1037・一番隊との模擬戦終了
Side:シャルティア
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」
ふぅ、やれやれ。番狂わせも無く、順当に勝利したね。上軍とか下軍とか言っているけど、そこまで大きな差というものは無いんだよ。そもそも下軍の連中だって鍛えていない訳じゃない。上軍と下軍を分けているものは大きく無いって事さ。
しっかし、圧倒的なまでの勝利だったねえ。これで勘違いされても困るけど、今は物を言う時というかタイミングじゃないね。下軍にあった者達が勝ったんだ、水を差す必要は何処にも無いだろう。勝利に酔える時も必要ではある。
「まさか………こんな……」
「意外と言うか何と言うか、思っている以上にあっさりと勝利したね。上軍100名と下軍100名。どちらも同じ人数で戦った以上、文句は一切言えない。とはいえ、あまりにも違いすぎる気がするけど?」
「アレはあたしの持つスキル、【群狼女王】の効果さ。このスキルは使用している間の士気を高める事が出来るし、高く保ち続ける事が出来る。あたしの統制化にある以上、士気が下がる事なんて無いんだよ。その結果だね」
「【群狼女王】……。というか、士気を高めて下げないスキルっていうのも凄いねえ。でも、それは反則じゃない?」
「そんな事は無いさ。指揮系スキルの中には兵の能力を上げるものがあるけど、あたしの【群狼女王】は士気だけだからね。つまり身体能力や技術は兵士達が磨いてきたものであって、あたしのスキルとは関係が無い」
「ああ、成る程。そこは兵士達が努力した結果か。さっきの戦いを思い出しても、冷静に対処しようとする側と、それを押し潰そうとする側って感じだったからね。そして士気が高いままに押し潰された……」
「それは……」
「負けたのが相当にショックだったんだろうけど、上軍だからといって絶対に勝つなんて事はあり得ないんだよ。そもそも100人しか用意してないだろ? この100人ってのが大事なポイントさ」
「100人が……?」
「いいかい? 100人っていうのは思っている以上に策なんかが入り込み難い人数なのさ。100人程度じゃ策を練ったって高が知れてるし、上手く嵌まったとしても効果は高くない。もともとバラけるか固まるかは指揮官の自由だからね。多数を使う戦争に比べて変化がおきやすい」
「つまり、自力でのぶつかり合いにしかならない?」
「全てがそうとは言えないけどね。先に陣地を作ったりすれば多少は変わるだろうけど、そこまで大きな差にはならないだろうさ。100人というのは絶妙な人数であり、自力が試される人数でもある。そして上軍と下軍の差はあんた達が思っているよりも少ない」
「士気が高ければ押し切られてしまう程には差が少ないって事だね。だからスキルで士気を高めた連中にボコボコにされたと……。士気一つでここまで変わると言うべきか、それとも士気というのは大事だと言うべきか……」
「士気一つで戦いの勝敗が変わるとまで言われますからな。今までは士気を高くするには、などと考えてきましたが、ここまで明らかに変わるとなると……」
「真面目に士気を高く保つ方法を考えなければいけませんね。今までは食事などでしたが……」
「しかし、今度は高くしようとするあまり、現場で腑抜けになられても困りますわよ? 士気の高さは大事ではありますけれど、それとこれとは話が別なのでは?」
「確かにそうだね。あそこまでの士気の高さは普通じゃ無理でしょ? さっきのは正に狂乱の坩堝と言わんばかりの状態だったよ。あれなら狂戦士と言われても否定できないんじゃないかなぁ」
「という事は、【群狼女王】とは軍の兵士を狂戦士にするスキルか? それは明らかにおかしいし、そんなスキルが存在するとは思えないのだがな……」
「そもそも彼女は<アーククラス>なんだから、それぐらいのスキルは持っていても不思議じゃないけどねえ」
「「「「「<アーククラス>!?」」」」」
「あれ? 言ってなかったかい? あそこに居る三人は全員<アーククラス>だよ。そのうえ一人は<神殺し>すら可能ならしいしね」
「それはねえ……事実ではあるんだろうけど、今のところは無理よ? 前にも言ったけど、神様から<神殺し>が可能だとは言われたけど、それは育てば出来るって話だったのよ。私は<真・吸血鬼族>になってから日が浅いからね。まだまだ無理でしょ」
「育てば<神殺し>が可能って時点でおかしいんだけどね? ウチのバカ息子がどれだけ育っても<神殺し>なんて大それた事は無理さ。出来るとは到底思えないね」
「まあ、<アーククラス>って言ってもピンキリさ。あたしみたいなのも居れば、アレッサみたいなのも居る。かと思えばロフェルみたいなのも居るからねえ……」
「気付いたら破壊の権化みたいなスキル構成になってるものねえ。かつては魔法が得意だった筈なのに、いつの間にか脳筋みたいになってるし」
「脳筋はちょっと酷いと思うけど、確かに日常のちょっとした魔法以外は使わなくなったんだよねー。冗談でも何でもなく力でどうにでも出来るし、力でドラゴンすら倒せるんじゃ魔法を使う意味も無いし」
「でしょうね」
「「「「「「「………」」」」」」」
ドラゴンを倒せるって部分で唖然としてるねえ。大将軍には言ったけど、あたし達にとってドラゴンはそこまで強い者でも何でも無い。あたしだって【神爪神脚】を使えば一撃で首を輪切りに出来る程度だ。
ドラゴンって言ったところで、一定の実力を超えれば然したる強さでも無いんだよ。逆に言えば今もって化け物としか言い様が無いミクは、冗談でも何でもなくメチャクチャなんだ。アレは本当に最強の怪物としか表現できない存在なのさ。味方で良かったと言うしかない。
そろそろ話も終わりそうなんで、次の試合に出る100名を大隊長に選んでもらうかねえ。次の部隊は防衛が主体の二番隊だけど、そのまま押し潰せば勝てるだろ。今は相手さんも慣れてないし、圧を掛け続けて崩せば十分に勝てる。
問題は慣れて対処出来る様になったら変わるって事なんだけど、その時は【精神網羅】で薄い所を崩せばいいのさ。それさえ無くなったら、強固な軍隊の出来上がりってね。下軍は狂乱の部隊、上軍はそれに対抗できる部隊。それで軍全体の向上を図ろう。
さっきの狂乱を見ていたからか、100名に名乗りを挙げるヤツが多いねえ。自分も活躍したいと思うのは当たり前か。ここまでは良いんだけど、問題は下軍が負けだしてからだねえ。そこから基礎の大切さを学ばせなきゃいけない。
何だかんだと言って、基礎は大事だから基礎なんだ。その基礎が出来ているヤツと出来ていないヤツには、それだけの差がどうしたって生まれる。後は基礎の練度を上げていくしかない。だから軍人ってのは基礎練習ばっかなんだよ。それが何より大事だから。
おっと、今後の展開を考えてたら100名が揃ったようだね。それじゃ、次もボコボコにしてやるか。100人すら足並みを揃えるのは難しいって事を教えないとねえ。それなりなら出来るんだよ、それなりなら。
ただし崩れ始めると簡単に綻ぶんだ。100人じゃ誰かの影に隠れる事は出来ない。自分が崩れれば、そこからどんどんと崩れて瓦解する。その責任に耐えられるかねえ? 耐えられなきゃ、そこから崩れるよ?。
そして、あたしはそれが【精神網羅】で分かっちまう。当然そこを突かないほど、あたしはバカじゃない。伊達に護国の英雄とは呼ばれてないんだよ。




