1084・ハルキの冒険 その10
Side:ハルキ・ゴトウ
吸血で気絶させられた次の日。オレ達は王都から出ている乗合馬車にお金を払って乗り、東のフォルドーという町まで進む。そこまで遠い訳じゃないらしいけど、乗合馬車に乗っていても二日は掛かるそうだ。時速5キロで8時間としたら、80キロぐらい離れてるのか。
思っているよりも遠い気がするけど、これは仕方がないだろう。フォルドーって町は竜王山脈っていう山々に近いらしいし、ダンジョンはあるけど危険な町なんだそうだ。古い時代には魔物が大量に攻めて来て全滅した事もあるらしい。
竜王山脈は魔物の宝庫なんだけど、浅い領域から先へは誰も進まないし進めないんだと。理由は竜だ。つまりドラゴンが襲ってくるので死ぬしかなくなる。縄張り意識みたいなものがあるらしく、その縄張りに入ると問答無用で襲われるとの事。
それだけじゃなく、戦争などで大量の人間種が来た時も襲ってくるんだそうだ。だから戦争でも竜王山脈には一定以上近付かないらしい。それでも戦争を止めないのはどうかと思うが、あのクソ国を思い出すと止める訳が無いと思える。
「だが、代わりにウェルトゥーザ王国や東の魔族の国であるディビルト王国は、竜人達を奴隷として捕まえているそうだ。竜人国の者は烈火の如く怒り狂っているし、だからこそ竜人以外が近付くと殺される可能性が高い。君達も行かない方がいい」
「ええ。危険なところには近付きませんけど、どうしてそんな事をするんでしょうね? そもそも人間種と魔族は何故戦争なんかをしてるんです? オレとしてはそこから疑問なんですが……」
「それは我らも分からないな。昔の事だと思うが、人間種と魔族の間で何か譲れない事情でもあったんだろう。その結果争うようになったのだと思う。昨今では竜人国の者や敵国の者を奴隷として連れて帰るという、奴隷狩りのような事をやっているが……」
「奴隷狩りって……。そんな争いする必要も無いし、大儀も正義も何も無いでしょう。頭がおかしいんですか、その二国は?」
「おかしいと言うより、戦争をする事で儲かる連中が居る以上は止める気は無いのだろうな。いつか竜人国から報復を受けると思う。そもそも竜人は<ノーマルクラス>でも他の種族に比べて強いんだ。いつまでもこんな事は続かない筈さ」
「そこまで強いなら蹴散らせば良いと思うんだけど、何でそれが出来ないんだい? 確か<アーククラス>っていう凄いのが王をしてるんだろ? <金竜>とか言われてる王様がさ」
「そうだが、逆に言えば王様だから動けないとも言われている。他の<アーククラス>は自由な立場を持っているが、竜人国は王だからな。迂闊に動けないうえに、位階の高いのが戦争に出ると他の位階の高い連中が報復に動くんだよ」
「つまり竜人国の王が戦争に出ると、他の<アーククラス>とやらが報復に出てくると。つまりそうやって竜人国の王を封じ込めてる訳だ。強い強い<アーククラス>といっても、一人じゃ勝ち目は無い。なら民が犠牲になっても我慢しなきゃいけない訳か」
「それって絶対に何処かで爆発するわよね? そうなったらどうするのかしら? 仮に竜人国の王が他を圧倒するほど強かったら、最悪の事態に陥ると思うけど」
「今までも出てきていないから、そこまで強くないのではないかと言われているよ。ただし、それが本当かどうかは分かってない。私は竜人なんだから弱い筈が無いと思うんだけどね」
馬車の中でそんな話をしつつ、オレ達は今日泊まる町に着いたので馬車を降りる。昼とかトイレ休憩以外ずっと乗ってたので体が痛い。とはいえ明日も辛抱しなきゃいけないんだよなぁ。歩いた方が良いか?。
とりあえず明日の事は明日に回し、オレ達は宿の三人部屋をとって食堂へ。夕食を食べたら宿へと戻り、さっさと寝る事に。しかし寝るとなったら二人が近付いてくる。結局、寝るんじゃなくて気絶する事になるのは変わらないな。
…
……
………
次の日も結局は乗合馬車に乗り、オレ達はフォルドーという町に辿り着いた。この町に探索者ギルドというものがあり、そこに登録すればダンジョンに潜れるようになる。何でも探索者じゃないとダンジョンには入れないらしい。
資格とかの問題もあるんだが、それ以上にキッチリと決まってるからだそうだ。実は外で魔物を狩る場合には狩人ギルドに登録しないといけない。互いの領分に踏み込まないという事で、そこは明確に決まっているそうだ。ただし両方の登録証を持つのは認められてる。
ようするに狩猟がしたければ狩人ギルドに金払え、ダンジョンに入りたければ探索者ギルドに金払えという事だ。分かりやすいが、登録証を持ってないとダンジョンに入れないし獲物が売れない。その為、結局は入らざるを得ない仕組みになってる。
まあ、そういう風になってるよなと思いつつ、オレ達は宿に行って部屋をとる。ここはフォルドーなので一気に10日借り、その金額を支払う。これで10日の間は屋根付きの場所で眠れる。出来ればこの生活を続けたいな。
食堂に夕食を食べに行き、食事が終わったら宿へ。探索者ギルドへは明日の朝一に行き、それから登録をする。今日はもう時間だし、行っても登録はしてもらえないだろう。本日も気絶して終了。
…
……
………
次の日。朝食を終えたオレ達は、朝から探索者ギルドへ行く。中に入ると人でごった返しているが、その殆ど全てがエルフかムーンエルフだ。そんな中で受付へと行き探索者登録を頼む。周りが美形だらけだと恐いな……。
「すみません、探索者登録をお願いします」
「分かりました。では、こちらの用紙に記入して下さい」
そう言って出されたのはいいが、オレって文字は読めるけど書けないぞ? そう思ったので素直に言うと代筆をしてもらえた。そもそもオレ達三人とも同じで、何故か読めるけど文字を書く事は出来ないんだよな。読めるだけマシだけど。
名前とか何処の出身だとか聞かれたけど、面倒なんで素直に答えた。むしろ日本の地名を言う事で、訳が分からないだろうと思ったのだが、気付いたら二階にあるギルドマスターとかいう偉い人の部屋に来させられてる。……何故?。
「お前達が今代の召喚者か。………ま、特に問題はないようだねえ。下らない事したら即座に殺すから注意しな。召喚者は強力なスキルを持ってる事が多いんで、捕縛じゃなくて即殺害となる。殺されるのが嫌なら気を付けるこった」
「は、はあ……分かりました」
「「………」」
それだけを言われて部屋を出された。あれか、悪い事をするなって釘を刺されたのか? でもオレは別に悪い事なんてする気は無いんだけど、でも向こうからすればそんな事は分からないし……。ま、忘れてダンジョンに行くか。
さっきから無言の二人が恐いけど、オレはスルーします。だって口を開くとオレの方に向かってきそうだし、とばっちり喰らいたくないしね。とはいえ気持ちは分かるけど。いきなり殺すって言われたんだし、腹を立てて当然だと思う。
そんな事を思いつつ一階に下り、木で出来た登録証を受け取ったらさっさと出た。ダンジョンは町の外にあるので移動し、町の入り口の門を出た辺りで二人は口を開く。
「あのババア、なかなかやってくれるじゃない? おそらくクラスとやらが上なんだろうけど、ふざけてるねえ」
「初手からこっちを押さえに来たけど、それだけ召喚者のスキルを危険視してるって事でしょ。むしろ怯えてるのかしらね? それとも邪険にしたい?」
オレ達を何処かへやりたいって事か。エルフって閉鎖的なイメージがあるから分からなくもないな。




