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1027・ダンジョン前と殺戮者




 Side:ファーダ



 ダンジョンまでやってきたのはいいが、何故か前が詰まっていて先へと進めん。面倒な何かが起こっているみたいだが、俺達には関係無いので待つしかないな。それはともかくとして、何が起きているかは透明な触手を伸ばして確認するか。


 俺は頭の上から透明な触手を伸ばし、先の方へと進ませていく。するとダンジョンの入り口とおぼしき魔法陣の前で、誰かが倒れているのが分かった。周りの者はそいつを治療中のようで、その所為でダンジョンに入りたい連中は迂回しているようだ。


 だから詰まってなかなか前に進めないのだが、どうやら倒れているのはそれなりの身分の者らしいな? 装備が豪勢なうえ周りに従者のような者を従えている。その従者どもも相当に疲れているのか、座り込んで立ち上がれんらしい。


 その時ビックリするほど大きな声が聞こえてきた。何やら<殺戮者>が出たとか何とか言っているが、いったいどういう事だ? あの倒れている竜人族と関わりがあるのか? イマイチ情報が無いので分からん。困ったな……。



 「のう、<殺戮者>とは何だ? 何故周りの者はそんなに驚いているのか教えてくれんか?」


 「なんだお前、<殺戮者>の事も知らねえのか? <殺戮者>っつーのはダンジョンの中を徘徊してるバケモノの事だ。オレも遭った事はねーが、その時々で見た目が違うらしい。銀色のスケルトンの見た目だったり、真っ黒な人間みたいな姿だったり、あるいはデカイ蝙蝠人間みたいな姿だったりするって聞くヤツのこった」


 「ほうほう。それで?」


 「そいつはとにかくメチャクチャ強いそうでよ。勝てたのは王様率いるチームしかなかったそうだ。それぐらい強いヤツなんで、<殺戮者>に遭ったらとにかく逃げろと言われてるな。ちなみに<殺戮者>は何処にでも出てくるが、そこまで足は速くねえらしい。だから逃げる事は難しくないそうだ」


 「前からそんな<殺戮者>の事が聞こえてきたという事は、誰か<殺戮者>に手を出したという事か?」


 「分からねえな。もしかしたら運悪く曲がり角で遭遇しちまったのかもしれねえ。出会い頭はどうにもならねえからなぁ……不運だと諦めるしかねえさ。ちなみに王様が倒した<殺戮者>は銀色のスケルトンの姿だったらしい。それを倒した結果、<鑑定の水晶>っつーのが手に入ったそうだぞ?」


 「ほう! この竜人国にしかないという、あの<鑑定の水晶>か。となると他の国の奴等は<殺戮者>を倒した事が無いという事だな」


 「さあ? そこまでは分かんねえよ。倒したって手に入らねえかもしれねえし、絶対に手に入るのかもしれねえだろ。オレ達のようなのだと絶対に勝てねえから逃げるしかないしな。ボスみたいにドロップアイテムっつー出方をするらしいが、アレって運が悪いと碌なの出ねえしさ」


 「成る程、そうなのか」



 ボスはドロップアイテムねえ……。思わずゲームの世界かと言いたくなるが、おそらく因果が逆なのだろう。ボスがアイテムを落とすからドロップアイテムと呼ばれるのではなく、ボスを倒してアイテムが落ちた時に召喚者がドロップアイテムだと言い出した。こっちの方が正しいだろう。


 この星の者からすれば、戦利品が落ちたという程度の筈だ。それをわざわざドロップとかドロップアイテムと言うんだ、確実に召喚者が関わっていると見て間違い無い。ただしそういう現象に対する呼び方だけだろうがな。ダンジョンそのものには関わっていないだろう。


 前に進めるようになってきたので進みつつ、豪勢な鎧などを外された者達を見る。相変わらずぐったりしたままで、目を開ける事は無いな。毒か何かを受けたのか? 呼吸が浅く速いリズムで息をしている。


 そうやって透明な触手で観察していると、突然大きな声で周囲の者が騒ぎ始めた。



 「誰か<5号毒消し>を持ってないか!? 持っていたら譲ってくれ、頼む!! 誰か<5号毒消し>を持っているヤツは居ないか!!」



 <5号毒消し>ねえ……。毒の強さによって毒消しが違うのか、それとも種類によって違うのか。俺達には毒なんぞ効かないから、気にした事も無いしな。あまり気にしなさ過ぎると怪しまれるか? だが【浄化魔法】があるし、そこまで気にしなくていいだろう。



 「<5号毒消し>かよ。そんなもん、お貴族様ぐらいしか持ってねえっての。庶民のオレ達がんなもん持ってたら、訳の分からんヤツに殺されて奪われるわ」


 「そうなのか?」


 「おう、そうだぞ。<5号毒消し>っていやぁ、大半の毒が治せる毒消しだ。20階のボスであるデッケー蛇が稀にドロップする毒消しでな。滅多に出回らねえ代物だよ」


 「ほう、そんな物もドロップするのか。成る程、成る程」



 そんな物を持っている奴等なんぞ居ないだろう。そう思いながらも進んでいると、どんどんと魔法陣の上に乗って進んで行く探索者。俺達の番が近付いてきたが、面倒だし邪魔なので治してやるかと思う。死にかけてるしな。



 「誰か! 誰か<5号毒消し>を持ってないか!! 頼む、持ってたら譲ってくれ!!」


 「ちょっといいか? お前らがここを占拠していて邪魔だから、治してやる代わりにここを退け。いいな?」


 「は? ………キサマのような人間種が何だ急に!? 我らを邪魔だと!? 死ぬ覚悟が出来ていると「鬱陶しい」見做すぞ」


 「黙れ、口を開くな。俺の言う事だけを聞いていろ」



 俺は弱い殺気を周りに撒き散らしつつ、ぐったりしている二人の竜人族に対して【聖清】を使用する。唐突に魔法陣が現れて驚いたのか周りからどよめきが起きたが、俺はさっさと二人の体内の毒を消し去った。



 「【浄化魔法】の【聖清】で体内の毒を消し去ってやった。もう大丈夫だから、そいつらを連れて魔法陣から離れろ。通行の邪魔だ」



 それだけを言って、俺達はさっさとダンジョンへの魔法陣に乗る。まったく、いつまで魔法陣の真ん前を占拠するつもりだったのやら。まずは治療者を安全な場所まで連れて行くのが先だろ。ここではそんな事も知られてないのか?。


 魔法陣に乗って転移した俺達は、早速とばかりに鉄錆びの臭いに歓迎された。間違いなく近くで誰かが殺されているな? それを理解した俺達は素早く急行する。


 ダンジョンの中は入り組んだ洞窟のような場所で、よくあるダンジョンゲームみたいな地形だ。今までのダンジョンと違い、最初は簡単な地形という訳でもないらしい。ある程度の実力がないと駄目だというのも分かるな。


 そんな中を走って進んでいると、緑色の蛍光色の人型に追いかけられている竜人が居た。<殺戮者>っていうのは足が遅いんじゃなかったのか? こいつ思っているよりも速いぞ。


 俺はその緑色の蛍光色のヤツに短槍を突き刺し、前で逃げている奴等に対して叫ぶ。



 「俺達が相手をしているから今の内にできるだけ逃げろ!!」


 「誰か知らないけど、すまねえ!! 悪いが逃げさせてもらうぜ!!」



 竜人五人のチームは息を切らしながらも逃走して行く。俺達は一旦離れ、武器を構えて敵と相対する。俺は短槍とカイトシールドを持ち、ノノは戟だ。そもそも俺達もアイテムバッグとアイテムポーチを持つ為、武器はすぐに取り出せる。


 この緑色の蛍光色というよく分からんのが<殺戮者>なのかは知らんが、俺達の敵ではあるまい。とりあえずで戦ってみるか。この星での初めての戦闘が、まさかこんな意味不明な奴だとは思わなかったがな。


 それでもこれの強さを計る事で、大凡おおよその魔物の強さも分かるだろう。<アーククラス>である、この国の王のチームだけが勝ったらしいからな。


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