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1015・竜人国の大将軍




 Side:シャルティア



 会議の終わったあたし達は、円卓のある会議室を出ると近衛騎士についていく。軍の練兵場や宿舎がある区画へと案内してもらっているんだけど、ミクにボコられた近衛兵だからかビクビクしてるね。あたし達がやった訳じゃないんだけど、仕方ないか。


 他にアレッサとロフェルが居て、マハルとカルティクは別の場所だ。この星でも魔法は当たり前に使われているらしいけど、それが【惑星魔法】か【銀河魔法】か【宇宙魔法】か【根源魔法】かは不明なんだよ。向こうはそこからの確認になるんだから、大変だろう。


 こっちはそういう面倒が無いから楽でいい。どのみち兵士を使っての争いなんて殆ど変わりゃしないからねえ、気楽なもんさ。


 そう思ってると、軍の所に近付くに連れて「ギャア!ギャア!」聞こえてきた。なんだいこの声は?。



 「こ、この声は軍の飼育しているワイバーンの声です。我が国では数は多くないですが、ワイバーンを飼育しておりますので、その声が聞こえてきたのでしょう」


 「ふーん、ワイバーンねえ……。それはあれかい? 翼が大きくて手が小さく、尻尾の先に毒を持ってる亜竜の事?」


 「は、はい! そうです!」


 「へー……。この国ではワイバーンを飼い慣らしているのねえ。アレを飼い慣らすって大変だと思うけど、やれば出来るのかしら? 頭悪そうだし、言う事を聞かないっぽいけど」


 「雛の頃から育てていますので、育ててきた者には従順です。ワイバーンライダーは軍の花形でして、我が国でも20人しか成れぬ精鋭となっています」


 「つまり、そいつらが軍の中でプライドの高い奴等って事か。こっちに喧嘩を売ってきたら、ボコボコにしてやれば済むわね。ワイバーンごと叩き潰してやりましょう。亜竜程度を調子に乗らせない為にも、徹底的にやらないとね」


 「亜竜程度、ですか……」


 「そもそもアルデムのダンジョンではドラゴンが出るし、誰かさんはそのドラゴンを乱獲してたからねえ。ロフェルは戦ったの?」


 「戦ったというか、最初はマハルと二人で戦ったけど然して強くなかったからさ、次は一人で行ってボコボコにしてやったよ。最後は頭が陥没して死んでたから、私にとってドラゴンもそんなものかな? 売ったら凄い金額になったけど、それぐらいしか価値は無いね」


 「ドラゴンが酷い扱いさ。とはいえ、あたし達の武器もドラゴン素材で作られてるし、その程度と言えば終わるんだよねえ」


 「………」



 近衛は聞くのを止めて真っ直ぐ前を見てるね。精神を調べたら極度の緊張状態になってるよ。悪い事をしたとは思うけど、あたし達にとってはドラゴンもその程度でしかないんだよ。かつては違ってたんだけどさ、ミクに関わるとこうなるって事だろう。


 軍の練兵場に来たあたし達は、近衛の案内で軍の総指揮官、つまり大将軍の下へと移動している。どうも竜人国の軍には頂点に大将軍が居て、その下に五人の将軍が居るらしい。それぞれを纏める将軍達だね。


 手っ取り早く一番上の将軍に会わせるみたいだけど、あの王様なにか企んでるんじゃないだろうね? もちろん手っ取り早いのは楽ではあるんだけどさ。


 近衛が豪華な扉の前で立ち止まり、ノックをして中に問うと、すぐに返事があったものの更に声を掛けてから開ける。随分と礼儀を尽くすねえ。普通、近衛は軍を下に見るもんだけど……。



 「失礼いたします! 陛下の命で、異界から来られた方々をお連れ致しました!」


 「御苦労。伝令は来ているから、後はこっちでやっとくよ」


 「ハッ! 失礼いたします!!」



 そう言って近衛は部屋を出て行ったけど、猛烈に緊張していたね? 何でなのかは分からないけど、この目の前の人物に何かあるんだろうさ。


 さてさて、どんな奴なのやら?。



 「申し訳ないけど、そこのソファーに座って待っててくれるかい? もうすぐ書き終わるからさ。後、テーブルの上のを飲み食いするのは好きにしておくれ」



 声を聞いた限りは結構歳がいってる感じかい。その割には覇気はあって矍鑠かくしゃくとしてるみたいだ。ま、ソファーに座っていいって言ってるんだから素直に座るか。何をしてきてもあたし達なら問題無いからね。


 ソファーに座ったあたしは、適当に飲み食いしていいと言われてる物を無視して、炭酸飲料のペットボトルとドラゴンの干し肉を取り出して齧る。最近はコ○ラよりもサ○ダーの方が好きなんだけど、肉には合わないね。失敗だったか。


 アレッサもドラゴンの干し肉を出して食べてるけど、どうやらミクに貰ってたみたいだ。そしてロフェル、あんたなんて物を出すんだ。それは<たけ○この里>じゃないか。ここで戦争は起きないけど、何て危険物を出すんだい、まったく。


 そうやってあたし達が過ごしていると、書き終わったのか大きな声で誰かを呼ぶ大将軍。すると、すぐに兵士っぽいのが入ってきて、書いていた紙を受け取ると出て行く。軍だからか簡潔だねえ。


 一度伸びをした大将軍は、あたし達が座っているソファーまで来てお茶のような物を淹れだした。あたし達が自分で出した物を飲んだり食べたりしている事には何も言う気は無いらしい。



 「さて、一応陛下から指令は来てるんだけど、それをそのまま鵜呑みには出来ない訳だ。こっちは軍人だからね、唯々諾々と従う気は無い。戦争があれば命を懸ける以上は、おかしなのを連れて来られても困るんだよ」


 「そりゃそうだろうね。普通の軍人ならそう思うさ、普通の軍人なら」


 「それだと普通じゃないみたいだけど、やっぱり普通じゃない?」


 「違うねえ。陛下とか言いながら、そこには敬いも何も感じられない。あたしは【精神網羅】のスキルを持っていて、相手の精神状態は自在に把握できる。あんたが王に抱く感情は、大半が「面倒」だ。これっていったいどういう事だろうね?」


 「………あはははははは! これは驚いた。アンタ相手の精神が分かるのかい? いや、凄いね! それじゃ誤魔化せる筈もないか」


 「それだけじゃない。普通は近衛と軍は仲が悪いもんだ。しかしあの近衛兵はあんたに対し敬いを持っていたし、礼儀も十分尽くしていた。流石に近衛があそこまでするのはおかしいんだよ」


 「ああ、アレはねえ。面倒な事をしてくれたと思ったよ。聡いヤツならあそこで勘繰るだろうからさ。ま、それ以上だったんで、どうにもならなかったみたいだけどね」


 「それで、あんたの正しい立ち位置は?」


 「疑ってるみたいだけど、アタシは正しく大将軍だよ。名前はデルクレシア・ギュルスティガ・ウォルグラン・ドラゴニア。一応この国を統べているバカ息子の母親さ」


 「………王母じゃん。なんで王母が大将軍やってんのよ?」


 「それはアタシが<グランドクラス>だからだよ。息子は<アーククラス>になってしまったけど、息子以外じゃアタシが一番位階が上なんだ。寿命は600年ほどあるし、アタシはまだ498歳だからね」


 「王以外の一番強い者を大将軍にしたら、王母になっちゃいましたって感じね? いや、それはそれで凄いけど、何だったらミクに<若返りの薬>でも貰えば良いんじゃない? そしたら20歳まで若返るし」


 「その話、詳しく聞かせて貰えるかい!?」



 ロフェルの言葉を聞いた途端、立ち上がってロフェルに近付いたよ。それも正面から肩を掴んで逃がさない態勢だ。


 まあ、<若返りの薬>に関してはミクが作れるらしいから良いんだけど、それは伝えない方が良いね。絶対に碌な事にならないし、余計な有象無象にくれてやる物でもない。


 ロフェルも圧に若干引いてるけど、ババアになった女が若返れるってんだ。その欲……いや、妄執を舐めちゃいけない。まだ若いロフェルには分からないんだろうけどねえ。


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