1073・三人でのボス狼戦
Side:ミク
「ま、とりあえずルルの故郷が日本だというのは分かったけど、私が空間座標を知ってる日本じゃないから、故郷には帰してあげられないね。もう一度言うけど、私が知ってるのはダンジョンがある日本だからさ」
「流石にそこは私の故郷じゃないのは確定よ。幾らなんでもダンジョンは無い。ラノベじゃないんだから、ダンジョンなんて日本にある訳が無いし。むしろラノベのような日本が現実にある事に驚く。信じられないくらい」
「ガイアはねえ、魔物の利用でエネルギー問題は解決した感じ? 魔石が手に入ればクリーンな発電が可能になるから、自然も回復するんじゃないかな? 元々壊してたから、きっと歪にしか回復しないだろうけど」
「そうねえ。魔石を使えば発電出来るってのは重要よ。どのみち魔道具が普及すれば電気を使う物は減っていくんでしょうけど、ガイアは電気で発展してきたような星だからね。そうそう簡単に手放したりは無理でしょう」
「確かに電気の無い生活は考えられなかったかなぁ……。今は当たり前のように過ごせてるから問題ないけど、戻って同じ生活が出来るかって考えたら無理よねえ。だって電気で生活が成り立ってるし」
「でしょうね。って、そろそろボス戦に挑みましょうか。十分に休憩は出来たでしょうし」
私達が会話ばかりしていたので、ちょっと飽きていたフィルやベルを連れてボス部屋の中に入る。私が左端でティアが右端、真ん中のヤツを倒すのが三人。そう決めて、ボス狼が出てくるのを待つ。
ニニとルルは二度の経験があるけど、ヴィーは無いから緊張してるね。そう思っていると地面に魔法陣が現れ、輝きながら回転するとボス狼が出現した。私はアイテムポーチから長巻を取り出しつつ真っ直ぐ歩き、ボス狼に近付いていく。
ボス狼は私が近付いてくるのを見て、姿勢を低くし唸りを上げる。しかし私がそれを無視して近付くからだろう、ある程度の距離まで近付くと一足飛びで噛みつきに来た。しかしその跳躍の途中で長巻をボス狼の体の下に差し出し、片手一本でボス狼の体を掬い上げる。
私を越えて後ろに飛ぶボス狼を反転して追いかけ、空中で真っ二つに両断。その一撃でボス狼は死亡した。大きな動きや速い動きはしていないので、フィルに負担が掛かるようには動いていない。フィルは真っ二つになったボス狼を見てキョトンとしている。
ティアの方はさっさと首を切ったらしく、派手な血飛沫を上げながら死んだらしい。残るは真ん中のボス狼だけなんだけど、ヴィーが前に出ているものの圧を相当に受けている。動きが硬くなっているので少々マズいかもしれない。
まだ【身体強化】とか使えないからね。しっかりと使えるように練習させてからの方が良かったかもしれない。そう思うものの、他の二人がカバーすれば何とかなるとも思っている。二人居るんだしね。
前に出たヴィーが盾を構えながら対峙している。その右後ろからニニが棒手裏剣を構え、左後ろでは十字槍をルルが構えて待つ。敵の隙を探しつつ両方が対峙しているが、先に動いたのはボス狼だった。
大きな体を使ってヴィーに圧し掛かろうと跳んでくる。それを見たヴィーが硬直してしまい動けない。が、ボス狼がヴィーに圧し掛かる前に、ニニの棒手裏剣が頬に直撃する。その痛みで圧し掛かるどころでは無くなったらしい。
「ヴィー! 動きなさい!! 動かないと死にますよ!!」
「!?」
慌てて動き出すヴィー。ティアの言葉が功を奏したのか、硬いものの全く動けないという事は無くなった。本当なら自分の力で復帰してほしかったけど、命の危険があったし仕方ないかな。大型の魔物はそれだけで圧があるからね。
素早く二本目の棒手裏剣を手に持つニニ。しかしそれを見てニニに対し距離を一気に詰めるボス狼。四足歩行は後ろに行くのが得意じゃないからね。後ろに下がるくらいなら前に出た方が良いという判断だろう。
しかしニニは足に【身体強化】を使って横っ飛びで逃げた。そして着地した瞬間の右足にルルの十字槍が刺さる。途端に上がるボス狼の悲鳴、その時にはルルはバックステップで離脱。足をやられて大きく機動力が下がったボス狼と対峙。
そうしている隙に後ろからヴィーが攻撃。ボス狼の右後ろ足にメイスを振り下ろす。そしてそれを見ていたニニが、同じタイミングで脇差を左足に振り下ろす。直撃したもののヴィーの攻撃はそこまでの威力にはならなかった。
しかしニニの攻撃はきっちり斬り裂いており、半ばまで左後ろ足が斬られた。これで右前足と左後ろ足が碌に使えなくなったボス狼は一気に弱体化。左前足と右後ろ足を使って振り向こうとするも、更にニニに追撃を喰らい左後ろ足を切断されてしまう。
「ガァァァァァァァァッ!!?!?!」
「!?」
「ヴィー、ビックリしている暇なんて戦闘中にはありませんよ! チャンスです、一気に行きなさい!!」
「はい!」
高位貴族というか半王族とも言えるヴィーに対し、親近感でも生まれたのかティアは助け舟を結構出すね? 別に悪くは無いんだけど、ちょっと意外かな。それとも別の星の高位貴族だから親近感が湧いたのかも。
流石に同じ星じゃ警戒する相手というか、社交の相手だからねえ。ティアだって気を許す事は無いだろう。最後は三人で攻撃して勝利したか。まあ、悪くは無い結果か……ヴィー以外は。
「お疲れー。ドロップアイテムを収納したら、さっさと先に進もうか。反省会は後でね」
私はそう言って三人の誰でもいいから拾うように言う。するとニニがヴィーに拾うように言った。おそらく初めてのボス戦だったからだろう。記念品みたいな感じに考えてるんだろうね。
ヴィーはお礼を言って牙を拾い、空いた扉から先へと進む。ボス部屋を出ると自動で扉が閉まり、先へと進みながら反省会というか駄目出しを行う。
「ヴィーも分かってるだろうけど、一番駄目だったのはボスを前に固まった事。どんな相手でも同じだけど、動けなければ死ぬ。これは間違いの無い事実だから、何があっても動くように」
「はい、申し訳ありません」
「謝るのは二人にね。特に棒手裏剣を投げたニニの御蔭で助かったと言えるんだし」
「ええ。ニニ、ありがとうございます」
「なかまだから、なんとかするよ!」
「そうね。私も、と思わなくもないけど、多分私は投げるの駄目だと思う。ニニみたいに敵に当てる自信が無い」
「駄目なヤツは駄目だからね。投げるという行動一つにも才能の有無はあるわ。こればっかりはどうしようもないのよ」
「とにかくヴィーは相手の圧に負けずに動けるようになるように。盾が動けず倒されるって戦線崩壊を意味するからさ、絶対にあっちゃいけない事だよ」
「はい……」
「そうですね。盾士は勇気が重要になってきます。相手と一番前で対峙する、それだけの勇気を持たなくては盾士を名乗れません。貴女が思っているよりも、ずっと大変ではあります」
「しかも一番頼られる立場でもあるから大変なのよね。そこでチームの安定性が決まると言っても過言じゃないし、盾が弱いとチームとして強くなれない。それぐらい大事でもあるのよ。ま、貴女はこれからだけどね」
「今は色々な失敗をして凹む期間だよ。最初から上手いヤツなんて絶対に居ないし、どんな達人でも最初は失敗してる。……っていうか、最初から卒なく熟すヤツは達人にはなれない。小器用なヤツで終わる」
不思議ではあるんだけどね。




