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1080・ハルキの冒険 その6




 Side:ハルキ・ゴトウ



 ガタガタと揺れている……。意識が浮上するように目覚めると、オレは目を開けて周りを見回す。そこは小型の馬車の中であり、何処かに移動しているようだった。オレは体を起こして座り、ボーッとしつつも考える。


 今がどんな状況であったのかを思い出していると、フォレスター湖川国に向かっている最中だった事を思い出した。一人納得していると、近くから声を掛けられる。



 「起きたけど、気分が悪いのは大丈夫? それともまだ気分が悪い?」


 「え? 気分が悪い……?」


 「コイツ、何があったかすら忘れてるんじゃないの?」


 「あんちゃんは<レッドカウント>とかいう奴の首が切り落とされたのを見て、気分が悪くなって吐いてたんだ。思い出したか?」


 「………ああ、思い出した。思い出したけど、何ともないな。あの時は凄く気分が悪かったっていうか、あんなの初めて見たから耐えられなかった。もちろん殺さなきゃ殺されるのは分かるんだけど……」


 「初めてだったのなら仕方ないだろ。誰でも初めての殺しは思うところが生まれる。それは悪い事じゃないし、むしろ何とも思わないヤツの方が問題だ」


 「それはね。吐くほどの方が健全ではある。何も無く当たり前に殺しが出来るヤツは絶対に何処かが狂ってるし、その後に狂った本性が出てくるヤツだよ。もしくは、そもそも食い物としか見てないかだ」


 「私は食い物としか見てないけど? あくまでもヴァンパイア以外は、だけどね」


 「それは普通でしょ。ヴァンパイアっていうか、私達ラミアーだって似たようなものだしね。迂闊に殺さないのは、そもそも欲しいのが血だからであって、わざわざ殺す必要が無いだけだし。もちろん敵は別だけど」


 「その血はそこの人間で済ませてもらうとして、それより先程の戦いで随分とやられてしまいましたが、クラスとやらであそこまで強さが変わるというのはマズいですね。この世界は変ですよ」


 「変だろうが何だろうが、私達も力を持たないと身を守れない。それだけは事実だよ。今回はあんちゃんが上手く戦ってくれた御蔭でしかない。アレがなきゃ殺されてた可能性が高いし、そっちも苦戦してたろう?」


 「そうだな。正直に言って相性はあまり良くなかった。私は潜入や暗殺に特化しているスキルになっている。向こうは純戦闘スキルだ。どんなスキルを得るかは本人の資質に左右されるのだが、その結果得られるもので戦うしかない」


 「潜入や暗殺が得意でも、真っ向勝負は難しいって訳ね。それでもあそこまで目を離してくれたら、気配を消して首を獲りに行けると?」


 「そうだ。<レッドカウント>はそいつに対して激昂していたからな。あそこまで怒り狂っていたら私に割く意識など無かったろう。その一瞬でヤツの知覚から外れる事が出来る。後は首を獲るだけだ」


 「えっと、そろそろアレなんですけど、オレの名前はハルキ・ゴトウです。そういえば名乗ってませんでしたね」


 「名を名乗るのは迂闊な事だから止めておけ。信頼できる相手ならいいが、呪いの中には名前が分かれば呪えるというものもあるらしいのでな。迂闊に名を名乗るのは良くない。ただし<鑑定の石板>でバレるが」


 「なら意味無いじゃないの。どうせ私達の名前も調べるんでしょ? 私はフィグリスよ。そいつみたいに家名とか無いから」


 「ワシはラトリウル・ダグ。ドワーフはダグ氏族の者だ」


 「私はサーウェンス・リュ。エルフはリュ氏族の者です」


 「アタシはミュルスレム。ラミアーではあるけど、ちょっとし問題があって氏族名は名乗れない」


 「私はアムルダイア・ドゥルグスト・ウェルフォティス。一応は由緒ある血筋だけど、もう古すぎて骨董品みたいな血筋ね。昔は力のある血筋だったんだけど、私みたいなのを血族に入れるぐらいだし」


 「ヴァンパイアって儀式を経て仲間入りするんでしょう? なら血筋というのは、儀式をした者の事ですか?」


 「そうでもあり、そうでもない。最初のヴァンパイアから派生した14氏族。そこに連なってるのが全てのヴァンパイアなんだけど、ウェルフォティス家は最近没落してる家なのよ。力のある者が生まれないから」


 「迂闊に血を奪いすぎるとヴァンパイアハンターみたいなのが攻めて来るんでしょ? アタシの方もラミアー狩りのような奴等がたまに湧いてくるからねえ。面倒臭いったらないよ、まったく」


 「ところで、あの<レッドカウント>を倒せたんですから、これでフォレスターという国までは大丈夫ですよね? もう一度似たような事は……」


 「流石にあるまい。ウェルトゥーザにとって<レッドカウント>は重要な人物であり、使い捨てにするような者ではない。あそこには<アーククラス>も居るが、そいつは王城から動けん。王族を守っているからな」


 「<アーククラス>って最高位ですよね? アレよりも強いのが居るんですか……」


 「<アーククラス>は化け物だが、この世には6人居る。一人はウェルトゥーザの<輝剣>。二人目は我が国の<浄化>。三人目はディオス王国の<破壊>。四人目は竜人国の王である<金竜>。五人目はディビルト王国の<魔導>。六人目がガイスト王国の<死霊>だ」


 「<金竜>なんて呼ばれてるし、竜人国なんて国があるんですね。どんなところなんだろう?」


 「行けば殺されるぞ。絶対に行くなよ」


 「えっ?」


 「お前達は教えられていないのだろうが、こちら側は人間種の土地となっている。そして東に行くと魔族の土地だ。で、その間に竜王山脈と呼ばれる高い山々があり、そこに竜人国がある。人間種の国と魔族の国が戦争をする際、必ず真ん中にある竜人国が巻き込まれるのだ」


 「それはちょっと……どうなの?」


 「言いたい事は分かるが、どちらも強欲なのだよ。そして戦争がある度に竜人国の民が奴隷として連れ去られているのだ。結果として竜人国の民は、人間種にも魔族にも憎悪を持っている。迂闊にあの国に踏み込むと農民に殺されるのだ。しかも竜人は種族として強い」


 「種族として強いのに奴隷にされるの? それって変じゃない?」


 「お前達だって力はあっても<奴隷の首輪>を着けられたじゃないか。つまり、そういう事だ」


 「成る程ね。無理矢理にでも、あの首輪を着ければ勝ちって訳か。碌でもない連中が戦争をしてるみたいだけど、私達はその為に召喚された? もしかして」


 「その通りだ。歴代の召喚者の中で、我が国に逃げて来れた者は皆が言い残している。全ての元凶はあの女神だと」


 「あれねー、怪しいと思ってたのよ、だいたいタダで力を渡すなんて怪しいに決まってるじゃない。しかも連れて行かれた猫耳の小さな子まで巻き込んでるしさ。頼るなら力のあるヤツに頼むでしょ、普通なら」


 「何度も女神が召喚をしているし、あまつさえ常にウェルトゥーザとディビルトにしか召喚されんのだ。当然のように奴等は召喚者を奴隷として利用する。しかしそれでも変わらず二国にしか召喚されんのだ。怪しい事このうえなかろう?」


 「それは駄目ですね。あの女神が元凶と言われても納得します。そもそも奴隷にされると分かっていて召喚している訳ですし、それなら完全に犯罪でしょう。どうやら邪神だったようで」



 オレも思ったけど、やっぱりそう思うよな。どう考えたって怪しいし、気が付いた時には<奴隷の首輪>が嵌められてるんだ。普通はあり得ないだろ。マジでゲームならクソゲー以下の始まりだし、普通はそのまま戦争に行かされて死んでる。


 それを考えると改めて運が良かったな、オレ。一生分の運を使い果たしたかも。


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