1028・蛍光色の殺戮者
Side:ファーダ
この星のダンジョンでは<殺戮者>と呼ばれる魔物が居るようだが、まさかこれほど意味不明な奴だとは思わなかった。緑色の蛍光色をした人間の形をした存在。何と言うか蛍光色の全身タイツが動いていると考えれば分かりやすいだろう。
そして、おそらくコイツがダンジョン前に居た、倒れていた連中に毒を与えた者で間違い無い筈だ。とはいえこの<殺戮者>とやら、短槍を突き込んでも全く意味が無いというか、水に槍を突き込んだような感触しかしなかった。いったいどういう存在なんだ?。
こちらにターゲットを変えたのは良いが、倒す算段が付かんな。魔法で攻撃するべきか、それとも物理でどうにかなるのか……。どのみち敵の攻撃でダメージを喰う事は無いのでじっくり戦えば済むのだが、ダメージを与える方法がなぁ。どうしたものか。
「ノノ、こいつに槍を突き込んだが、まるで水に突き込んだ感触しかなかった。しかもダメージは全く与えられていないらしい。あの王が<殺戮者>を倒せたくらいだ、そこまでおかしな能力をしているとは思えん。が、レティーとセリオへの攻撃には気を付けてくれ」
「了解だ。我らが死す事はあり得んが、レティーとセリオは死の可能性があるからな。気をつけねばならん。とはいえ水分が人型をとっているのか? おかしな奴だな。どうやってその水分を人型にしているのやら」
「さてな。どのような方法かは分からんが、とにかく物理が駄目なら魔法だろう!」
俺は試しに【火弾】を連射してやる。すると嫌がったのか後退しつつ回避するので、そのタイミングで高速に接近。今度は短槍で薙ぐ。しかし水を切り裂くようになっただけで、すぐに<殺戮者>の体は元通りに戻る。本当に水分で出来ているみたいだな。
それを確認しつつ<殺戮者>を越えた俺は、後ろに回りこむ事に成功。ノノと共に<殺戮者>を挟み撃ちにする。そしてノノやレティーにセリオとタイミングを合わせ、【火弾】を再び連射。向こうはノノが防いでくれている。
ボボボボボボボボボッ!! と大量の【火弾】が飛び交い、避けられない量の【火弾】を浴びた<殺戮者>は奇怪な声を上げながら苦しみ始めた。どうやらこいつは魔法で倒す相手らしい。いや、熱で倒すのが正しいのか。
「GYUBURYUBYUJECHIGIIIIII!?!!!?!」
「何だコイツは? ここまで奇怪で意味不明なヤツもそうは居らんぞ。火を浴びて苦しみながら、体が小さくなってきたのか? 挙句こやつの体が蒸発する度に毒の煙が撒き散らされておる。信じられぬ程に鬱陶しいヤツよな」
「御蔭でノノは先ほどから【聖清】を使う羽目になってしまっているが、それでも【聖清】で毒を無くせるのだから強い毒ではないのだろう。今思ったんだが、最初からコイツに対して【聖清】を使っていたら、どうなっていたのだろうな?」
「さて、今さらだからどうでもいいのではないか? こやつも相当に小さくなったし、ファーダとレティーとセリオの魔法で挟み撃ちにされておるしな。もはや虫の息に近いし、そろそろ消え失せよう。<殺戮者>といっても我らにとっては所詮この程度でしかない」
「GYUSHUGABYASAAAA!!!」
「何か怒っているような気もせんでもないが、散々に殺してきておいて今さら怒られてもなぁ。今回殺されるのはお前の番だったというだけだろう。どこまでいっても殺し合いでしかないぞ」
「片手間というか、余裕で殺されてしまうのが気に入らんのではないか? おそらく<殺戮者>と言っても色々と居るのだろうが、我らにとっては難しい相手ではないな。今後も見つけたら狩るか」
「そうだな」
「JYUUUU………」
蛍光色の人型こと<殺戮者>が完全に消え去ったので、俺は【火弾】を使うのを止めて最後に【浄滅】を使う。これでこの場の毒は全て無くなったので、ここを通る者は誰も被害を受けないだろう。そう思っていると、<殺戮者>を倒した所に球体が現れた。
「これがドロップか? 何処かで見た事がある物だな? つい最近見たぞ。……ミクが」
「そうだな。最近ミクが見た物にそっくりだ」
その球体を持ち上げたノノはジッと見ていたが、魔力を流すと目の前にウィンドウのようなものが現れる。やはり<鑑定の水晶>だったか。
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<ノノ>
種族:喰らうもの
位階:アンノウン
年齢:176
性別:無し
スキル:無し
権能:善の神の一部・悪の神の一部・呪いの神の一部・魔の神の一部・大地の神の一部・植物の神の一部・精神の神の一部・創造の神の一部
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「やはり我でも結果は同じか。当然ではあるのだが、一応これは我らの物だ。今の内に全員を調べておくか。ファーダも同じであろうが、確かめておいた方が良い」
「確かにノノの言う通りだな。一度は調べておかねば、結果が違っていたら困る。とはいえ違っていたら、お前はいったい誰なんだ? という話になるのだが……」
ノノから手渡された<鑑定の水晶>に魔力を流すと、目の前にウィンドウが現れた。
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<ファーダ>
種族:喰らうもの
位階:アンノウン
年齢:176
性別:無し
スキル:無し
権能:善の神の一部・悪の神の一部・呪いの神の一部・魔の神の一部・大地の神の一部・植物の神の一部・精神の神の一部・創造の神の一部
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示された結果に安堵しつつも床に<鑑定の水晶>を置き、レティーとセリオに鑑定させる。大分前に<鑑定の石板>で調べたものの、それ以降は調べる事なんてしていないからな。もしかしたら変わっているかもしれん。
最初にレティーが調べるようだが、果たして……。
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<レティー>
種族:マルチスライム
位階:メジャー
年齢:4
性別:無し
スキル:熟練解体・魔導技巧・頑強細胞・溶解液強化
特殊:知識吸収・記憶吸収・特性吸収・高速思考
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「色々と変わっていますね? 主が居ない間にも色々としていたからでしょうか? 皆と一緒にダンジョンに潜ったり、夜にセリオとダンジョンに行ったりしていましたので」
『そうそう。色々な物を食べたりとかしてたよねー。蟹とか海老とか美味しかったー』
そう言いつつ、レティーの次にセリオが<鑑定の水晶>に触れて魔力を流す。そういえば魔力を流さねば鑑定結果は出ないのだから、あの時の子供達は自分で魔力を流していたのか? それとも垂れ流しになっている? ま、何でもいいか。
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<セリオ>
種族:ドラゴンライノ
位階:メジャー
年齢:10
性別:男
スキル:剛竜外鱗・覇豪吶喊・魔大衝角・激震咆哮
特殊:伸縮自在・天翔疾駆
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『僕の方も沢山変わってるね? しかもこの【天翔疾駆】って、多分だけど空中を走れるんじゃない?』
そう言ってセリオは小さいまま走り出したが、あっさりと空中へと駆け上がった。流石にティアの【飛翔舞術】のように空中で静止する事は出来無いようだが、それでも空を走れるだけで十分すぎるだろう。
端的に言えば、高さ10メートルの戦車が空中を突進してくるようなものだ。敵からすれば悪夢だが、味方からすれば頼もしい戦車となる。戦争の時にも突進していたし、セリオはその戦い方でいいだろう。
【魔大衝角】なる魔力で角を作る事も出来る様になったみたいだしな。それも【剛竜外鱗】の先に生み出せるらしく、完全に突撃用の衝角そのものになっている。




