1047・王と宰相との話し合い
Side:ファーダ
俺達は宰相と王を前にして俺達が何者かという真実を教えた。ノノが猫の姿になったり人型になったりする事で完璧に理解できたらしい。今は両者共に若干だがぐったりとしている。まあ、理解できるのでそっとしておいているが。
「まさか、最強の怪物というのが一人ではなかったとは……」
「それこそ、まさかだ。何故一人だなどと勝手に思った? 俺達にはそういう話でしかない。そっちが勝手に誤解していただけで、俺達に非は何も無いぞ? 教えるかどうかはこっちの裁量であって、必ず教えなければいけない訳でも無い」
「まあ、そうなのだがな……。そして、そなたらであれば<殺戮者>とて簡単に討伐できるだろうよ。それはともかく、宰相に何の用だったのだ?」
「俺達は50階に到達。<がしゃどくろ>……簡単に言えば巨大なスケルトンと戦って倒した。他に勝ち方があるのかは知らんが、俺達は【浄化魔法】を使って倒している。おそらく王が47階で撤退したのはアンデッドが原因だろう?」
「ああ。アレらは壊しても倒しても幾らでも復活してきてな、流石に47階の量は対処不能に陥った。余だけならば突破できたのだが、仲間達を置いて行く訳にもいかんからな。それで撤退する事となったという訳だ」
「成る程な。ま、俺達はそれを越えたのだが、それは表に出す気は無い。面倒の元だからな。俺達が言いたいのはそんな事ではなく、50階のボスを倒すとランダムで骨製の武器が手に入るのだが……」
そう言って俺はアイテムバッグからカラフルな骨製の武器を様々に出す。黒い骨の包丁とか、紫色の骨の三節棍とかもあるんだが、それらを見た王と宰相は半眼でジトっと見ている。コレが50階ボスのドロップかと思ったのだろう。
更には三つの一式防具を見て呆れ返ってしまった。どんな装備だよと言いたいのはよく分かる。しかしこの防具、思っているよりは優秀なのだ。何故なら硬さもあるのだが、通常の鎧よりは遥かに軽い。
「俺達には全く必要の無い物だが、役立てられる者は居るかもしれんからな。だから持って帰ってきた訳だ。誰も要らんならダンジョンに捨ててくれば済む。それよりも重要なのはこっちだ」
そう言って、俺は骨製の武器を片付けた後、二本の壜をテーブルの上に新たに置く。それを見て宰相が驚いた。既に俺達が言う事を疑っていないのだろう。俺は<鑑定の水晶>も出し、王か宰相に飲むように言う。
「余か宰相がか……。確かにそなたらが飲んでも効き目なぞ分からんからな。そもそも効くのかすら不明だ。それに我が国のダンジョンで発見されたものなのだから、余が飲んでもおかしくはあるまい」
「何を仰いまするか。陛下によく分からぬ物など飲ませられませぬ。ここはまず私めが」
「何を言っておるのだ宰相。余の事は心配など要らぬわ。この者達が嘘を吐く事などあるまい。だから、ほれ、さっさと渡すのだ」
「いえいえ。陛下に万が一の事があってはいけませぬ。ここは忠臣たる私めが毒見役としてこの<若返りの薬>とや「早くしろ」らを……」
「どっちでも構わん。既に<若返りの薬>である事は分かっている。それにいきなり効いたりはせん。一晩眠って次の日だ。次に手に入るのはいつになるか分からんから、そこは忘れんようにな」
その後、色々と話し合って王が飲む事になった。まあ、<アーククラス>の王が長生きした方が、国にとっては良いだろう。さっさと飲ませた俺達は、ついでに<再生薬>の話もしておく。
「うぐっ、何だコレは!? こんなに不味い物だったのか! 母上も異様な程に不味かったと言っておられたが、まさかここまで不味いとはな……」
「それはともかくとして、もう一個の方は<再生薬>と俺は呼んでいる。それは失くした手足が生えてくるという薬だな。ただし速度はゆっくりだろうというのと、体の肉を使うと思うので結構な痛みと痩せてしまうのが難点か?」
「痩せる……。では最初から痩せている者が服用すると?」
「最悪は体中の肉が再生に取られて死ぬかもしれん。ミクが右腕の肘から先を喰ってやった大臣。アレぐらいなら問題ないのではないか?」
「ドラグール先代公爵か………。有能だから使っているが、アレの息子が使えんのだ。母上も散々注意しておるというのに聞きもせん。そして教団との妙な繋がりも構築しておる。先代公爵も随分と叱責したらしいが……」
「ここでドラグールとかいう公爵家が関わってくるのか。あの腕を喰ったヤツがそうなら、その孫がこっちに絡んで来ているぞ。緑の蛍光色の人型だった<殺戮者>にやられて死ぬ間際だったのを助けてやったのだがな、こっちに喧嘩を売ってきた」
「何をやっておるのか……」
「まったくですな」
「助けてやった後に遣いの者が来たが、俺達は会う気など無かったのでな、断った。で、思い通りにならなかった遣いがこっちを見下してきたので、さっさと気絶させてダンジョンに潜ったんだが……」
「その次の日である今日、ダンジョンを出てギルドに行ったのだが、そこでも絡んできてな。また気絶させてやった。そして受付に30階と40階のボスのドロップアイテムを置くと、それを見て欲を出したのだろう、自ら現れて我らに従えとかホザいたのでな。そいつも気絶させてやった」
「何をやっておるのだ。それに何より、何故ドラグール公爵の息子がダンジョンに行っておるのやら。誰にでも潜る自由はあるとはいえ、それだけでは無い気がするのう」
「はい。位階を上げようとしているだけならば良いのですが、何らかを目的に動いているとなると、その見極めが大変でございますぞ」
「そんな事は無いのではないか? 我らに喧嘩を売って来ておるのだし、夜中にはスラムの者でも送ってくるであろうよ。それを叩き潰した後に今の公爵を善人化すればよい。こちらに喧嘩を売ってきたのだから、仕方あるまいよ」
「「???」」
俺は意味が分かっていない王と宰相に善人化の説明をすると、両者共に顔を引き攣らせた。洗脳ではなく書き換えであり、一度書き換えられると二度と戻らないというところが恐怖なんだろうな。神の権能だから強制だし。
「うむ。まあ、しかし現ドラグール公爵であれば致し方あるまい。教団と何をしておるのか知らぬが、結構な関わりがあるらしいしの。っと、有効活用するので<再生薬>を一つ売ってくれぬか?」
「それは構わないが、何に使うんだ?」
「先代のドラグール公爵に使う。そなたが取ってきた物だとも伝えてな。それと先程の善人化の話も密かにしておく。後はアヤツが手綱を握れば問題あるまい。現公爵に困っているのはお互い様だからな」
「たとえ碌でもないヤツでも当主は当主か。そう簡単に首を挿げ替えるのも問題だからな。しかもまだ大きな何かはしていないのだろう?」
「そうなのだ。しかし水面下では何らかの行動をしておるのは間違い無い。ドラグール公爵家から結構な金銭が教団に渡っておるからな。それを教団が何に使っているかは知らぬが、面倒な事よ」
「よくあるパターンとしては外国の勢力と取り引きをしているとか、或いは繋がっているとかか。可能性としては考えておいた方が良いのかもな」
「やはり、それを考えるか。何処の星も変わらんのかもしれんの」
「しかし、それは国や民に対する裏切りでは?」
「そんなもの後で幾らでも言えるぞ? 自分達は民の被害を少なくする為に交渉していたのだ、とかな。国が奴等を跳ね返せないのが悪いと、国に責任転嫁をする可能性もある。公爵が関わっているなら、公爵家による成り代わりか?」
「余を退けて、己が王位に就く気か。その為に教団に近付いたとなれば分からんではないが……」
「<アーククラス>の陛下に成り代わるなど不可能だというのに、何を考えているのやら……。呆れますな」
まあ、その感想がこの国の大多数の意見だろうな。トップが強いとなれば国民は安心する。これは当たり前だし、だからこそ国民は強者を求めるのだ。公爵家の位階が高いとは聞かんので、成り代わるのは無理だろう。
国民も貴族も認めまい。




