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1016・大将軍との話し合い




 Side:アレッサ



 「それで、若返りの薬っていうのは何処にあるんだい!」



 ロフェルの肩を前後に揺らしながら必死に聞いている大将軍こと王母。そこまで必死になる気持ちは分からなくもないけど、必死すぎてロフェルが引いてるって理解できないみたいね。それも含めて分からないでもないんだけど、そろそろ正気に戻しますか。



 「流石に必死すぎてロフェルも話せないし、あまりにあまりな姿を見せてるって自覚ある? 一応だなんて息子の事を言ってたけど、あんたも一応は王母でしょうが。それを思い出しなさい」


 「は? ………ゴホンッ! それで先程の話だけれど、いったいどういう事なのかしら。まさか嘘とか適当に言った訳ではないわよね? もし嘘だったら容赦しませんよ?」


 「ニッコリ笑ってるのはいいけど、それが王母としての取りつくろった姿かい? 最初からそんなんじゃなかったんだから、さっきの大将軍の姿でいいのにねえ。まあ、アレッサが王母だと言ったからだろうけど、随分と混乱してるみたいじゃないか」


 「………はぁ。寿命としても残りは今までと違って長くない。それに、最近は明らかに体の動きも悪くなってきた。寿命が600年と言ったところで、アタシは300も後半になってやっと<グランドクラス>に辿り着いた程度なのさ」


 「そういえばクラスを上げる方法はよく分かってないんだっけ? たまたま上手くいって急に寿命が伸びるっていうのも厳しいわよねえ。死に掛けだったのに急に寿命が伸びるとか、冗談じゃなくありそうじゃない?」


 「申し訳ないけど、それは無い。死に掛けの者が急に寿命が伸びてーっていうのは、昔から言われる冗談だよ。年老いてから位階が上がった者も居るけど、死に掛けからっていうのは居ない」


 「命が消え掛かってる者は、位階を上げるパワーも無いのかもしれないね。年老いてから位階が上がった者って、もしかして年老いたままの姿で寿命が伸びるの?」


 「その通りだよ。体の節々の痛みとかは消えるらしいけど、年老いた見た目のまま過ごしていく事になる。もちろん体は動くようになるよ、でも見た目は年老いたままさ。ある意味で地獄だね」


 「それは確かにキッツいねえ。寿命が伸びてるのに年老いた見た目のままか。それでも体がしっかり動くなら、本当の年寄りよりはマシだろうけど……。位階が上がったのにコレか、とは思うんだろうさ」


 「そうなんだよ。アタシも位階が上がったにも関わらず年寄りの姿でね。仕方がないとはいえ、ガックリ来ていたからさ。だから若返りの薬と聞いて、ちょっと暴走してしまったんだよ」


 「私には分からないけど、色々とあるのねえ。若返りの薬ならミクが持ってるけど、本当に使っていいのかな? でも、年齢を若返らせるくらいじゃ問題にならないと思うんだけどね。他の星でも使われてるんだし」


 「神様は寿命で死ぬなら何でもいいと言ってるらしいけどね? 不死は困るけど、何処かの時点で死ぬなら別に構わないそうよ。ミクがそんな事を言っていたわ。若返りの薬も若返るだけで、別に不死じゃないからね」


 「病気や怪我で死ぬとなれば、若返るだけで不死には程遠いさ。それなら確かに神様も文句は言わないだろ。それに神様の力を分け与えられてる訳でも無し。だったら若返っても問題ないと思うよ」


 「問題はミクが居ないって事よね。ミクはイリュやティアと一緒に外回りだから、今は王都内にも居ない……かな? どうだろう? 今日は昼を過ぎた時間に飛ばされて来てるし、まだ王都内に居るかも」


 「調査って言ったところで明日からだろうから、今日は王都内に居るんじゃない? 住む所とかも決まってないし、そういうのも含めて色々してると思うけど」


 「………あのバカ息子は客人の住む所すら用意してないのかい? アタシは教育を間違えていない筈なんだけどね」


 「急に来たんだから仕方ないんじゃない? それに王は指示を出してたわよ。まだ決まってないだけでね。いきなり来て住む所を用意しろって言った訳じゃないし、私達からしたらお金を稼げるなら普通に宿屋暮らしするだけだし」


 「いつも通りだね。私達は宿屋暮らしが普通だし、それで問題ないけど……。とはいえ国の面子はそれじゃ駄目だから、城下に屋敷をって指示を出してた筈」


 「城下かい。まあ、そうするしかないんだろうけど、客人でしかも色々としてもらうんだろ? 息子からの文には、アンタ達の大半が<アーククラス>だと書かれていた。それが事実なら、流石に国家として待遇をちゃんとしなきゃいけないんだよ」


 「何かこの星って、クラスだけで待遇が変わったりするいびつさがあるわよねえ。そこまで変える必要はないと思うけど? それとも何か理由がある?」


 「理由っていうか、上のクラスの者ってのは一騎当千を超える実力者ばかりさ。そういうヤツの機嫌を損ねても、国として損しかないんだよ。戦争に上のクラスの者が簡単に出て来ないのも同じで、上のクラスの者を暴れさせたら、それ以上の者が報復に来る。それがこの世界の戦争の基本だよ」


 「つまり、この星では強い力の者が後ろに控えているから、何処の国もそこまでメチャクチャはしない? ……その割には竜人国の者は奴隷にしたりとかするんでしょ?」


 「そうさ! あのクズどもは我が国に対してだけそういう事をする。しかし我が国としては一国だし、それ故に報復をし辛いんだ。たとえ息子が<アーククラス>でも、人間種の国にも魔族の国にも<アーククラス>は居る。数で来られると息子でさえ負けてしまうんだ」


 「成る程ねえ。最高位の位階でも、それと同じ連中が多く居る方が有利か。当たり前と言えば当たり前ねえ。その<アーククラス>でも上下はあると思うんだけど、そこんところはどうなの?」


 「<アーククラス>の強さは何処の国も秘匿してる。もちろん話は漏れてくるけど、こっちとしては漏れてくる話が事実かどうかすら分からないからね。我が国の者を調査に向かわせても、見た目でバレるから手に入れた情報が本当かも分からないんだ」


 「あらら。とはいえアレッサが言うように、同じ<アーククラス>でも上下はありそうだけどね。例えばイリュなんかは、おそらくこの国の王を瞬殺できるだろ。アレは空間を自在に操るし、空間そのものを断裂させられれば、あらゆる防御が意味を為さない」


 「カルティクも同じよ。闇と影を自在に操るから、やりたい放題に出来る。わたしも一応<神殺し>は可能だけど、今のところはまだ無理ね。勝てるイメージも湧かないし」


 「竜王的な<アーククラス>と、<神殺し>が出来る<アーククラス>。確かに天と地ほど差があるね」


 「………。いや、アンタ達ってメチャクチャでしょう。<神殺し>って時点でおかしい。それ、本当かい?」


 「残念ながら事実なのよ。前に居た星で、神様直々に<神を殺せる>って言われたからね。っていうか、私、イリュ、カルティクの種族は神様にすら驚かれたし」


 「神様に驚かれる種族っていうのも凄いね。いい加減に疲れてきたけど、とにかく<若返り薬>はどうなる?」


 「こっちに便宜を図ってくれるなら、ミクがくれるんじゃないかい? あたし達も無理難題を言う気はサラサラ無いけど、この国に伝手も無いしねえ」



 シャルが「ニヤリ」としながら話すと、それを見た大将軍も「ニヤリ」という表情を返してきた。そう、私達ってこの国に対して何も無いから、王を脅した後ろ盾しかないのよ。ここで王母の後ろ盾が出来ると大きいし助かる。


 立場的にも文句無しよ。何かをする訳じゃないけど、上の立場の者が後ろ盾なのは悪くないわ。この星じゃ敵対するまでミクは何も出来ないし。


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