1022・若返りの薬と貨幣の価値
Side:ミク
私達は一旦王城へと入り、適当な一室へと案内してもらった。別に仰々しい部屋など必要としていないのは、単に王母ことデルクレシアに<若返りの薬>を渡すだけだからだ。後はこの国のお金を多少もらえればそれでいい。宿へ行って部屋をとりたいからね。
一室に集まった私達は、さっさと<若返りの薬>を渡してここで飲ませる。理由は誰かに見られたり奪われたりしない為だ。どのみち若返り効果は寝ている最中に起こる為、今すぐに変化する訳じゃない。
「そうなのかい? みるみる若返るもんだと思ってたけど、そうじゃないんだね。とはいえ効いてくれれば何でも良いんだけど」
「効くのは間違い無いから安心しな。そもそもそれが手に入る星じゃ、安くても15億はするんだよ。こっちの物価がよく分からないけど、下位貴族ですら破産するレベルの物だからね? そこんところは理解しな」
「下位貴族が破産する、か。確かに若返るなんていうあり得ない代物だ、それぐらいの価値はあって当然だね。……………ぅぐ、不味い」
「それねえ、飲んだ誰もがそれを言ってたよ。あたし達は若返る必要も無いから飲まないけど、若返りたいならそれぐらいは我慢しろって事なんだろうね。不味い程度で若返る事が出来るんだしさ」
「まあ、そうか。それはともかくバカ息子がまだ屋敷を用意出来ていないみたいだから、アンタ達も腰が据わらないだろうしね。アタシのお金を渡しておくよ。それを使えば一ヶ月ぐらいは宿に泊まれるさ」
デルクレシアは部屋の入り口の扉を開け、大きな声でメイドを呼ぶと、入り口の扉を閉めて戻ってきた。どうやら待っていればメイドがやってくるらしい。
その後、多少待ったものの来たメイドに対して自分のお金の一部を持ってくるように言い、それを聞いたメイドは了承した後に部屋を出た。どうやらデルクレシアのお金を持ってくるみたいだけど、王母のお金を勝手に持って来て良いのだろうか?。
「お金はありがたいんだけど、この竜人国の通貨と価値を教えてくれない? そもそもどんな紙幣や貨幣を使ってるか知らないし、その価値もよく分からないからさ。ダンジョンがあるらしいから、そっちでお金を稼ぐ事も考えなきゃいけないんだよ」
「うーん……それだとウチが蔑ろにしているみたいに聞こえるから止めてほしいんだけど、とはいえ何も手元に無い状態が良いとは言えないし……」
「わたし達は自分達で稼いで生きてきているしねえ、それをすんなっていうのは流石に聞けないわよ。もちろん兵士を鍛えたりって事はちゃんとするけど、お金だっていつ支払われるかは分からないしね」
「そうですね。いつ貰えるか分からない金銭よりも、当座のお金の方が大事です。私達はいきなりこの星に来ていますし、そこで使えるお金なんて全くありませんので」
「とはいえ、ミク。ダンジョンがあるのは良いんだけど、誰を行かせる気? お金が無いのは早急になんとかしなきゃいけないけど、それをする為の人員が居ないじゃない」
「ダンジョンにはファーダとノノを行かせるから気にしなくていいよ。ノノは人型で行かせれば済むし、2人なら特に問題ないからね。最悪はファーダだけになるかもしれないけど、それでも戦力的には十分でしょ」
「まあ、ファーダとノノなら問題ないわね。強さとしての問題も無ければ、暇をしてる2人だし余裕もある。特に問題は無いんじゃない? ベルにはイリュがついてるし、フィルにはミクがつくんでしょ? なら2人の護衛も問題は無いだろうし」
「そうね。そもそも私達は竜人国を見回って地形データを手に入れて来なきゃいけないし、その為に色々な場所を回るつもりよ。ただし、それもお金がないと無理だから、当分の間はお金儲けをするしかないわね」
「戦争が起きそうな場所を見回って確認しておかないと、何処でどういう風な戦いになるかなんて分かりませんからね。場所を確認しておくのは重要です」
話をしているとノックされ、先程のメイドとは違う人物が入ってきた。というか、入ってきたのは宰相だ。何でデルクレシアのお金を取りに行って、こいつがやってくるんだろうね?。
「申し訳ありません。皆様が逗留する際の屋敷を探す事でいっぱいで、生活する為のお金などを失念しておりました。真に申し訳ございません。現在急いで探させておりますが、早々簡単に見つかる訳もございませんので、金貨で20枚分をお持ちしました。お受け取り下さい」
「それはありがたいんだけど、金貨の価値ってどれぐらい? 他にも銀貨とか銅貨とかあるんでしょ?」
「それはそうなんだけど、そもそも他の星ではどんなのが使われてるんだい? 似たようなものだと思うんだけどね?」
「前に居た星は紙幣、つまり紙のお金だった。国がその価値を補償しているから、紙のお金でも有効なんだよ。その前の国は金貨、銀貨、銅貨だったね。だいたいは国や文明が成熟すれば紙幣なんかになるんじゃないかな? 金属を使うのが勿体ないし」
「そうね。金は装飾品に使ったり、塊で持っていたりという感じになるわ。金そのものに価値があるから、金を買って財産として確保しておくとかよ。不意の何かでお金が必要になったら売る感じかしら」
「成る程ねえ……。宿に一泊するのに必要なのが銀貨5枚だったか、確かそれぐらいだよ」
「妙に高いね? それもしかして王族が泊まる部屋とかじゃないのかい? 庶民が泊まる宿の部屋はそんなにしないだろう。銀貨の価値が低いのかもしれないけど、それでも銀貨5枚は高いよ」
「そうなのかい?」
「あの……。庶民が泊まる宿の部屋は、4人部屋で一泊大銅貨4枚から6枚ぐらいです。流石に銀貨を支払う事はありません。王族の方々がお泊りになる部屋は安全を確保する為にも広く、護衛のしやすい場所になっておりますので、それでお値段が高くなっております」
「へー……そうだったんだね。よく知ってるじゃないか」
「はい。私の実家は複数の宿を経営しておりますので、その辺りの事は存じております」
「成る程ね。銅貨と銀貨と金貨の交換枚数は? それで大凡の価値は分かるからさ」
「銅貨は小中大とあり、小は100枚、中は25枚、大は10枚で小銀貨と交換です。銀貨も同じで、小が100枚、中が25枚、大が10枚で小金貨と交換となります。金貨も同じですが、その上に魔銀貨と魔宝貨があります。これは小しかありません」
「魔銀はなんとなく分かるけど、魔宝貨ってナニ?」
「魔宝貨というのは、魔宝石を貨幣にした物なのですが、ここでいう魔宝石はレインボーガルデリントスとなります。魔力が蓄積した宝石の事で、虹色の輝きを持つのが特徴の特殊な魔宝石でして、主に国家間の取り引きなどでしか使われません」
「魔宝石と言いますか、レインボーガルデリントスは莫大な魔力を溜めこんでいる宝石なのです。それを媒介に使われる魔法は、別名<戦争魔法>と言われておりますな」
「つまり国家間取り引きに使う貨幣の元を、戦争に使ってるの? ……随分と勿体ない事をするわねえ」
「アレッサ、話が横道に逸れてるわ。大事なところは聞けたんだから、もういいでしょ。とにかく金貨20枚分のお金は借りておくわ、後できっちり返すから心配は要らないわよ。ファーダならダンジョンの奥深くまで行くでしょうしね」
「「「………」」」
急に黙ったけど、何かあったかな?。




