1030・ボス戦と11階
Side:ファーダ
俺達は既に9階に居るものの、ようやく魔物が現れ始めた。最初は餓鬼のような魔物が真横に出現してビックリしたが、一度でも起きたなら後は警戒するだけだ。場合によっては装備を変更しても構わないしな。
実は創造神の権能を試す意味で、武器は割と大量に作られている。全てドラゴン素材の物だが、ミクが得た創造神の権能は自在に素材を変化させるものだった。変化といっても別の物に変える訳ではなく、素材そのものを変化させる力だ。
これが非常に使い勝手が良く、今までなら焼いたり捏ねたりしなければいけなかったのだが、その必要が一切なくなったのだ。実に楽にスムーズに作れる為、量産までもが簡単になり、ついつい本体が調子にのった結果、色々な物が作られた。
俺は短槍を、ノノは戟を使っているだけでしかなく、様々な物が無駄に本体空間に溢れていて邪魔になっているぐらいだ。とはいえ武器だけ大量に持っていても仕方ないので、お蔵入りになった物も多い。
ドラゴン素材の手裏剣なんて誰が欲しがるのだとしか思わん。そもそもドラゴン素材である必要も無いし、強い魔物に使うなら手裏剣では殺傷能力が足りなさ過ぎる。せめても大苦無ぐらいは必要だろう。それでも15センチぐらいでしかない。
人間に15センチも刺さったら死ぬ確率は十分にあるが、ドラゴンに15センチ刺さっても死ぬ事など無いのは当然の事だ。手裏剣などもっと浅い傷にしかならないのだから、尚の事、魔物相手に効く武器ではない。
それでも作りたかったから作ったのだし、本体は満足しているようだ。いつか使う機会があればいいなと言うくらいか。刀とかもあるので使っても言いのだが、俺としては鉈でもいいかと思っている。本体が作った刀身40センチもの鉈があるのでな。
適当に魔物を蹴散らし、食肉になりそうな魔物はレティーに血抜きをしてもらって収納していく。地図の為にウロウロとしていると描き終わり、後は10階に下りるだけとなる。
問題も何もある筈も無く下りたのだが、そこは探索者でごった返している場所だった。どうやら並んでいるようなので俺達も最後尾に並ぶが、いったいどういう事だろうな? 仕方がないから前の奴等に聞くか。
「これはいったいどういう事なんだ? 何でこんなにも並んでいる?」
「お前ここに来るのは初めてか? この先はボス部屋があるんだが、攻略できるのは1回に1グループだけだ。そいつらがボスを倒すか死ぬかしねえと、次の連中は挑戦できねえのさ。御蔭でここまで詰まってやがる。初めてだが鬱陶しいもんだ」
「初めてなのか、この事態は?」
「そりゃな。おそらく<ウッドランク>で燻ってた奴等がこれ幸いにと挑戦しに来たんだろうが、そう簡単に突破できる訳ねえだろうに……。魔物が居ない今がチャンスだと思ったんだろうが、ボスを倒せても帰りはどうするんだろうな? 魔物は復活してるだろうし、何も考えてねえ気がするぜ」
「それは本人達に聞かねばならんが、それよりもボス戦が終わった後で帰るにはどうしたらいいんだ? 待っている奴等が終わってから、またボス部屋に入るのか? 向こうから」
「違う違う。向こう側にもボス部屋を示す扉はあるんだが、向こうだと扉に触れただけで移動出来るんだよ。10階の入り口付近に一方通行の場所があるんだが、そこに出てくる。何故か通ると背後が壁になって戻れなくなるんだ」
「それはまた奇妙な場所だな。いったいどういう理屈で出来てるんだか」
「さあな? 昔の学者なんかが調べたらしいが、これっぽっちも分からなくて諦めたらしいぜ。それからは調べてもいないんじゃねえか? オレ達にとっちゃ興味も無いし、気にする事でも無いからなぁ……」
その後も適当な話をしていると、前のチームの番になったので見送る。目の前にはボス部屋前の豪華な扉があるが、中での戦闘が終わると「カチッ」と音が鳴るので開けるタイミングが分からない何て事は無い。
俺達が適当に待っていると「カチッ」と音が鳴ったので、豪華な扉を開けて中に入る。さっきの連中は無事に突破したのだろう、死体などは一切無かった。ボス戦で負けた奴等の後に入ると、そいつらの死体がまだ残っている事があるそうだ。
もちろん死んだ連中の物なので取ってもいいのだが、それに集中するとボスに殺されるから注意しろと言っていたな。まあ、俺達が他人の装備を奪う事は無い。そもそも質の悪い荷物を得ても邪魔なだけだ。
俺、ノノ、セリオ、レティーが入ると扉が閉まり、ボスが地面の魔法陣から出現する。後ろから誰かが無理矢理入ってくるかと思っていたが、そんな事は無かったようだ。稀にあるらしいが、後ろから無理矢理に入ってきた奴等は殺していいと決まっているらしい。
そいつらは盗賊か暗殺者と変わらないので、むしろ殺してしまう方が後腐れが無くて済む。それに、そういう決まりがあるにも関わらず他のチームの戦いに割り込んだのだ、殺されたところで文句など言えない。
そんな事を考えていたらボスが現れたようだ。見た目は体高2メートルほどの狼であり、それが三匹。これが10階のボスらしい。
「俺、ノノ、セリオとレティーが各一匹ずつ倒す。それじゃ行くぞ!」
「承知!」 「行きましょう」 『いっくぞー!!』
俺は素早くボス狼に近付き、突くフェイントを見せる。目の前のボス狼は直ぐに右に回避したので、それを追い駆ける形で頭に突き込んで回転させる。魔力を流さずとも貫通した穂先は、至極あっさりと狼の脳を貫いて掻き回す。その一撃でボスは死亡し勝利となった。
ノノの方を見ると、ボス狼の頭に横刃を振り下ろしていた。ピッケルのように頭に突き刺さった横刃を更に手前に引き、頭を切り裂いて脳をブチ撒けさせて死亡。こちらもあっさり勝利となった。
セリオとレティーはもっと簡単で、セリオが体高5メートルまで大きくなり、ボス狼に対して突進。撥ね飛ばした先で更に轢き殺して終了となった。質量兵器は突進だけで済むようだ。
ボスを倒し終わるとすぐに死体は消えたものの、その消えた場所にはドロップアイテムが残っていた。俺の所には牙と爪が一つずつ。ノノの所には牙が二本。セリオとレティーの所には尻尾が二本だ。
俺とノノはともかくレティーとセリオは不思議なドロップだな? もしかしてレティーの【熟練解体】が効果を発揮してるのか? ……いや、倒したのはセリオだから関係ないか。それじゃ轢き殺したのが原因である可能性が高そうだな。
となるとボスは倒し方によってドロップが変わるという事になる。これは覚えておいた方がいいな。何気に重要な情報の気がする。
俺達はドロップアイテムを回収すると、さっさと開いた扉の方に向かって進む。開いている扉を全員が越えると自動で閉まったので、これで次のチームが入れるようになっただろう。俺達は11階へと進んで行く。
通路を先へと進んで行くと階段があり、それを下ると11階へと来た。先程の階層とはうって変わって、今度は草原らしい。しかし洞窟型よりも厄介なのが分かる。そこら辺で探索者が戦っているからな。つまり四方八方から襲われる場所という事だ。
草原型の方が面倒で厄介ならしく、魔物が出現しては探索者に襲い掛かるという事を繰り返しているらしい。出て来ているのは兎と鶏みたいな鳥だが、どちらも体高が1メートル50センチはある。
かなりの大きさだなーと見ていると、探索者の一人が兎に蹴り飛ばされた。どうやら徒手空拳で戦える兎のようだ。急に魔物の強さが上がってないか?。




