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0097・ギルドマスターへの報告




 ボス戦が終わり、観音開きになった扉から奥へと進み、脱出の魔法陣で外に出る一行。


 グダグダなままではあるが、クリアはクリアである。そういう風に気持ちを切り替えた<鮮烈の色>。彼女らは経験豊富で優秀な探索者なのだ。


 そんな一行は探索者ギルドの解体所へと行き、ツインヘッドフレイムの爪と牙を売却。木札を貰ってギルドの建物へと向かう。


 ギルドの建物に入り受付嬢に渡すと、淡々と精算が行われた。ミクは小銀貨2枚でシャルも小銀貨2枚。<鮮烈の色>は中銀貨1枚と小銀貨3枚だった。途中で狩った魔物の素材などを少し持っていたらしい。



 「売却金の高い部分だけは確保しておかないとね。幾らボスに挑むって言っても、倒した以上は持って帰るさ。高く売れる物を持って帰るのが癖になってるっていうのもあるんだけど」


 「それ自体は悪い事じゃないんだけど、ついつい無意識でやっちゃうんだよね。結果、進むのが遅れたりと……あっ!? 忘れてた! ちょっとギルマスに話があるからさ、伝えてきてくれる? 緊急の話!」


 「えっ、緊急ですか? ……分かりました。少々お待ち下さい」


 「おぉーっ! <鮮烈の色>だとすぐに話が通るんだね。私のランクじゃ門前払いだけど」


 「ランクは関係なくて、ウチにはウェルドーザが居るからだよ。まあ、ランクと言えばランクなのかもしれないけど、ウェルドーザはギルマスと”面識が多く”あるからね。受付嬢も知ってるんだよ」


 「へー……」


 『シャル。ウェルドーザはランク13で、ランク13だと確実にギルドの裏調査員の仕事をした事があるらしいよ。カルティクがそう言ってた』


 「上のランクの者がギルマスの覚えめでたいって、普通の事じゃないのかい? ダンジョンの奥深くに行けるだろうし、スタンピードが起きても対応できるだろうしさ」


 「スタンピード?」


 「ああ、ミクは知らなかったのかい? ダンジョンから大量の魔物があふれ出す現象をスタンピードっていうのさ。だいたいは魔物を狩らずに放置してたダンジョンから溢れ出すんで、ゴールダームは何の問題も無いけどね」


 「そもそもゴールダームは歴史上、一度もスタンピードを起こした事が無いもの。そういう意味でも優良ダンジョンなのよね。各国の王都近くにあるダンジョンなら人も多いでしょうけど……」


 「田舎のダンジョンだと厳しいよね。数年に一度はスタンピードを起こしてるダンジョンがあるし、その近辺じゃ人が住んでる場所なんて無いって聞いた」


 「それは流石に駄目なんじゃないの? せめて兵士とか騎士の訓練場として利用するとかさ、そういう対策ぐらいはするべきでしょ」


 「そういう風にしてる国もあるけど、ダンジョンに潜るなら上下関係が厳しい軍じゃなくて探索者でいいでしょ? だから不評なのよ。でも探索者になると儲かるダンジョンか、町が近いダンジョンにしか行かなくなる」


 「そのうえ、兵士や騎士を田舎のダンジョンに行かせたら、国の守りが弱くなる。なら新兵は? ってなったら死亡率が高いし、すぐに辞めてしまう」


 「何その根性無しは。そもそも人数が掛けられるんだから探索者より有利でしょうに、何で探索者より簡単に死ぬの?」


 「それはミクの誤解さ。軍はともかく新兵なんて素人と何も変わらないんだよ。その素人をいきなりダンジョンに放り込んだところで、上手くいく筈がない。そもそも訓練を課してある程度成長させてからじゃないと、いきなり放り込んだところで連携も何も出来ずにパニックになって死ぬだけさ」


 「そう、シャルの言う通りの結果になったらしい。何処の国でも同じような感じになって、結局は兵士になってからの者を通わせるようになったそうだよ。それでも数はそこまで割けないようだけどね」


 「さっき言ってた通り、国防に穴が開くのと、それを見た他国が何をするか分からないって事さ。そして人数が足りずにスタンピードを起こす、と」



 ミクが知らなかったスタンピードの話をしていると、2階から受付嬢が下りてきてギルマスの部屋へと案内されるので、受付嬢の後ろをついていく。


 ミクは関係ないので帰ろうとすると、何故かシャルも<鮮烈の色>も引き止めてきて連れて行かれた。ミクはよく分かっていないものの、ここは大人しくしておいた方がいいと判断。為すがままにされた。


 ギルドマスターの部屋に入ったが、ミクは適当に立ったままだ。ソファーは<鮮烈の色>の4人が座っているのでミクとシャルは座る所が無い。すると、ギルマスは壁の近くに重ねてあった木の椅子を指差す。



 「立っている2人は、そこの木の椅子を使ってくれ。で、お前達から話があるそうだが、いったい何の用だ? わざわざワシだけに話す事などあったか?」


 「それがあるんだよ。………これさ。これは一昨日、南東の露店区画でタダで配ってた飲み物なんだ。で、怪しいと思ったんだけど、ちょっと飲んでも問題なかったんで油断してた」


 「ほう、何か問題があったんだな? だが、それをワシに言う必要は無いだろう。そんな物は治安担当の王都守備兵に言えばいい。何故わざわざワシのところに持って来た?」


 「焦らない、焦らない。これを持ち込んで、私達は第4エリアの攻略に乗り出した。甘くて美味しいし、景気付けと気分転換にね。そして攻略をしていったんだけど……」


 「妙に魔物に襲われるし、戦闘回数が多くて疲れてたところにミクとシャルが通りかかったのよ。あれは9階への階段近くだったかしら?」


 「そう。そしてあたし達の臭いを嗅いで、魔物を引き寄せる臭いがするって言ってくれたんだよ」


 「魔物を引き寄せる臭いだと!? いったいどういう事だ!」


 「五月蝿いね、少し声を落としな。あれは<ビジレットの実>と<アレカシュ草>を混ぜ合わせた臭いさ。簡易的な魔物寄せは<アンガルの実>と<オレオン草>で作るのは知ってるだろ?」


 「ああ。魔物を駆除する際に撒いたりするからな。あまり大きな効果は無いが、大きすぎる効果の物はむしろ危険で……まさか!」


 「その、まさかだよ。<ビジレットの実>と<アレカシュ草>を混ぜた物は強い効果があるんだ。<ビジレットの実>は甘い実で、そもそも魔物どもが好物とする臭いがする。飲んだ事によって体から発散する結果になったんだろう、それで魔物に襲われてたってわけ」


 「それが本当ならゴールダームへの攻撃、もしくは探索者に対する攻撃だな。何故お前がそんな事を知っているのかは気になるが……」


 「幾ら問われても言う気は無いね。そもそも探索者の過去を探るのは御法度だろ? 犯罪を犯してもいない限りは」


 「そうだ。だからこれ以上は聞かん。ところで何処の国の物か分かるか?」


 「特定するのは無理だね。古くはカムラ帝国が出来る前の小国で発見されたレシピだった筈、である以上は何処の国が知っていてもおかしくない。流石にこのレシピを知ってるだけじゃ、特定は不可能さ」


 「そんなに古い物なのか。まあ、古くとも知ってる事もあれば知らない事もあるしな。そこは言っても、しょうがないか」


 「この後は王都守備兵の建物にも行くけど、まずはこっちが先だろ? アタシ達は探索者なんだしさ」


 「それはそうだな。受付嬢にも聞かせておいて、周知させなきゃならん。まあ、タダのもんは怪しめと言えば終わるんだが……お前さん達みたいに飲んでも問題ないんじゃ、引っかかる可能性が高い」


 「そうなんだよ。そんな搦め手みたいなことをしてくるとは思わなかったからさ。おかげでボス戦に行くまでにボロボロさ」


 「まあ、関係なくボス戦は終わったけどね。悲しい結果になっただけなんだけど、私達だけじゃ死んでたから何とも言えない」


 「予想以上にツインヘッドフレイムは強かった」



 何故か遠い目をして語る<鮮烈の色>。彼女達にいったい何があったのだろうか? 元凶は興味無しという態度で聞き流しているが。


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