1018・練兵場で合流
Side:マハル
あっと言う間にボコボコにされ、地面に沈んでしまったガルドヴァさん。どうすればいいのか分からず困っていると、竜人の方を連れたシャルさん達がこちらに来るのが見えました。これぞ天の助け……と言えるのでしょうか?。
それはともかくボクを見つけたシャルさん達はこちらまで近寄ってきましたが、その途中で倒れているガルドヴァさんを発見したようです。特にアレッサさんが「ニンマリ」しているのが、何と言うか怖いような。
シャルさんに指摘されて気付いた竜人の人が、何やら呆れた感じの顔になったような気がします。竜人の方って顔が小型ドラゴンなんで、微妙に表情が分かり難いんですよね。大きな変化なら分かるんですけど、小さいのは難しいんですよ。
「模擬戦か何かをしていたんだろうけど、ガルドヴァがあっさり負けたっぽいねえ。相手の実力を判断しようとして無様を晒したって事かい。相手の力量も計れない云々とか普段は言ってる癖に、自分がこれとは……」
「仕方ないんじゃないかい? マハルが相手なら諦めた方が良い気もするよ。ミクほどじゃないとしても、マハルはどっちかっていうと魔力や魔法に適正のある種族だ。それも位階としては<グランドクラス>になる」
「あらら。あんな細っこい少年がアタシと同じ<グランドクラス>かい? そりゃ理不尽だ。流石にガルドヴァもそんな事は想像できなかったろうさ。ガルドヴァ自身は宮廷魔法士長だけあって、<メジャークラス>なんだけどねえ」
「それって確か近衛と同じ位階だったっけね。という事は宮廷魔法士長は近衛騎士クラスか」
「違う違う。近衛騎士の中でも優秀なヤツが<メジャークラス>なんだ。近衛の中には<ノーマルクラス>のまま近衛になったヤツも居るよ。その後に伸びるヤツも居れば、伸びないヤツも居るけどね」
「まあ、どんなクラスであろうと優秀なヤツは居るんだろうけど、だからといって更に先のクラスに進めるとは限っていないって事ね。クラスを上げる方法が分かってないんじゃ仕方ないんでしょうけど」
「一応分かってないって事になってるけど、何となくは分かってるよ。高いクラスのヤツはほぼ全員がダンジョンに潜っているヤツだ。ただしダンジョンで魔物を倒せばいいのか、それとも経験が重要なのか。そういった細かい事は分かってないね」
「命の懸かった戦いを経験しなきゃいけないとか? それともそれだけ強いヤツと戦わないと位階は上がらないとか。もしくは自分の命を危険に晒さないと駄目とかかもしれないわね。安全に戦って位階が上がるとは思えないし」
「それはありそうですね。下のクラスでも優秀だから大事なところを他人任せにして、結果として位階が上がらない。もしくはそういった心持が位階の上がらない原因なのかもしれませんね。どこかで手を抜いているのが駄目なのかも」
「分かりやすいけど、もしそうだとしたら駄目だったヤツは心の何処かが緩んでたんでしょうね。その所為でいつまで経っても上の位階に上がれなかった。可能性としては十分にあり得そうかしら」
「あるだろうね。そんな阿呆が上に上がれるとは思えないし、力を持とうとしないヤツに力が与えられる事は無いと思うよ。良い悪いは別にしてね」
「う、うう……」
どうやらガルドヴァさんが気が付いたようですね。あそこまでボコボコにしたのはボクなんですが、幾らなんでも脆すぎる気がします。魔法から身を守る壁の魔法なんでしょうけど、全く耐える事が出来ていませんでしたし。
「起きたかい。アンタは異界から来たあの若い少年にボッコボコにされたみたいだよ。それを覚えてるかは知らないけどね」
「………模擬戦を始めたのは覚えております。その後に【マジックシールド】を出したのですが………ああ! 二発ほどで破られて、後は為す術も無く負けました」
「アンタの【マジックシールド】は国一番なんだけどねえ。それで二発ほどしか防げないとなると、これはちょっと厳しいよ? 幾らなんでも話にならないし、これから色々と考えるしかないね」
「面目次第もございません」
「そもそもなんですが、この星で使われている魔法ってどれなんでしょうか? そこからしてボク達には分かっていないので、アドバイスも何も出来ないのですが……」
「魔法は魔法でしょう。どれとはいったい……?」
「ああ、そうか。正しい魔法の知識が無いから、根本的に分からないんだ。困ったな。ボクも【根源魔法】は分かるけど、個別の【惑星魔法】なんて知らないし」
「「【根源魔法】?」」
ガルドヴァさんと横に居るドラゴンさんが同時に声を上げたので、ボクは説明を一つずつしていく。驚いたのはガルドヴァさんの横に居るこの人、この国の大将軍で王母なんだって。何で王様の母親が大将軍をやってるんだろう?。
それはともかく、【惑星魔法】【銀河魔法】【宇宙魔法】【根源魔法】の四種が存在する事を説明し、この星で使われている魔法がどれかって事を聞いてみた。その結果は予想通り「分からない」だった。
「分からないものは分からないねえ。そもそもだけど、そんな区分がある事すら知らなかったよ。魔法って言っても様々あるんだねえ」
「上位の神が定めた魔法ほど強度が高く、同じ魔法同士でぶつかっても強度が高い方が勝つんです。ガルドヴァさんの使った【マジックシールド】という魔法が弱かったという事は……」
「君が使った【根源魔法】ではないという事か。ううむ……強度の違いというものに、そこまでの差があるとはな。これでは上位の魔法を知らなければ勝つ事など出来んぞ」
「そもそもですけど、ボクとて【根源魔法】の全てを知っている訳ではありません。一番詳しいのはミクさんかイリュさんでしょうけど……」
「ミクは簡単なものなら教えてくれるんじゃないかい? ただし【空間魔法】は教えてくれないだろうね。あれは一瞬で遠い所まで移動できたりする魔法だし、色々と悪用できちまう。流石に後始末も考えたら教えないだろうね」
「【空間魔法】ですか……。人間種にも魔族にも使い手が居ると聞きますな。ただし先程の話を聞いていると、果たして同じものなのかが分かりません。少なくとも一瞬で遠い所へ移動する魔法はあります。莫大な魔力を使うそうですがな」
「あんたは使えないのかい? 宮廷魔法士長なんだろ?」
「残念ながら、かつて古い時代に使えた召喚者が居たらしく、その魔法の記録は門外不出となっておりますな。暗殺者を送り込んだりしておったと記録にあります」
「碌な事をしない連中だね。とはいえ考え付くような悪事はやるかい。それはともかく、そっちはまず既存の魔法とあたし達が使う【根源魔法】とのすり合わせだろう。そこから始めるしかないね」
「そうですね。そこから始めないといけませんけど、イリュさんが居てくれると楽なんですが……」
「それは無理でしょ。今のイリュはベルに夢中だからね。まあ、子供が可愛いのは分かるけど、ベルは子供だから一ヶ所にジッとしているのは難しいわよ。外に出るのを求めるだろうしね」
「それは確実だろうし、どうしようもないわね。ミクとイリュから聞き出しつつ、少しずつ始めたら? 向こうだって竜人国を回って地形データの入手をしなくちゃなんないし」
「それぞれやる事があるから、どうにもならないんじゃない? マハルもちょうどいい機会だと思って進めたらいいよ。たまには他者と関わった方がいいしさ」
「ああ。マハルは【魂の声】があるからね。他人の本音が分かってしまうから、あまり関わろうとしないのか」
「聞こえても碌なものじゃありませんからね。大抵の場合において、本音というのは罵詈雑言の嵐ですし」
「でしょうね」
本当に酷いんだけど、伝わらないだろうなぁ……。




