1024・ファーダと新しいノノ
Side:ミク
昨夜の間にファーダとノノをガイアに送り、買い物をさせてきた。ノノはどうしようか迷ったのだが、せっかくなので少年の姿に変えさせる。本体空間で作ったドラゴン皮のジャケットを着せたら、ドラゴン素材のズボンにブーツを履かせて買い物に行かせた。インナーは合う物が無かったから仕方ない。
身長は147センチと小柄なので少年と言っても良い大きさだ。肌は黄色人種と同じで目と髪は茶色。召喚者と同じ可能性を持たせた。どうも召喚者というのは日本人と限っていないみたいなのだ。というより、ガイアからだけじゃないっぽい。
別の銀河に同じような人間種が住む星があるのかもしれないが、私は知らないし神どもからも聞いていないので、その辺りは考えるだけ無駄だろう。私があの愚かな創造神が居る所に転移させられた時、消えていく奴等を多少見たが、明らかにエルフやドワーフの見た目の者も居た。
もちろん黒髪黒目も居たのでガイアからの召喚者も居るのは事実だろう。流石に様々な星からとなると、神どもが銀河に連なる神を消し飛ばすのも分からなくは無いね。いちいち面倒な事をしやがってって感じかな。
考え事をしているとフィルが起きたので、近寄っておむつの確認をする。予想通りに起きた原因はおむつだったので、【清潔】を使いながら脱がせて新しいのを履かせる。その後にズボンも履かせたら、泣く事も無く元気にジタバタし始めた。
流石にベルに当たるかもしれないので抱き上げ、私と一緒に安楽椅子に乗せる。揺れが心地良いのだろうか、更に御機嫌になってジタバタするフィル。実はフィルは大きな声を出しているのだが、皆には一切届いていない。
それは私が音の広がりを途中で喰って潰しているからだ。なので私は聞こえてるし、フィル本人も聞こえているが、他の人達には全く聞こえていない。完全に音を消している。
「あ! う! あーあ! えーう! あー!」
「朝から元気だねえ。ま、こうやって体を鍛えたり声を出す練習をするんだから、大事な事ではあるんだけどね。あんまり五月蝿いと皆が起きてしまうから、私以上には音を広げないよ」
「あう! あーあ! う、う! えぶぅ!!」
頑張ってるみたいだから、このまま遊ばせておこう。上達していると良いんだけど、一朝一夕には上手くなったりしないか。普通の人間の子供でも成長はバラバラで、早い子供も居れば遅い子供も居るらしいからね。
御機嫌に頑張るフィルを見つつ、皆が起きてくるのをゆっくり待つ。もう朝だから、そろそろ起きるだろう。
…
……
………
皆が起きたので部屋を片付け、最後に両方の部屋に【浄滅】を使って綺麗にした後、昨日と同じ食堂に出かける。昨日食べたのとは違う料理を注文して食べたら、今日からはそれぞれに動き出す。
その前に持っているお金をシャルとマハルと三等分して渡しておく。お金が必要になったらそれぞれのリーダーに頼むように言い、私達はまず王都を調べる。その際に人気の無い路地へと行くと、ノノを人型に変えて着替えさせた。
それを見たベルが驚くが、ノノは猫だけど人間の姿に変われる。人の言葉を前に話していたという事を説明すると納得していた。
「誰にも話しちゃ駄目よ。ノノが狙われるかもしれないからね」
「うん!」
子供を騙しているものの、正しく説明しても理解出来ないのだからどうしようもない。なら理解できる部分だけ教えるしかないんだよね。嘘を吐くのは良い事じゃないけど、ノノの正体がバレる方が厄介な事になる。
ファーダにもお金を預けておき、私達はまず王都を散策しつつ本体が地図を作成していく。ファーダとノノにレティーとセリオはダンジョンに行く為の探索者登録だ。向こうにも頑張ってもらおう。ファーダ達が私達の収入源だしね。
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Side:ファーダ
何故か俺達はダンジョン班という形になったが、強制的な善人化をしたりしないので、確かに俺達は暇を持て余している。なのでダンジョンに行く事自体は構わないのだが、まさかノノに新しい姿を与えるとは思わなかったな。
そんな事を思いつつ、昨日聞いていた探索者ギルドへと足を運ぶ。ここに登録しないとダンジョンには入れないのだから仕方ない。
探索者ギルドの建物に入ると、アルデムの狩人ギルドなどと何ら変わりない光景がそこにはあった。お前らは何故ギルドに屯するんだと思う連中を無視し、俺達は真っ直ぐ受付へと行く。
「すまないが探索者登録を頼みたい」
「はい、探索者登録ですね。探索者に登録する為には一定以上の実力を示していただかねばなりませんが、構いませんか?」
「試験のようなものか? 構わないが、いったい何をすればいい?」
「はい、それ「おっしゃーっ!!」は……。ある程度の実力のある方と戦っていただく必要があります。その試験結果にて合否を判断させていただきますので、まずは表へどうぞ」
「おら、来いよ新人!! てめえに探索者の厳しさを教えてやる!!」
「あいつに勝てばいいのか?」
「そうですね。あの方はブロンズランクですから、かなり優秀な人物です。あの方に勝てれば十二分な実力ですよ」
受付嬢はニッコリ笑っている風だが、目が笑っていないな。小型ドラゴンだから分かり難いが、精神は完全にこちらを見下している。前の星で精神を司る神の権能を得ている俺達からすれば、種が違っても簡単に分かるんだよ。
面倒なのでいちいち相手にせず外に出ると、俺は指定された場所に行く前にアイテムバッグとレティーをノノに預ける。俺の頭の上にはレティーが乗っていたが、いつもの定位置であるミクのアイテムバッグが無いからな。仕方ない。ちなみにセリオはノノが抱いている。
俺は指定された場所に立ち、合図があるのを待つ。戦えば良いのであれば、俺に負けは一切無い。そもそも俺達のような者が、いったいどうやったら負けるのかの方が不思議だ。
どうやら合図は受付嬢が出すみたいだな。俺と先程から五月蝿い奴の間に立った。
「逃げなかったのは褒めてやるが、今なら逃げ出しても許してやるぜ?」
「………」
「おいおい、もしかしてブルっちまって声も出せねえのか! もっと頑張れよ!!」
「ギャハハハハハハハハハハ!!!」
「一つ聞きたいんだが、この戦いはどれだけ愚劣かを示せば勝ちなのか? 戦うのではなく、相手を貶せば勝利なのか?」
「なに!?」
「お前達は人間種が気に入らないのかもしれんが、お前達の今の姿は竜人族の恥晒しではないのか? それともそのチンピラの姿が竜人族の本当の姿か?」
「んだと、テメェ!!!」
「だから言っている。それが竜人族の本当の姿なのか?」
「おい、受付嬢! さっさと始めろ! このヤロウ、ブッ殺してやる!!」
「ここまで怒らせてはもう止まりませんよ。分かっているのですか?」
「俺は他者の精神を正確に計る事が出来る。貴様等が最初からこちらを見下している事などずっと分かっていた。だからこそ聞いているのだ、その醜さが竜人族の本当の姿かと」
「さっさと始めろ!!」
「試験、始め!!!」
試験が始まった途端、目の前の奴は一気に接近してきて振りかぶり、右の握り拳で殴りつけてきた。が、そんな遅い拳に当たる俺ではなく、かわしてカウンターを放つ。人間でいうところの鳩尾を突き上げた一撃は、たった一度で相手を沈めた。
俺の拳を喰らった相手はそれだけで地面に膝を突き、胃の中の物を盛大にブチ撒ける。
「ぐぅおえええええっ!!?! げぼっ、おごぅええええええっ!?!??!?」
「なんだ、随分と脆いな。たかだか一撃でこれか。つまらん」
「仕方あるまい。そいつのクラスが何か知らんが、我らに勝てるようなクラスではないのだ。我らの正しい立ち位置からすればイジメと変わらんよ。100度やっても我らに負けは無い」
「まあ、実際にはそんな程度の差ではないのだがな」
どうやら一撃で勝った事により、周りが鎮まり返ってしまったな。それにしても、いつまで吐いている気だ? このザコは。




