1078・ハルキの冒険 その4
Side:ハルキ・ゴトウ
「何となくは分かりましたけど、でもオレは逃がされただけですよね? 別に最初からここに乗せてもらえた訳でも無く、たまたま後で出会って乗せてもらえただけですし」
「元々お前を乗せる気など無かったからだ。お前が言うように偶然会ったから乗せたに過ぎん。さっきも言ったように、黒髪黒目の男は女を襲う根性も無いからな。無害なら乗せてやっても構わない」
「ああ、そういう事ね。どうなろうと知った事じゃ無かったけど、たまたま同じ方向に逃げていたから拾ってやっただけか」
「そういう事だ。そもそもそいつの持っているスキルは【加速】だと知っている。そのスキルは召喚者どころか一般人でも持っているスキルだ。極短い間だけ足が速くなるというスキルで、大した効果など無いからな。クラスが上がれば分からんが、わざわざ成長させてやる義理も無い」
「うわぉ、ハッキリと役立たずと言うわね。確かに対して役にも立たないスキルだし、急に足が速くなったら転びそう。使い慣れても僅かな時間だしさ。私の【筋力上昇】の方がまだマシじゃん」
「………【加速】スキルって本当に極僅かな時間しか効果が無いんですか?」
「そうだが……まさか、効果が違うのか?」
「ええ。それなりの時間は効果がありますし、いきなり速くなりますし、効果がある間は疲れないんですけど……? 本当に【加速】スキルって使えないスキルなんですか? 魔力が続く限りずっと走れるスキルじゃない?」
「疲れない? そんな事は聞いた事が無いぞ。しかもいきなり速くなるなんて事も無い筈だ。使うとゆっくりと速くなるし、すぐに効果が切れるので意味は殆ど無いスキルと言われていた筈。……神が与えたスキルだから、効果が違うのか?」
「疲れずに走れるなら確かにそこまで使えないスキルとは言えないわね。っていうか、だからあんなに王都から離れたところで拾った訳か。役立たず扱いされて殺されるっていうのもアレねぇ……」
「その点では、あのクソみたいな国と然して変わりはない訳ね」
「………」
「でも、そいつが嘘を言ってる可能性もある訳じゃない? 決め付けるのは良くないと思うけど?」
「なら、それで良いんじゃない? 別にどうこう言う気は無いわよ。好きに思えばいいじゃない」
何故かオレ、すっげぇ睨まれてる。最初から犬っぽい人ってオレを敵視してるけど、何か理由があるのか? 男が、とか言ってたから被害でも受けた事があるのかもしれない。でも、それは犯人に言ってもらいたいもんだ。オレは関係ないだろうに。
「なんか言いたい事あんの?」
「いえ、べつに……」
「言いたい事があるならハッキリ言えばいいでしょうが! この根性無しが!」
面倒臭え。だから日本人的にお茶を濁して関わろうとしないんだよ。こっちから関わりたくないんだから、いちいち関わってこないでくれ。何で関係ないオレが面倒臭い事に巻き込まれなくちゃいけないんだ。ある程度まで行ったら下ろしてもらった方が良いかも。
…
……
………
それから四日。雰囲気の悪いままの馬車に何故かオレは乗っている。流石に下りて自分の足で移動しようと思ったのだが、その度に「乗っていたらいいじゃない?」と他の人に言われている。
しかしその所為で犬っぽい人にずっと睨まれてるんだよな。ちなみにエルフっぽい人はエルフで、【魔力栽培】というスキルを持っているらしい。これは当たりのスキルで、植物なら何でも魔力を注ぐと成長力を上げられるそうだ。凄いな。
ドワーフの人は【魔力鍛冶】というスキルで、これも当たり。鍛冶の際に魔力を流しやすくなるらしいけど、別に鍛冶の最中じゃなくても効くそうだ。主に金属に魔力を流しやすくなる。とりあえず加工がしやすくなったそうだ。
犬っぽい人は狼獣人だったらしく、スキルは【筋力上昇】ならしい。スキルを使用すると全身の筋力が高まり、それなりの時間は効果が続くそうだ。ただ、そんな事より靴が臭いと怒られた。どうやら睨まれてるのには、それもあるらしい。
訓練としてずっと走らされた挙句、洗う事も出来ず眠るしかなかった事は説明したんだけど……納得は得られなかったな。ま、臭いのは事実だから仕方ない。
下半身が蛇の人はラミアーで、スキルは【魔力撃】。魔力を篭める事で一撃の威力が上がるらしい。尻尾の威力が凄く増したと言っていたけど、その際にこっちを見てニヤニヤするのは止めていただきたい。
そして最後のヴァンパイアさんなんだけど、この人が手に入れたスキルは【血の渇望】というスキルなんだそうだ。元の世界よりも明らかに血に飢えてしまっているらしく、前の世界では五日に一度程度だったのに、今は毎日摂らないと厳しいそうだ。
その反面、血を飲んだ後の強化量は元の世界の倍以上違うとの事。明らかに血を飲んだ際に強くなるらしく、兵舎では兵士を魔眼で誘惑して飲んでいたらしい。ヴァンパイアは漏れなく【魅了の魔眼】を持つそうだ。
その所為なのか、ここ最近は起きると体がダルい。ほぼ確実に血を吸われているんだと思うが、そもそも魔眼とやらに対抗できないんだから仕方ない。死なないだけマシだろうと思う事にしてる。
「そりゃ、毎日ヴァンパイアとラミアーから血を奪われていたら厳しいだろう。それでもダルいと言う程度で済んでいるのだから良いではないか。ま、二人ともそこまで飲んではいないのだろうがな」
「流石に死ぬまで飲むのは勿体ないでしょ。人間って然して能力も良くないし大した魔力も持ってない癖に、何故か血だけは美味しいのよねえ」
「本当、いっつも思うけど不思議よね、何で人間の血だけが私達の味覚に合うのかしら? 他の生物の血でも代用できるけど、不味いのはお断りしたいわ」
そういう意味でニヤニヤ見て来てたんだなぁ。それでも血を奪われる程度で馬車に乗っていられるんだから良いか。歩かなくても済むし、疲れる事も無い。更に言えば、そろそろフォレスターに入ると聞いた。
だからそこまで行けば、後は適当に下ろして「ドーン!!」もら……!?。
「ちょっとなに!! 何かの攻撃を受けたんじゃないの!?」
「おそらくウェルトゥーザの追撃部隊だ! 適当に奪ってきた武器を取れ、馬車の中にある! ここで敵を殺さねば、また奴隷に戻されるぞ!!」
「そんなのはお断りよ!」
「やるしかなかろうさ!」
「とりあえず敵を倒しましょう!」
「鬱陶しい奴等ねえ、まったく」
「追撃部隊の奴等も人間でしょ? ついでに血を頂こうかしら」
戦った事なんか無いけど、もう奴隷は嫌だ。なんとか少しでも力にならないと、これから先は生きて行けない。気合い入れろ、オレ!!。
小型馬車の後ろから外に出ると、馬に乗って槍を持ち、胸鎧を着けた騎士っぽいのが10人ぐらい居て、その後ろに何故か真紅のマントを羽織った格好良いのが居る。何だあれ? 戦いの場で派手すぎない?。
「お前は………ウェルトゥーザの<レッドカウント>か」
「ほう。まさかフォレスターの<黒い悪魔>が動いていたとは。少し気合を入れねばならんか。腐っても同じ<グランドクラス>だからな」
「抜かせ。貴様はここで始末する。生かして帰す訳にはいかんのでな」
「ふん! 勝てると思っているとはな。そのような足手纏いを連れて何が出来るのやら。……やれ!!」
「「「「「「「「「「ハッ!!」」」」」」」」」」
馬で敵の騎士が駆けてきたけど、馬が相手なんて聞いてないんだが!? どうすりゃいいんだ!。
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