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1033・怒るセリオ




 Side:ファーダ



 何故か王都に戻る時といい、ギルド内といい、頭の悪い連中に絡まれるな。まあ、頭が悪いから絡んでくるのだが、己がマヌケという事も知らん奴等は確かに居る。それは事実だが、幾らなんでも多すぎるぞ。どうなってる?。



 「それにしても、ダンジョンから王都に帰ってくる際にもバカが絡んできたのだが、それが竜人族なのかと言いたくなるな。そなたらが人間種を気に入らんというのは自由だが、無理筋な難癖をつけている時点で同類ではないか」


 「本当にな。己らが竜人族の名をおとしめている事にすら気付いていない、それこそ愚か者そのものだろうが。気に入らんのは今までの歴史的な事があるのだろうがな、己らまで成り下がってどうするのやら……」


 「オレ達の同胞を奴隷にしているような奴等が言うんじゃねえ!!」


 「それは奴隷として連れて行かれた家族が言うべき事だし、連れて行った奴等に言うべき事だな。何も罪を犯していない者にまで罪を押し付けるというのであれば、同じ事をされても文句は言えんぞ? 覚悟しておけよ?」


 「………」


 「いい加減にしろ。この者達は我が国に居るだけで何かをした訳でもない。してやお前のやっている事は強請ゆすたかりと何も変わらん。何の証拠も無く相手に難癖をつけているのだからな。本当に賞金首にするぞ」


 「………」


 「これは徒党を組んで寝首でも掻きに来そうだな、俺としては構わんが。せっかくだから、襲ってきたら生き地獄にして帰してやるか」


 「帰すのか? レティーに食わせてしまえば良かろうに、死体も残らんのだし」


 「私とて食べる物は選びたいのですが……。ま、そいつの記憶を奪うのには都合が良いですかね」


 「スライムが喋っているだと!?」


 「レティーは俺達の仲間だ。そのうえ極めて特殊なスライムでな。相手の脳味噌を喰らえば、そいつの記憶と知識を奪えるのだよ。敵を喰わせれば次々に敵の内情が明るみになるという便利な能力でな。俺達は助かっている」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」



 周りの連中も理解したらしいな。相手の記憶を奪えるという事は、すなわち知っている情報を丸裸に出来るという事だ。何か怪しい組織に依頼したところで、それらは全て芋蔓式に明らかにされてしまう。もっとも、今の俺達なら魅了の香りを使うがね。



 「あー……まあ、なんだ。聞かなかった事にしておく。それで、お前達は何で揉めてたんだ? と思ったが、そのドロップアイテムの山か。ブロンズランクをザコと言い切るお前さん達なら出来るんだろうがな。ついでに陛下と知り合いみたいだし」


 「「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」」


 「もう確かめたのか? 意外に早かったな」


 「おいおい、ワシは子爵家当主だと言ったろうが、王城への伝手くらいしっかりと持っている。そもそもお前さんが誰かは全く分からなかったが、お前さん達の仲間であろう者がことごとく<アーククラス>だと言うんだ。どうにもならん」


 「「「「「「「「「「<アーククラス>!!!」」」」」」」」」」


 「まあ、知ったのならそれでいい。俺達はいちいち挨拶なぞしていないからな、知られてはいないだろう。どちらでも良かったんだが、信用できるか分からなかったので出なかったんだよ。この国の王の前にはな」


 「敵だと思ったら暗躍するつもりだったのか?」


 「当然だ。俺達の敵になるなら滅ぼされる覚悟があると見做す。敵である以上、誰であろうがどんな国であろうが容赦はせん。そもそもそれが戦いというものだ。そうだろう?」


 「まあ、それはな。ところで、その壜は20階の蛇のドロップか?」


 「ああ。おそらくダンジョンに入る前に聞いた、<5号毒消し>とかいうヤツだろう」


 「とんでもないな……。少なくとも10本以上はあるぞ。これだけで十分過ぎるほどの儲けだが、どうやってこんなに手に入れた? これは滅多に出ない物なんだぞ」


 「これは首を切り落とせば確定で手に入るぞ? 調子に乗ってボスを周回したが、首を落として勝利した場合は確定でドロップしたからな」


 「首を……落とすのか? あの蛇の?」


 「ああ。ノノが一刀で斬り落としたり、セリオが噛み千切って落としたりだな。途中からこの毒消しの確定ドロップ方法を調べ、ようやく辿り着いた方法がソレだ。どんなに傷だらけでも構わん、最後に首を切り落とせば確定でドロップする」


 「それが大変というか、ほぼ無理な事だぞ。よくもまあ、そんなメチャクチャをやるものだ」



 ギルド長が呆れた顔をしているが、俺に喧嘩を売ってきたヤツはまだ納得がいかなかったのだろう。頭が悪すぎるが、また突っ掛かってきた。もはや引っ込みがつかないというところか。



 「そんな事が出来る訳が無いだろうが! 嘘を吐くな!! 皆も騙されるんじゃないぞ! そんな事は出来る訳がないんだからな!!」


 「お前というヤツは本当『いい加減にしろっ!!!』に賞金首……」 



 セリオが周囲に思念を発しつつ、ギルドの建物の限界にまで大きくなってバカを睥睨へいげいする。そこまで多くの者が居ないから良かったが、ぎゅうぎゅう詰めだったら大変な事になっていたな。



 『お前、さっきからいちいち五月蝿いんだよ!! これ以上騒ぐなら僕がお前を喰ってやるぞ!!!』


 「………」



 セリオからピンポイントで強烈な殺気を浴びせられたヤツは、大きなセリオからの圧もあり、漏らしながら失神した。あの受付嬢と同じ結末になるとは、何とも憐れなヤツだ。とはいえ自業自得でしかないがな。


 俺達はセリオの説明もし、実際に目の前でセリオが小さくなる事で周囲もギルド長も納得した。



 「ドラゴンライノな。自分の意思があり、それを伝えられるなら確かにスライムと一緒で問題はない。というか、最大で体高10メートルは大きすぎるだろう。流石はドラゴンの名を冠する種族だけはある」


 「それで思い出したが、今日ダンジョンで<殺戮者>というのと出会ったぞ」


 「<殺戮者>が出たのは聞いていたが、遭ったのか。運が悪かったな。逃げるのは難しくない筈だが……」


 「聞いていたより足は速かったぞ? 実際に逃げ切れていない探索者から、俺が攻撃して引き離したからな。ちなみに姿は緑の蛍光色で人型だった」


 「聞いた事の無い<殺戮者>だな? それにしても逃がす為に囮となるとは、よくやる。無事だったからいいが、気をつけた方がいい」


 「いや、倒したぞ? その<殺戮者>が消えた後には、コレが残っていたからな」



 そう言って俺は受付のテーブルの上に<鑑定の水晶>を置いた。それを見た瞬間理解したのか、慌てて凝視するギルド長。



 「おま!? これは<鑑定の水晶>じゃないか!! 本当に<殺戮者>を倒したのか!? 陛下のチームしか倒した事は無かったんだぞ!!」


 「そんな事は知らん。もしかしたら俺達が戦ったのは、強さがそこまでの個体だったのかもしれん。ただし体全部が毒で出来ているようなヤツだったがな。俺達みたいに毒を浄化できる魔法が使えないと難しかっただろう」


 「毒を浄化できる魔法って……。お前達だったのか、公爵家の方を救ったのは! <殺戮者>にやられて死ぬ間際だったらしくてな、救ってくれた者を探していると聞いている。なんで名乗り出なかったんだ?」


 「面倒だからに決まっているだろう。そもそもダンジョンの魔法陣前を占拠していて邪魔だったんだよ、だから退かしたかっただけだ。その為に治しただけで、いちいち面倒な貴族に関わる気などない。俺達は金儲けさえ出来ればどうでもいいしな」


 「公爵家がお礼もしていないんじゃ話にならんからな。しつこく探されるぞ? ワシも聞かれたら答えざるを得ん」


 「それは好きにすればいい。俺達は関わる気も無いから行かないし、話も聞く気は無いがな」


 「そんな事を言っていると、裏から手を回されても知らんぞ?」


 「なら望むところだ。暴力で俺達に勝てる者など存在しない事を教えてやろう」



 ギルド長は呆れた感じで顔を左右に振っているが、俺達にとっては唯の事実でしかない。ま、公爵家とやらがどう出てくるかは知らんが、楽しみだ。


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