1011・食事と会議室
Side:テイメリア
竜人族の王都の食堂で出された食事は、まさかの米でした。しかもチャーハンっぽく具材と炒めてパラパラになっています。小型のドラゴンとも言える竜人族の方々には食べ難いような気がするのですが……。口の横から零れそうですよね?。
「そんな事を考えられていたのですか? 子供は溢したりしますけど、大人になればスープだって溢しませんよ。他の種族より食べ難いのかもしれませんが、意識した事はありませんね」
「申し訳ありません。少々軽率な発言でした。竜人族の方の事をどうこうという訳ではありませんので……」
「いえいえ存じております。私達とて人間に対しては、鱗がなくて弱そうとか脆そうと思ってしまいますしね。その辺りは変わらない事ですよ」
「ああ、竜人族の方からすれば肌しか表面に出ていない人間に対しては、あんなに無防備で大丈夫かと思ってしまうのですね。確かに私達からすれば普通の事なのですが、他種族の方にはそう見えるのでしょう」
「それは仕方ないわよね。それぞれの種族にとって自分達こそ<普通>だもの。他の種族は全て<異種族>になるから、違う者にしかならないしね。基本的な部分で分かり合えないのよ、だって自分は違う種族なんだから」
「経験も出来なきゃ体験も出来ない。だから表面的には分かり合えても、根幹部分は分かり合えないのよね。でもそれって仕方ない事だし、そこまで踏み込まれると逆に気持ち悪いけどね。自分の種族を大事にしなさいよって思う」
「種族の違いを尊重すればいいだけなのに、過剰に近付こうとする奴って居るよね。あれもあれでおかしいって気付かないものかしら。そんな過剰なものは相手に対する押し付けになっていて、むしろ迷惑だって理解できない奴がやるのよねえ」
「他種族と分かり合おうともしないヤツが居る一方で、過剰に近づこうとするヤツも居る。どっちも面倒臭いんだけど、分かっていない事には変わりないのよねえ。近付いてくるヤツの方が暑苦しくて鬱陶しいけど」
「愚痴は止めて食事を楽しみませんか? このままだと止まらなくなりそうですよ?」
「そうだね。マハルの言う通り食事に集中しよう。皆も長い経験や色々な体験があるからね、一旦吐き出し始めると止まらなくなるのは分かるけど、これ以上は止めておこうか」
「そうね。ベルに聞かせていいものでも無いし、止めましょうか」
何と言いますか、私はそこまで他種族のおかしな方と関わった事が無いので変な思い出なども無いのですが、皆さんは色々な経験をされてきている様ですね。それが愚痴となって止まらなくなる程とは……。
興味深かったのですが、確かに愚痴を溢し続けるのは褒められた事ではありません。
ただ、子供が聞いているから止めましょうというのは……カルティクが言っていた通り、子供であるベルを中心に据えた考え方をしていらっしゃいますね。イリュディナは。
<鮮血の女王>と呼ばれた方なのですが、いいのでしょうか?。
「ゆっくりでいいのよ。焦って食べると落としてしまうからね」
「………ごくん。うん、分かってる!」
あの場面だけ見ていると、仲の良い親子に見えなくもないのですが、カルティクの微妙な表情が全てを物語っていますね。<鮮血の女王>の顔としてはあり得ないのでしょう。長く一緒に居たカルティクでさえ飲み込めなさそうです。
いえ、長く一緒に居たからこそ飲み込めないのかもしれませんね。逆にああいう状態だから、ベルに手を出そうとする物には情け容赦が無いそうですが、それはかつての<鮮血の女王>と何も変わらないそうです。ですので気にしなくても良いでしょう。
子供が食事を頑張っている姿は微笑ましいのですが、料理を見てみると……。チャーハンのような物にスープが一つ、そして野菜が付いています。シンプルですが、チャーハンの中にお肉がゴロゴロ入っていますので、結構な食べ応えがありますね。
やはりイメージ通り、竜人族は肉好きなんでしょうか? でも野菜もちゃんと出ていますし、お肉しか食べない訳ではないんでしょう。骨が付いたままの丸焼き肉を齧っているイメージだったのですが……もしかして私も漫画に毒されているのでしょうかね?。
お米を食べている国であれば、そこまで変な料理は出ないでしょうから安心しました。私達も食べられない訳ではありませんしね。
私達は全員がミクの血肉を与えられているので、そう簡単にお腹を壊したりしない筈ですが、それでも気を付けるに越した事はありません。
食事を終えると侍女長がお金を支払い、マハルを先頭にして城へと戻ります。ミクが殿の、ある意味では戦闘態勢ですが、そうとは分からないようにしつつですね。この国の治安が分かりませんので。
前の星では西部劇のような文化で、町中で銃を撃ち合うような者達が居たそうですが、この星ではそういう事は無いようですね。アルデルと同じ感じと言いますか、雰囲気がします。いわゆる剣と魔法の惑星なのでしょう。
問題は創造神とやらに力を与えられた転移者か転生者が、これから何をし出すか分からない事です。それがこの竜人国にとっても頭の痛い問題であり、私達がこれから行う事にも関わってくる物事の中心なのです。
そして絶対に面倒な者が関わってくるに決まってます。ガイアでもタケルという転生者が頭のおかしい事をしていたそうですしね。今は落ち着いてそんな毒も抜けたそうですが、自分は選ばれた者だと考える愚か者は、必ずと言っていい程によからぬ事をしますし……。
そんな事を考えていたら城に戻ってきましたが、途中で近衛騎士が近付いてきて侍女長に話し掛けています。何かありましたかね?。
「陛下は各大臣方をお集めになり、緊急の会議をされているそうです。皆様には御足労ですが、会議の中で発言をしていただきたいとの事。宜しいでしょうか?」
「宜しいも宜しくないも、それはしなきゃけない事でしょ。王や宰相は納得しても、それに納得しない阿呆は居るでしょうしね。それこそ王権を軽んじているとも思うけど、それも分かってない奴が何処の国にも居るわ」
「………こほん。参りましょう」
今おそらく侍女長は誰かの顔を思い浮かべましたわね。どうにも表情が一瞬変わりましたので。問題はそれが良い意味か悪い意味かまでは分からなかったという事です。おそらく良くない意味で思い浮かべたのだとは思いますが、決め付けはしない方が良いでしょう。
そんな私達は会議室に呼ばれ、侍女長がノックをして返事の後、中へと入ります。私達も続いて中に入って行きますが、円卓を囲んでいる小型ドラゴンが居るだけですね。竜人の威厳とかそういうのは私には分かりません。
私達は円卓の外側に用意された椅子に座り、会議の様子を見守ります。とはいえ竜人国の事ですから、大半は聞いていても仕方がないような気がするのですけどね。
「異なる所から来た者どもが会議室に来たので、ようやく始められますな。いったい何処で何をしていたのか知りませんが、気楽なものだ」
「まあまあ。右も左も分からぬ所へ放り出されたのです、仕方がありませぬでしょう」
「ふん! それならば殊勝な態度で口だけ開けばよいのだ。その程度の事ぐらいは人間如きにも出来よう」
「……この国の王に聞きたいんだけど、こいつら殺していいの? 明確にこっちに喧嘩を売ってるんだけど、死ぬ覚悟があると見做すよ?」
「あー……。気持ちは大変よく分かるのだが、手足の一本ずつで勘弁してやってほしい」
我が国もそうでしたが、何処にでもバカは居ますね。




