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1075・ハルキの冒険 その1




 Side:ハルキ・ゴトウ



 「オラ! 走れ!! てめぇらは走るしか能が無えんだから、さっさと走るんだよ!! 死ぬ気で走れ! 足を止めたらブチ殺すぞ!!!」


 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」



 何だこの意味不明な訓練。訓練っていうか、唯の走りこみなうえに精神論じゃねえか。今時、中学校や高校でもこんな練習しねえっての。走らせ過ぎたら体力もつかないし、寝ても疲労が取れないから却って練習の質が落ちるんだよ。


 何処が召喚者の知識を手に入れただ、前時代的な精神論とイジメの如き走り込み。ここは戦前の世界かっていうんだ。頭が湧いてるんじゃねえか、ここの教官とやらはよ。スキルは使えなくされてるし、ならいったい何の為の訓練なんだ。しかも鉄の鎧を着て走らされるし。


 おまけにメシは少ないし不味いし、パン系だから腹も碌に膨れないし硬い。マジでここへ来て痩せていってるとしか思えねえよ。この奴隷の首輪さえ外れれば、すぐに逃げ出してやるのに、これの所為で命令に従うしかない。


 これなら陸上部の練習の方がよっぽど役に立つし身につく練習だ。唯々、脳死で走るだけで何の意味も無い事を延々と繰り返させられてる。いったいこの練習はいつになったら終わるんだよ。それともずっとこのままか? だとしたらバカ過ぎるだろ。


 命令通りに動くしかないし、勝手に体が動くんである意味では楽だけど、でも疲れとかは全部来るんだよ。それさえ無ければボーッと出来るんだけどな。



 「よーし、夕日が出てきたから今日は終わりだ! 明日も同じだから励むようにな!!」


 「「「「「「「「「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………」」」」」」」」」」



 頭がおかしいのか! ひたすら走らせたって足は速くなんねえし、体力はつかねえんだよ! むしろ痩せていくだけで余計に悪化するだろうが、そんな事も知らないのか!? ……本当にこの国は召喚者から知識を手に入れてるのかよ? マジで疑問しかないぞ。


 オレも第7軍の奴等も足を引き摺るようにして宿舎へと戻る。宿舎って言ったところで馬小屋みたいなところだ。ガチで寝具が藁で、その上に寝転がって寝るだけだし、風呂になんて入れる訳が無い。布すら支給されないんだから、体を拭く事すら出来やしない。


 くっそ、このままじゃ本気でマズい。こんな訳の分からない無駄な事をさせられ続けて、最後には戦争に無理矢理行かされて殺される。あまりにもふざけた結末だ。何とかしないといけないけど、今のところ解決策が何も無い。


 首輪を外せる女の子は何故か居なくなっていたらしいし、いったいどうなったんだろうな。何処かの兵士の宿舎に閉じ込めていたらしいが、気付いた時には居なくなっていたそうだ。その事で随分と捜索とかあったらしいけど、結論としては不明なんだってさ。


 オレとは違う第7軍の正規の兵士が喋ってたのを聞いただけなんだけど、それでもあの子が殺されなかっただけ良いと思う。それは良かったんだが、オレの方がマズい。……っと、そろそろ食事の配給だ。あんなクソ不味いものでも食わないと死ぬ。


 オレは食堂になっている建物に行き、硬いパンと塩と何かが入ったスープの椀を受け取る。それを持ってテーブル席に行き、とにかくパンを浸して柔らかくする。その後に浸したところをかじって食い千切り、またパンを浸す。


 周りも同じ食い方っつーか、周りの食い方を初日から真似してるだけだ。とてもじゃないがこのパンは硬くて普通には食えない。スープに浸さなきゃ歯が折れたり欠けたりするほど硬いって、非常食でも普通は無いぞ。いったいどうやって作ってるんだ?。


 どういう風に作ったらこんな硬いパンになるのか、むしろ教えてほしいぜ。これなら最初から粥にしてあった方がまだマシだろ。あと野菜も足りなきゃ肉も足りない。むしろここの奴等はよくコレで生きていられるな? 絶対に早死にするぞ。


 本当に早くここから逃げないとマズい、戦争とかいう以前に死んじまう。それだけは間違い無い。この<奴隷の首輪>のマスター登録とやらが、現在は第7軍の指揮官になってるんだよな。それさえ何とか出来ればと思うんだけど、手が出せなくなるように命令をされてる。


 当たり前だが、逃げられるようにはなってない。何とかしたいんだけど、今のところ何とも出来ないんだよ。こんな事を考えながらだから、疲れてるのに毎日眠れない。このままじゃ本当に参っちまうかもしれないし、もしかしたら既に駄目なのかも。


 そう思って………誰か居る? ここは第7軍の宿舎で馬小屋のようになってる所だ。簡単に言えばプライバシーなんてなく、部屋の扉なんて最初から付いてない。正直に言ってケツが掘られないかという恐怖もあって眠れないんだけどな。


 それはともかく、絶対に誰か居る。気配というか何というか、そういうものを感じるんだ。もしかして本当にオレのケツを掘りに来たんじゃないだろうな? 誰が来たのか知らないが、反撃は出来る筈だ。なるべく抵抗「静かにしろ」して……。



 「キサマが役立たずの召喚者か。確か【加速】だったな。我が国でさえ要らんが、むざむざと利用させる意味は無いから、その首輪は外してやる。後は自力で逃げ出すんだな。そうそう、一階の奥の部屋に行けば金はあるぞ。せっかくならアレを取ってから出るといい」



 寝転んでいるオレの背後をとっている者が誰か分からないが、背中にナイフのような物を押し当てられてるので動けない。後ろの者が首輪に何かをすると、首輪から「カチリ」と音がした。その音にビックリしていると背後から気配が消え、慌てて起き上がると既に居なくなっていた。


 オレは首輪を触って外そうと試みると、すんなりと首輪は外れたので、さっさと外して部屋を出る。何かしらに利用できるかもしれないので持って行くが、先程の男が言っていた金を手に入れてから出よう。流石にお金も無しには生活出来ない。


 出来るだけ足音をさせないように歩きつつ1階へと下りたオレは、入り口から一番遠い奥の部屋へと入った。ここは確か指揮官の執務室だった筈。そんな所に金があるのかと思うが、音がしないようにゆっくりと開けて中に侵入。部屋の中を物色していく。


 すると大きな机の一番下の引き出しに革袋が入っており、そこにチャラチャラ音が鳴る貨幣が入っていた。音が鳴るとマズいので革袋をギュっと持ち、オレは恐る恐る部屋を出る。そして次は備品倉庫へ。


 ……あった、鉄の鎧と鉄の剣。悪いがこれは慰謝料として貰っていくぜ。ついでに背負い袋も貰っていこう。


 鉄の鎧を着て、鉄の剣を差す為の剣帯も貰っていく。無駄に装備の仕方とか教えられたけど、それが早速活きてるなあ。鉄の胸鎧なんで重いけど、それでも無いよりは遥かにマシだ。よし、革袋を背負い袋に入れるのは宿舎を出てからだな。


 この宿舎の唯一助かったところは、靴を履いたままでも良かった事だ。だからオレはスニーカーを履いたまま寝起きしていた。御蔭で誰かに奪われる事が無かったんだから、ありがたい限りだ。取られてたら裸足で逃げる羽目になってたかもしれない。


 この第7軍の宿舎は町の外にある。それだけは知っていたので、オレは宿舎を出ると傍にある王都から離れるように走って行く。途中で【加速】スキルの事を思い出し使ってみたらビックリ。超絶に速く走る事が出来た。


 多分だけどこれ、オリンピック陸上100メートルの金メダリストより速い。普通にチートじゃね? だって一般高校生が金メダリストより速いっておかしいだろ。


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