1009・話し合いと一旦休憩
Side:ミク
「真に申し訳ありませんでした! お怒りをお静め下さい、お願い致します!!」
竜人国の王が土下座で謝罪しているが、理由は近衛がボコボコにされて全く歯が立たなかったからだろう。もしくは私が少し力を解放したからのどちらかだ。
そして全身をボコボコにしてやった近衛は、現在白目を剥いて気を失っている。敢えて動けるようにしてやったが、相手にならないほどに弱かった。これが本当に近衛か? って思うほどに弱い。
王の横で宰相も土下座しているので、仕方なく溜飲を下げる風で納得してやる。いちいち上下関係を教えなきゃいけない時点で話にならないんだけどね。もうちょっと頭が良いと思ってたよ。竜人っていうくらいだから長生きだろうに。
「まず先に言っておくが、お前達の神の認識が間違っているから、そこから訂正しておく」
私は首から上を人間の姿のものに戻し、そこから神の位階について教えていく。こいつらが最高位の神と思っていた女神は、しょせん惑星を司る神の中で最高位であっただけ。それよりも上の神々は幾らでも居る。
「そして私は本当の意味での最高位の神々に創られたのだ。悪徳なる者を食い荒らせと命じられてな。そしてその悪徳なる者には神も含まれるという事だ。で、お前達のいう最高位の神とやらは創造神であり、それは私が既に喰った後になる」
その後に神界で何があったのかを話し、こいつらに現状認識をさせる。つまり妙なスキルを大量に持った連中が解き放たれている事、この星の神は下界の者達の手で解決する事を望んでいる事などだ。
「まあ、この星の神からしたら、ミクが横から出てきて解決したって何の意味も無いものね。最強の怪物が暴れて終わりじゃ、何も身につかないもの。それは神々としても困るというのは分かるわ」
「神の被害者とは言えるだろうけど、だからといって解決してもらうのは違うしねえ。私達はこの国の防衛に協力する感じでしょう?」
「そうだね。私に説明した神は、これから起こるであろう争いの被害を、なるべく食い止めてくれと言っていた。つまり直接的に私達が出て解決するなって事だろうと思う。いや、局所的に守るだけなら良いのかな?」
「その辺りは分からないけど、何でもかんでもあたし達がすると何の解決にもならないのは間違いないね。だからこそ下界の奴等にやらせるってのは、諦めるしかないんじゃないかい? バカな女神はミクに食われてるんだから、これが最後だろうしね」
立たせて椅子に座らせていた王が、溜息を吐きながらも声を出す。私達の話を聞きつつ、頭の中で色々と考えていたのだろう。先ほどまでの怒りなんかは既に無いみたいだ。まあ、まだ持ってたとしたら、流石に敵認定して喰ってるけどね。
「最後………なら、頑張らねばなりませんな。今まで何度も何度も我が国に手を出して来ては破壊し、あるいは我が国の国民を奴隷にして連れて行く蛮族ども。人間種も魔族も何も変わらぬ。いい加減にしろと何度思うたか……!」
「そういえば、そんなに何度も経験してるって事は相当に長生きなのね?」
「陛下は<アーククラス>ですので、寿命としては700~800年ほどあります。位階としては最高位にまで達しておられますので、寿命は長いのですよ。とはいえ、<アーククラス>はそうそう戦争には出られません」
「<アーククラス>?」
「この世界、いえ、星でしたかな? 星では位階というものがありまして、どのような理由か原因かは分かりませんが、位階が上昇すると強くなり寿命が延びるのです」
「<マイナークラス><レッサークラス><ノーマルクラス><ハイクラス><グレータークラス><メジャークラス><グランドクラス><アーククラス>。そのような順番で位階が決まっております」
「ふーん。それぞれの名前で呼ばれるって事は、大凡で自分がどの位階か分かるって事? じゃないとそうやって階級に分けたりしないわよねえ?」
「そうですな。位階が上がると、何となく上がったなというのが分かります。それと会った瞬間に自分より上だというのも何となく分かるのです。しかし貴女方からは全く感じませんでしたので、それで……」
「ああ、だから勘違いしたというのもある訳だ。舐め腐ってたのは、こっちの実力が低いと思い込んでたというか、そういう風に判断する根拠があったって事かー。まあ、本当の実力の一部が出たら、途端に震えるだけになってたけど」
「申し訳ありませぬ。確かに実力者であれば実力を隠すのが当たり前。にも関わらず失念しておったのは不覚でございました」
「まあ、実力のあるヤツが、これ見よがしに力を示したりはしないねえ。そんな事をしても面倒な連中が絡んでくるだけさ。力を利用しようとするか、それとも寄生しようとするか。どのみち碌なもんじゃないよ」
「あー! う、う、あ!」
「あらら、起きたって事はおむつかな? ちょっと待ってね、すぐ替えるから」
今はアレッサがフィルを抱いてたんだけど、どうやら漏らして起きちゃったみたいだね。それを聞いたベルも起きたみたいだし、ちょっと休憩かな?。
「子供さんが居られるのですか?」
「ええ。……まあ、色々とあってね。起きたって事はそろそろ食事にしたいんだけど、一旦休憩って形で外に出られる? 食堂か何かに行きたいんだけど」
「えっと、それは私では決められません。陛下、皆様を御案内して宜しいですか?」
「うむ。復帰した近衛よ、侍女長に言って案内するように言ってくれ。城で出しても良いのだが、中途半端な時間の所為で厨房の火は落ちている筈だ。王都の食堂であればやっていよう」
「ハッ! かしこまりました」
そう言って近衛が出て行ったけど、顔がボコボコだったね。位階がどれかは知らないけど、然して強くは無いみたいだ。とはいえ私にとっては目の前の最高位であるという王ですら相手にならないけどね。ザコ過ぎて。
アレッサがおむつを替える様子を、何故か巫女が熱心に見てるけど、いったいどういう事なんだろう? 巫女だよね?。
「確かに私は巫女ですが、巫女の中でも神託の巫女だけは別なのです。精進潔斎して修行をする通常の巫女と違い、神様と波長が合えば成れるのが神託の巫女でして。私はあくまでも竜神様からの神託を聞く係のようなものです」
「その係がとても大事なのだがな。とはいえ竜神教という竜神様を祀る宗教からは、長きに渡って神託の巫女が出ておらんのだ。その所為で神託の巫女を疎む者が教団内におる始末よ。だからこそ神託の巫女が出てこんと思うのだがな」
「まったくでございますな。いい加減、教団の内向き加減も直さねばなりませぬ。己らの権力のように振舞っておりますが、元は竜神様を讃える為の儀式を執り行う者達であった筈。それが本来の立場を忘れ、権威争いをするなど……」
「神の言葉が聞こえるというのは、それだけ大きいのでしょうね。私としては聞きたくもないので、絶対になりたくなどありませんけど」
「あたしもだよ。神様からなんて何を言われるか分かったもんじゃない。正直に言って怖すぎるから御免被るよ。それに教団とやらに神託の巫女が出てきても、そいつらじゃ権威付けのために利用するだけだろ。最悪は神様の言葉を勝手に捏造しかねない」
コンコン!
ノックの音がしたって事は、どうやら侍女長というのが来たんだろうね。子供達というかベルがお腹を空かせているみたいだから、ちょうど良かったよ。
ただし食事がどういう物かによって変わるけどね。肉を焼いただけとか、むしろ生で食えとか言ってくる可能性もある。流石に竜人族がどんな食生活かは分からないから困りものだ。場合によっては私達が料理をした方がいいかもしれない。




