1014・会議終了
Side:ミク
「さて、そなたらも分かったであろう。この方々を敵に回すのが如何に愚かかという事が。分かったのであれば、これ以降下らぬ事はするなよ」
「「「「「「「「「ハッ!!」」」」」」」」」
右腕を喰らってやった奴も、今は怯えた表情でこっちを見てるね。愚かにも相手の力量も計ろうとせずに喧嘩を売ってきたんだ、むしろ腕の一本で済んだのは優しいくらいだろう。それはともかくようやく本題か。
「さて、我が国を助けていただくと言っても何をしてもらえば良いのかが分からん。何かこれといった事はあるかな?」
「うーん……シャルはすぐに決まるからアレとして、アレッサとロフェルもそっちで、マハルは魔法系かな?」
「そうね。シャルは元々長きに渡って国家を守り抜いた将軍であり英雄だもの。指揮系統を行う軍人に指導をする感じで、アレッサとロフェルは兵士達に対する指導かしら。どのみちこいつらは実力を示してやれば、すぐに言う事を聞くでしょう」
「マハルは魔法を教えるけど、ついでにカルティクにも頼もうかな? ティアでも良いんだけど、ティアだと周りを誘惑する可能性が高いしね。ただ存在するだけで周囲から注目を浴びるし」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
「まあ、分かったわ。確かにティアだと碌な事にならないっていうか、練習にもならないでしょうからね。ずっとティアを見て鼻の下を伸ばされても困るし」
「種族の垣根を越えて誘惑するっていうのも凄いけどね。流石はサキュバスであり、その最上位だと思うわ。王族とは思えない色気ねえ」
「それを言わないで下さい……」
「王族?」
「そうよ。ティアはアルデムという星にあるゴールダームという国の第三王女なの。ちなみにこの子達は、別の星にあるダスガンド帝国という国の直系皇族の血筋よ。色々あって私達が母親をしているけどね」
「何と……。異なる星とはいえ王族や皇族の血筋の方とは」
「まあ、この星じゃ証明できないから、そこんところはどうでもいいんじゃないかい? それに、その言い方で言うと、イリュなんて妖精族の元女王だしねえ。王族や皇族以上が存在する以上は大した事でも無いだろ」
「私の事はいいのよ。どうせその上の最強の怪物が居るんだし、権威や権力なんて大した意味を持たないわ。もちろん社会としては大きな意味を持つけれど、本質という意味ではあんまり無いのよねえ」
「まあ、国の王だろうが鼻で笑う存在だからねえ。どうにかなる訳が無いし、どうにもならないんだよ。だって誰も勝てないし、人数を掛けても喰われるだけ。弱い者達の最強の武器たる、数を頼んだ攻撃さえ通用しない」
「そもそも数をどれだけ用意しても、ミクにとっては食い物が増えたという程度の意味しか無いのよ。そしてあっさりと喰われる。それも一気に大量に喰われるから、数が意味を為さない。正しくもって最強の怪物と言うしかない存在よ」
「それ以前に、そもそも最高位の神様が「そうあれ」と創った存在だもの。最強で当たり前でしょ。だってそう創られたんだから」
「まあね。とりあえず話を戻すけど、私とイリュとティアは竜人国の見回りだね。この国の国土と地形なんかを見て回って、何処が戦場になりそうか、どうすれば守れるかを見て回ってくるよ。戦争をする前に地形データを集めておくのは当たり前だからさ」
「そっちをミクがしてくれると助かるよ。あたしも自分の目で見た方が良いんだけど、まずはこの国の指揮官連中がどの程度かは把握しておかないといけないからね。それに戦術も分からないし」
「そうだね。そういったところも含めて色々と探っていくしかないか。そういえば新しく神々を纏める事になった女神は、神託の巫女を通じて私に頼むとか言ってたっけね。ま、今のところは何も来てないけどさ」
「そうそうに神様が頼み事をしてきたりはしないでしょ。やっと下らない事をしていた創造神が居なくなったんだし、神様の世界も建て直しに必死なんじゃないの? そもそも何をしていたのかも知らないけど」
「この星の最上位だった創造神は、それぞれの神の力を奪って召喚した連中に与えてたみたいだね。その所為で召喚された連中は妙な力を持ってるみたい。どうせ寿命で死ぬし、召喚者が死んだら力は戻ってくるから無理に殺す必要は無いってさ」
「成る程ね、なら焦って召喚者を探す必要はない訳だ。それに人間種と魔族で争うだろうから、その時にブチ殺せば済むわね。わたし達のするべき事は、その時に向けての竜人国の強化か」
「特に兵士一人一人はしっかり鍛えておく必要があるから、上には上が居るという事を徹底的に叩き込んでおいてほしい。ボコボコにしろって意味じゃなくて、目指すべき上の力って事ね」
「目標という意味ね、了解、了解。確かにその程度で済むと考えられても困るし、上の力と技術を見せて、お前達が目指すべきはここだと示す必要があるか」
「だねえ。指揮官連中もそうだけど、腑抜けてたら活を入れなきゃいけないよ。一人がその程度と考え始めたら、それは連鎖する。そういう阿呆は徹底的に締め上げるに限るさ。仲良しこよしじゃ国は守れないんだよ」
「流石は護国の英雄たるスヴェストラ将軍だとは思うけど、同じ事は出来ないんだから、その辺りは手加減してあげなさいよ。アンタの場合はスキル込みの部分があるんだからさ」
「スキル込みとは、いったい……?」
「あたしは元々から【精神感知】と【精神看破】を持っていたんだよ。だから相手の軍の精神状態もある程度分かってね。それはつまり攻め時が分かるって事なのさ。当然、相手をいなしたり流す時も分かるんだけど、スキルが無いと難しいから同じ事は出来ないんだよ」
「成る程。護国の英雄と呼ばれた理由はそこか。確かに攻め時や守り時が分かれば、これほど有利な事も無い。また、相手に隙がありそうなら奇襲の成功率も上がるだろう。確かに英雄と呼ばれるに相応しい力だ。正しく指揮官向けだな」
「陛下。我が国にも似たような者は居るやもしれませぬ。探した方が良いのでは?」
「良いかもしれないけど気をつけな。精神系のスキルを持つ誰も彼もが、あたしみたいに国に忠誠を誓うとは限ってないよ。そこは忘れないようにね」
「【精神看破】なんて相手の考えがある程度は読めるものねえ。敵意や悪意があれば罠に掛けようとしているとか、それが無いなら安心していいとか。相手は自分の心を読んでいると思って行動しないと、探して引き入れるのは難しいでしょうね」
「反感を持たれたら最悪だろうしね。従うフリをして逃げ出しても不思議じゃないわ。そうなるぐらいなら、そっとしておいた方がマシかもしれないわね。もしくは助けるという名目にするか」
「ああ。精神系のスキルを持っていると、他のヤツの嫌な部分も沢山見ちまうからねえ。それに耐えられないヤツは居そうだ。そこから助けるっていう名目なら悪くはないだろうね。問題は国宝を使うのは危険じゃないかって事だけど」
「なに、それは問題無いであろう。我が国にも<鑑定の石板>は幾つかある。無理に<鑑定の水晶>を使う必要もあるまい」
「なら探せそうだね。他の有用なスキル持ちも探すんだろうけど、やる気の無いヤツは止めといた方がいいよ。どれだけ優秀なスキルを持っていても、やる気の無いヤツの実力は伸びない」
「そうじゃの。さて、そろそろ会議を終えて動き始めるか。しかし、そなたらの逗留する場所をどうするかな……」
「城下に屋敷を持ってもらうのが一番では?」
「だな。すまんが探しておいてくれ」
「かしこまりました」
どうやらこれで面倒な会議も終わりみたいだね。とりあえず当面の指針は決まったか。




