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1076・ハルキの冒険 その2




 Side:ハルキ・ゴトウ



 オレは夜中の内に稼げるだけ距離を稼ごうと思い、ひたすら【加速】スキルを使いながら走って行く。その際に分かった事が幾つかある。第一に【加速】スキルは使った瞬間トップスピードに近い速度が出る。完全にトップスピードじゃないけど色々とおかしい。


 第二に【加速】スキルで速くなっている間は疲れにくくなっている可能性が高い。訓練と同じように鉄の鎧を着けて走っているのに、訓練の時のような疲れが全く無いんだ。その御蔭で今も走り続けていられる。


 第三に【加速】スキルのクールタイムは5秒だ。つまり5秒待つだけで非常に早く走る事が出来る。これはとんでもなく有利じゃないか? ただし途中で凄くダルくなってきたので、おそらくだけどMP的なものを使ってるんだと思う。


 流石に使い放題なんていうブッ壊れスキルではなかったようだ。ゲームはしてたんで、この辺りの事はオレでも分かるんだよな。とにかく役に立たない訓練の所為でボロボロと言えるぐらい疲れてるが、それでも王都からなるべく離れないとマズい。


 馬に乗る騎士も居るから追いつかれる。もし追いつかれたら絶対に逃げ切れない。夜の間になるべく離れないといけないし、身を隠しながら別の国まで逃亡しなきゃ駄目だ。この国がどれだけ広いか知らないけど、出るまでは気を抜かないようにしよう。


 そう思いながら歩いていると、後ろから何かが「ガラガラ」と走ってくる音がした。オレは慌てて逃げようと思い、【加速】スキルを使おうとするも発動しなかった。おそらくMP的なものが回復していないから無理なんだろう。こんなところで終わりかよ。



 「お前は少し前に助けてやった奴か。ちょうど同じ方向に逃げるとは面白いな。おそらく適当に逃げたのだろうが、ついでに乗せていってやろうか?」


 「えっ? あんたがオレを助けてくれた人だったのか。追っ手がきてもう終わりだと思ったよ。助かった、まだオレは天から見放されていない」


 「テンとは何か知らんが、乗りたければさっさと乗れ。揺れるがそれでも良ければな」


 「す、すぐに乗せてもらいます!」



 オレは小型の馬車っぽい物の後ろから乗せてもらうと、すぐに出発した。先ほど声を掛けてきた人は御者だと思うけど、小型の馬車を引っ張っているのは恐竜みたいな生き物だった。馬かと思ったらそうじゃなくて、実にファンタジーだ。


 小型の馬車の中には数人が乗っていたけど、その人達は薄暗くて見えなかった。オレは一番後ろの狭い所で縮こまり、そのまま意識を失うように眠る。


 …

 ……

 ………


 「おい、起きろ。起きろ!」


 「う、うぅ……」



 オレは誰かに起こされているらしく、いったい何だと思い目を開ける。すると、昨日の声の人がオレを起こしてくれたらしい。オレは自分があのクソみたいな場所を脱出したのを思い出し、慌てて起きる。



 「すみません、今起きました。いったい何の用でしょうか?」


 「何の用もメシだ。食事を摂りに行くからついてこい」


 「は、はい!」



 刺すようなとは言い過ぎだろうが、そんな目で見られたので慌てて礼儀正しくする。正直に言ってオレの命を持っているのが、第7軍の指揮官からこの人に代わっただけでしかない。それでもこの世界の事なんてサッパリ分からないんだから、へりくだるしかないんだよな。


 情けないという思いは無い訳じゃないけど、命が懸かってる以上は文句を言ってなんていられない。オレはローブを着ていてあまり姿が分からない人についていく。連れられて行った場所は、食堂のような場所で人が沢山いた。どうやら朝の混雑らしい。


 オレは小型の馬車に乗っていた人達であろう方達と一緒のテーブル席に座ったんだが、何故か誰も彼もが美人な女性ばっかりだった。それどころか周りからもメッチャ見られてる。確かにここまで美人ばっかりだと当然だろうな。


 オレは訳も分からないので他の人達と同じ物を注文し、お金を払おうとすると止められた。どうやらローブの人が払ってくれるようだった。オレは感謝を言いつつ椅子に座る。何が出てくるかは分からないが、食べられるものだろう。


 そう思いつつ周りの人達を見るも、他の人達も話す事は無いのかジッと黙っている。そのまま料理が来るまで待つと、宿舎の時とあまり変わらない物が出てきた。ただ違うのは、硬いパンと肉や野菜の入ったスープだって事だ。


 肉や野菜ってこんなに美味しかったんだなと思いつつ、オレは硬いパンをスープに浸しながら食べる。いやぁ、生きてて良かった。オレがそう思って食べていると、他の人はそうでもなかったらしい。



 「この国ってあまり食べ物が良くないの? 何だか、こんなものばかり出てくるけど……」


 「この国は大きいが、それは周辺国を攻めて奪ってきたからだ。そして中央が重税を強いているので庶民の食事はこうならざるを得ない。ここでする話ではないので、出発してから話そう」


 「そう。……ところで貴方は何故美味しそうに食べてるの?」


 「え? ……美味しくないですか? 今までのに比べたら百倍マシですけど……」


 「これが百倍マシって、どんな物を食べさせられてたの? 残飯?」


 「いや、そんな事は無いと思いますよ、他の兵士も同じ物を食べてましたし。毎日これより硬いパンと、塩味の何か入ってるっぽいスープでした。いや、アレってスープっでいうのかな?」


 「「「「「………」」」」」 「第7軍だったからそんなものだろう」


 「やっぱりそうなんですかね? 精神論のスポ根漫画みたいな事ばかりさせられましたよ。何の役にも立たないを通り越して、やればやるほど悪くなる訓練ばっかり。頭が悪いとしか思いませんでしたね」


 「それに関しては同意。馬鹿ばっかりで呆れるしかなかったわ」



 他の人達も色々と愚痴を言いつつ食事を終らせ、食堂のトイレで用を足してから出発する。オレは鉄の鎧を着けっぱなしだが仕方ない。今さら捨てる事は出来ないし、何か勿体ない気がするんだよな。だから着けておく。


 小型の馬車に乗って揺られていき、ある程度の距離を離れたら話し始めた。さっきの話からしても、他の軍はそこまで扱いが悪い訳じゃないんだな。あの第7軍は特筆して悪いらしい。



 「そういえば町から離れれば話せるのよね? 重税を強いてるというのは聞いたけど、いったいどういう事かしら?」


 「この国は拡張主義の国で、とにかく他国を侵略して支配してきた。そして過去に征服した国にはずっと重税を掛け続けている。だから庶民の暮らしは厳しい。生かさず殺さずというところだ」


 「だったら普通は民衆が蜂起するんじゃないんですか? 何で蜂起して戦わないんです? 強力なスキルを持っていても毒殺するとか、色々と手はありますよね?」


 「殺す事は容易いのだが、代わりに<グランドクラス>や<アーククラス>が報復に来るとどうにもならんからだ。そこまでのクラスが来ると虐殺されて終わる。それが分かっているから、誰も蜂起せんのだ」


 「<グランドクラス>? <アーククラス>?」


 「位階の事だが……。そうか、その程度の事すら教えられていないのか。相変わらずだが、碌な事をせんな」


 「もしかして結構重要な事? だとしたら本当にクズね」


 「そんな事は分かってる。こんな所に拉致した女神も、最初からこっちを奴隷にした奴等も同じ。纏めてゴミでしかない」



 それは本当にそうだと思う。そもそもオレ達って拉致や誘拐されてるんだよな。それって神様のやる事か?。


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