1085・ハルキの冒険 その11
Side:ハルキ・ゴトウ
オレ達はギルドマスターの考えなどは保留し、さっさとダンジョンに移動したら入って行く。目標は20階のボスだ。ディオレッタさんに聞いたけど、このダンジョンの20階のボスが稀にアイテムバッグをドロップするらしい。そう、ドロップだ。
ゲームかとツッコミたくなったけど、昔の召喚者が伝えた言葉だと聞いてむしろガックリ来たよ。現実をゲームか何かと勘違いしていたんじゃないか、そいつ。現実と妄想の区別がつかない感じでさ。そう思ったんだけど、どうやらちょっと違うみたいだった。
簡単に言うと、その現象に名前は付いてなかったらしいんだけど、ボスとかドロップアイテムとか言われるようになって分かりやすくなったそうだ。まあ、現象とかに名前を付ければ分かりやすくなるとは思う。そういう部分では間違ってはいない。
それは横に置いておくとして、20階のボスであるオーガから稀にしか手に入らないので、欲しければ挑み続けるしかないとディオレッタさんは言っていた。実際ディオレッタさん自身も自分で手に入れたアイテムバッグを持っていて、そこから色々と出してたんだよな。羨ましい。
ああいうのって、やっぱり憧れがある。現実にアイテムバッグがあるとか最高すぎるし、沢山の物が入るとお金稼ぎも捗る。ゲームでもそうだけど、沢山持って帰るのが儲ける秘訣だ。お金の戦いも数だよ、兄貴。
壁で囲われている所に門番が立っているので、その人に登録証を見せて中に入る。そのまま歩いていくと地面に大きな魔法陣があるので、そこの真ん中に立つとダンジョンに入れるようだ。さっき消えていった人達が見えた。
オレ達も魔法陣の上に乗り、ダンジョンの中へと出発する。周りの景色が瞬時に変わり、そこはザ・ダンジョンって感じの場所だった。洞窟の中みたいな場所であり、天井に鍾乳石は無いけど身が引き締まってくる。
緊張感を感じつつも、オレ達は一歩を踏み出して進んで行く。一方通行というか、進める場所が一方向しかないので歩いていくものの、魔物とかそういうのとは遭遇しない。おそらくだけど、先程の人達が倒してしまっているのだろう。
そう思って進んでいると、通路の端に鼠の死体を発見した。カピバラの見た目なので鼠と言っても汚さはあまり感じない。まあ、それでも食べようなどとは思わないけど。それは横に置いておくとして、死体が放置されてるな? どういう事だろう。
「いちいち持って帰っても高く売れないか、食べられないんじゃないの? 持って帰らないで捨ててるって事は、それぐらいしか考えられないけどね。もし売れるなら持って帰る奴等は居るでしょ。放っておいたらダンジョンに吸収されるらしいし」
「ダンジョン内で排泄しても無くなるらしいから、おそらくだけど死体も無くなるわね。死なないように注意しないと、ダンジョンに吸収されて終わるわよ。小さな怪我でも舐めちゃいけないわ」
「特にハルキは弱いから気をつけなよ。それはともかく20階まで行くのは時間が掛かりそうだね。仕方がないにしても、地図を描いた方が良いのか悩むところだけど……どうする?」
「ディオレッタさんは面倒でも地図を描いた方が後々得をするって言ってたとはいえ、今日は書く物も何も持って来てないから無理だよ。お金はまだあるから買えるものの、羽ペンとかしかなかったらどうしよう? いちいちインクを付けてとか大変だよ」
「それでも地図を描くしかないんだから、仕方ないんじゃない? 私達が前で戦ってあげるから、後ろで地図を描いてくれてると助かる。子供の絵みたいな地図でも無いよりは遥かにマシだから」
「子供の絵のような地図しか描けないよ。そもそも地図なんて殆ど描いた事も無いし、歩きながら描くなら子供の絵みたいなものしか無理だ。素早く描けるものしか間に合わないしさ」
「それでいいじゃん。となると一回戻る? それともこのまま進む?」
「どうせ今日はお試しだし、お昼前には一度戻るんだから気にしなくていいんじゃない? ダンジョン近くにも武具屋とか雑貨屋とかあったから、そこで多分だけど売ってるでしょ。探せば見つかると思うわよ」
「そうね。ならこのまま進みましょうか」
決まったので進んで行くも、分かれ道がちょこちょことあって、一つ一つ確認しなければ分からないので困る。これは確かに地図を描かないと駄目だ。最短ルートを通って行かないと20階なんて無理だと思う。行きと帰りでもかなりの時間を喰うだろうしさ。
カピバラが出てきたので戦うも、ミューがメイスで潰してあっさり勝利。どうやらそこまで魔物は多くないようだ。まだ浅い階だからだろうか?。
そんな話をしていると、新たな魔物が現れた。それはカピバラサイズの蛙だった。幾らなんでもデカすぎるだろうと思うも、魔物なんだから十分あり得るサイズなんだろう。それにしてもデカいが。
「よっと! ……大した魔物でもないわねえ。こんな魔物しか居ないのなら移動が面倒なだけじゃない。ダンジョンってどうなってるのかしら。稼げるって聞いてたけど、とてもじゃないけど無理でしょう」
「確かにね。大きな鼠と蛙じゃ高く売れたりはしないだろうし、食べるにしたって多くない。僅かな部分を食べるだけなら、確かに捨てていった方が良いね」
オレもそう思うけど、じゃあ儲かるって聞いてたのはいったい何なんだろう? おっと、階段を見つけたので下っていく。
少し下ると新たな階層になったので進んで行こう。ここは2階ってところかな?。
…
……
………
遂に5階までやってきたけど、そろそろ帰らないとお昼に間に合わなくなりそうだ。どうしようかと思っていたら、前から豚がやってきた。ただし色は灰色で何だか石みたいに見える豚だ。
食べられる物だと分かったミューの行動は早く、体高80センチくらいの豚の頭を叩き潰した。電光石火の早業だったけど、蛇の下半身で跳び上がるように動いていたな。もしかしてジャンプ力が凄く強いのか? あの動きは初めて見たけど。
「よしよし、一撃で仕留められた。ハルキ、首と足を切ってくれる? 血抜きしたいから」
「えっ? ああ、うん。分かった」
そういえば生き物って血を抜かないとマズいんだっけ? 何かの漫画で読んだ事があるな。オレはミューに指示されるまま、首を槍の穂先で切ってから足も切る。こうする事によって逆さまにした際に血が流れ出るようになるらしい。
オレも手伝う形で岩のところに豚を立て掛けるような形で血抜きをしていく。ロープがあれば楽だと思ったけど、そのロープを吊るす場所が無い。洞窟の壁に金具でも打ち込んで、それにロープを括りつけるとか? で、豚の足を括りつければ吊るせるだろう。
「良い方法だと言えなくもないけど、今は無いんだから意味が無いね。このままじゃ時間が掛かるし仕方ない。アタシが吸い取りますかね。ただし捨てるけど」
そう言ってミューが噛み付いて血を吸う。かなりの量は吸い取ったあとで、口から吐き出す。それを繰り返して行く事で、一気に血が抜けてきたようだ。
「この豚の血、そこまで不味くはないわね? もちろんハルキの血には勝てないんだけど、元の世界の魔物よりよっぽどマシよ。これならそこまで不満も持たなかったかも」
「美味しい血を知ってるんだから、不満は絶対にあるわよ。むしろ不満が無い方がおかしいわ」
「まあ、そうなんだけどさ。それでも少しはマシだったかもしれないだろう?」
そう言いつつも血抜きを終わらせたミューは、オレに担ぐように言って階層を戻っていく。………オレが担いで持って上がるの? 無理じゃない? あ、はい、分かりました。
その後、様々にチャンレンジするも駄目で、結局アムが担ぐ事になった。その前に血を吸われたけど、それは仕方ないとして諦めよう。アムは楽々と担ぐと、地上までを一気に走って行く。
どうやら面倒臭いらしく、一気に終わらせたいようだ。オレは慌ててアムの前に出ると、せめてもの露払いをするのだった。




