1038・模擬戦とワイバーン戦の終了
Side:シャルティア
二番隊、三番隊との模擬戦も終了した。当たり前だけど、こっちが負けるなんて事は無い。明日は一番隊、二番隊、三番隊の合同訓練だ。こっちは下軍300名だけど、然して問題は無いね。そもそも弱い所を突けば勝てるからさ。
自分達が力を合わせれば……なんて考えてるんだろうけど、その考えは甘すぎるんだよ。指揮官が三人に増えたのなら、頭がそれだけ増えるんだ。バラバラになる可能性が上がるだけ。そしてこっちの頭は一つであり、あたしが統制している。
その違いっていうものを教えてやるよ。頭が三つあったところで強くはならないのさ、むしろおかしな命令を出す所為で、あっちに動いたりこっちに動いたりするだけ。言うなれば命令系統が一本化していない弊害を受けるだけさ。
この形が当たり前だったからこそ疑問が無いんだろうけど、頭が多くても意味が無いって気付かせないとねえ。本当なら大将軍が指揮をとるのが一番良いんだけど、大将軍はどう考えてもお飾りだから無理だし……。
アレはアレで必要だっていうのは分かるんだけど、一番上がきっちり統制しないと上手くいく訳が無いだろうに。今なら指揮官部隊を作るのも悪くないかもね。それぞれの隊長には兵士の育成をさせて、指揮官部隊の中から選ばれた者が指揮をする。
その形が良いかと思うも、指揮官の才能がある者を探すのも一苦労だね。それでも探すしかないんだけどさ。それっぽい指揮じゃ困るし、きっちり兵士達を活かす指揮をしてもらわなきゃ困るんだよ。兵士達の力が活きないんじゃ、軍の意味が無い。
それじゃ兵士達も何の為に戦ったのか分かりゃしないだろう。兵士達は無駄死にする為に居るんじゃないんだよ。……っと、最後の戦いの為のワイバーンが来たか。これは模擬戦じゃないんだけど、どれぐらいの力があるか探る為に出してもらった戦いだ。
「本当に宜しいのですか? 我が三番隊のワイバーンライダーは甘いものじゃありませんのよ?」
「楽勝ではあるんだけど、手加減は難しいかな? でも大丈夫だよ、死なせないようにはするから。見てても余裕だし、この程度じゃねえ? って感じ。やっぱりドラゴン以下だね」
「それはそうでしょうけど……。まあ、ご自分で言っておられるのですから、これ以上は何も言いませんわ」
あいつプライドが高いねえ。まあ、貴族であろうとも自分の力で伸し上がってきたんだから、プライドを持つのは分かるんだけど……アレじゃ駄目だ。プライドを持つのと、相手の事を考えないのは違う。
敵は分析するべき相手だ。決して自分達の方が強いからと、見下すような相手じゃない。あの女はロフェルの事を分析しようともしていないんだよ。何の為の三番隊隊長なんだか……。大将軍もその補佐も呆れてるのが見えないんじゃ、隊長失格と言われても文句は言えないよ?。
ワイバーンライダー一騎しか来てくれなかったけど、これで十分さ。ロフェルの勝ち筋はあたしも分かってるし、あの勝ち筋だと20騎全てが来ても答えは変わらない。何度やってもロフェルの勝ちは揺るがないし、ワイバーンライダーは何をやっても無駄だ。
「それじゃ、ワイバーンライダーとロフェル嬢の戦い…………始め!!」
「GYAAAAAA!」
「すぅ………オラァ!!」
「!?!!?!?!!?!」
「うわっ!? どうした!? おいっ!!!」
ワイバーンは速攻でロフェルから離れて逃げ去っていったねえ。まあ、おそらく塒に帰って行ったんだろうけど、これでロフェルの勝ちは確定した。ワイバーンは敵前逃亡したから当然だけどさ。
それにしても気合一発でワイバーンが逃亡とは、流石はロフェルと言うしかないね。あたしには無理だけど、アタシの場合は殴り飛ばせば済むか。
「ロフェルの勝ちだけど、気合いだけでワイバーンが怯えて逃げたわねえ。あれって【鬼ノ覇気】ってスキル?」
「そうだけど、ほんの僅かにしか出してないんだけどね? 予想以上にワイバーンがビビりだったのか、速攻で逃げてったよ。ちょっと予想外」
「ロフェルの特殊能力である【絶ノ咆哮】とは違うんだね? あれは【鬼ノ覇気】の方であって、特殊能力の方じゃない?」
「それは間違いないよ。何となくで分かるけど、多分【絶ノ咆哮】は咆哮だけで敵を殺せる。何となくだけど、そういう能力だって分かるんだ。自分の事だからかな?」
「「「「「「「………」」」」」」」
「それ以前に、ロフェルの特殊能力には【滅殺】っていう危険そうなものもあったもんねえ。【絶ノ咆哮】がソレなら、【滅殺】ってナニよ?」
「ごめん。そっちに関しては全く分からない。<鑑定の水晶>で出たけど、その後も全く分からないっていうか、自分の中にそれっぽいのも感じないし……。いったい何なんだろうね?」
「まあ、とにかくワイバーン如きじゃ相手にならない事だけは分かったから、そこはそのうちに分かる時が来るでしょ。字面がどう考えても不穏だもの。わたしの【魂滅】もそうだけどさ」
「そういえばアレッサも危険そうな特殊能力を持ってたんだっけ? おそらくそれが<神殺し>を可能にする能力なんだと思うけど」
「それはともかくとして、ワイバーンライダーとて万能ってわけじゃない。<アーククラス>相手だと尻尾巻いて逃げるしかないって分かったんだから良い事さ。相手が<アーククラス>を出して来ないっていう保証は無いんだからね」
「しかし<アーククラス>を戦争に投入するなど……」
「分からないよ? その一度で竜人国を潰せるとしたら、後先考えずに投入してくる可能性はある。それも人間種と魔族の両方が<アーククラス>を投入してきたら、流石に竜人国といえども耐えられないだろう?」
「「「「「「「………」」」」」」」
「戦争なんて何でもアリなんだから、自分達の今の状況が薄氷の上なんだという自覚は必要よ? 平民がそれを持つ必要は無いけど、軍人は常に最悪に備えなくちゃいけないわ。それこそが軍人なんだもの」
「竜人国にとっての最悪は国が滅ぶ事だね。そして一番可能性が高いのは、敵が<アーククラス>を全て投入してきた時か。私達の存在を抜きにすると、壊滅するね」
「わたし達とミクが居る事を考えると、敵は全て滅ぼされるけどね。<アーククラス>如きがミクに勝てる訳がないんだし、そんなバカは喰われて終わりよ。そもそも神様ですら喰う化け物が、<アーククラス>如きに負ける筈が無いんだけど」
「本当にね。ま、とりあえず明日からは模擬戦を行うのと、指揮官に向いてそうなヤツに指揮を教えていく事から始める。本人が強いか弱いかと、指揮が得意かどうかは別だからね。戦闘能力と指揮能力は全くの別物だ。そこは忘れちゃいけない」
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Side:ミク
「と、そんな事を話して一旦上軍の建物に行って話を詰めてきてね、その後に帰ってきた訳さ。だから明日からは模擬戦と同時に指揮官に向いている連中を探す仕事だよ。アレッサとロフェルは下軍の連中を叩き直す係だね。まだまだ基礎が足りてないし」
「確かにシャルが言う通り、相手が形振り構わなくなったらマズいわね。<アーククラス>とやらをぶつけてくるのは確実だし、それが数で来ると壊滅するわ。今までは人間種と魔族で牽制し合ってたんだろうけど……」
「今回の召喚者がどう出るかよね。それはともかく、わたし達の方はそれで終わりよ。マハルとカルティクの方はどうだったの?」
「ボク達の方はですね……」




