレだ。出来るだけ早く【魔加速】でオーガの足を潰す。それが出来れば後は一体ずつ倒して行くだけとなる。
背の高さが3メートルを越える巨人で、大きな木の棍棒を持って殴りつけてくるらしい。鉄の兜を被っていても頭が陥没して死ぬ威力らしく、兜を被るだけ無駄だと言われているそうだ。とにかく敵の攻撃は避けろ、受けるな、というのが鉄則らしい。
オレ達が作戦会議をしている最中に来た者が居たので先を譲ったが、その後に小さく悲鳴が聞こえたので誰か死んだのかもしれない。エルフ5人組だったが、大丈夫だろうか。ちょっと恐くなってきたが、扉から「カチッ」と音が鳴ったので入れるようにはなった。
オレ達は顔を見合わせた後で入り、中に5人の死体を発見した。やはりオーガに殺されたらしい。オレ達が入ると扉が閉まり、魔法陣が輝いて回転しながらオーガ三体が出現。戦闘が始まった。
オレはすぐに決められていた左のオーガに走り寄ると、相手のオーガが棍棒を振り下ろしてきた。オレは急激にブレーキを掛けて止まり、オーガの棍棒をかわす。棍棒が地面に激突して「ドゴン!」と音が鳴ると、恐怖で足が竦みそうになるが気合を入れてスキルを使う。
(【魔加速】!)
スキルは心の中で念じれば使えるので、オレは【魔加速】と念じて一気に走りこむ。槍を構えたまま突進し、穂先はオーガの右足に激突した。派手にブチ当たったのはいいが、その威力はオレが思っていたより高く、オーガが足を掬われて転ぶほどだった。
ついでに足を横に切り裂くような形で肉を裂いた穂先。オレはそのまま突き抜ける形で通り過ぎた。実は【魔加速】のスキルは途中で止まれない事が判明している。なので一定距離は進むしかない。
それでも切り裂くようにして突き抜けた御蔭で、一体の足は完全に使えなくなった。右足の左側半分を切り裂く形で突き抜けたからなぁ。流石のオーガも立ち上がれないだろう。オレはすぐに別のオーガにターゲットを移す。
真ん中のオーガと戦ってるのはミューだが、そのミューと戦っているオーガの隙を突き、アキレス腱を切り裂きながら突き抜けるように突撃した。それは狙い通りの一撃となり、真ん中のオーガも転倒して立ち上がれなくなる。
オレはそのままアムと戦っているオーガのアキレス腱も切り裂いてやった。これで後はオーガを倒すだけだ。流石に立ち上がれないんじゃ、そこまで恐くはなくなったろう。




