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1004・下らない貴族の話




 Side:ファーダ



 今は夜であり、俺は中央町に戻ってきて善人化を進めている。それなりに悪人が居るものの、一気に善人化してしまえば簡単に終わる程度でしかない。正直に言って、何か問題でもなければ町の方が村よりも簡単に終わるんだ。善人化だけだから。


 村の方は薬物原料を探さなければいけない為、多少の時間がどうしても掛かる。これは仕方のない事だし、地道にやってきた御蔭でかなり破壊できた筈だ。何処かに一大産地があるかもしれないが、そこも破壊すれば終わるだろう。


 それはともかくとして、町中が終わった俺はファゴー侯爵家とやらに行く。何故やたらにミク達に突っ掛かって来たのか、どうして一兵士如きが調子に乗っているのか、結局最後まで分からなかった。いちいち聞く気も無い、いや聞いた方が良いのか?。


 一応ファゴー侯爵家を善人化しているのだが、誰かまだ起きているな? 二つの生命反応が起きている部屋にある。とりあえず確認するか。



 「取り逃がしたか……。このままではマズい事になる、それは分かっているな?」


 「は、はい。しかし、目の前で兵士が殺されましたが、その方法が全く分かりません。音も無く押し潰されていくように小さくなっていき、そして消えてしまったのです。何処に行ったのかすら分かっておらず……」


 「そんな事はどうでもいい! それよりもネスル男爵の子息が死んでしまったのだぞ。ガウルベアーに襲われて亡くなったのは分かっておるが、このままでは我が家に何をされるか分からんではないか!」



 どういう事だ? 何故侯爵家の当主が男爵家如きに気を使っている? 訳が分からんが、この国だけは爵位の順が逆なのか? 男爵が一番偉いとか……無いな。周辺の国家から笑われるだけだし、意味が無い。



 「あそこは代々ダンジョンを支配している家でございます。せっかく良縁に恵まれたというのに、まさかガウルベアーに殺されてしまうとは……」


 「そもそも何故兵士どもは一緒について行かなかったのだ! あの愚か者どもが犠牲になっておれば良かったであろうが。最後の最後まで役に立たぬゴミどもめ! 分家の者でなければくびり殺しておったわ!」


 「あの者どもは男爵家の方が必要ないとおっしゃるので、これ幸いにと馬車の近くで寝ていたとの事。あの女どもに殺されましたので、分家の力を弱める事にも使えません」


 「重ね重ね役にも立たん奴等ばかりだ! とにかくその女どもはどうでもいい、それよりも子息の事をどうにかせねばならん! 正直に言ったところで相手を激怒させるだけだ。何とかして相手の怒りを他の方向に向けねばならんぞ」


 「くだんの女どもに向けるのは駄目なのですか?」


 「誰が信じるのだ? 女どもが森で発砲したら、その弾が当たって子息が死んだとでも言う気か? 死体を見れば熊にやられたのが一目瞭然であろうが! 少しは考えろ!!」


 「では、その女どもがしっかり守らなかったからだとか……」


 「そんなものは調べればすぐに関わり無いとバレるわ!! バレた時に大恥を掻き、同時に怨みは全てワシに来るのだぞ!! お前はファゴー侯爵家を破滅させたいのか!!」


 「も、申し訳ありません。そのようなつもりは決して……!」


 「ならばもう少し考えてから口を開け! お前も分家の者どもと同じか? 違うならば役に立ってみせろ!!」


 「は、ハハッ!」



 もういいか。コイツらの下らん話を聞いていてもしょうがない。とりあえず眠りの香りを注入してさっさと寝かせよう。……よし、後は善人化すれば終了だ。


 それはいいんだが、あの死んでいた男はダンジョンマスターの息子だったのか。通りで相手が男爵なのに気を使う筈だ。この国のダンジョンマスターは表向きの地位を持っているとは、少々驚きだが悪徳な神は関わってないのか?。


 わざわざ表向きの地位を求めるところがよく分からん。ダンジョンマスターは不老だし、周りの者が不審がると思うんだがな? 何で表の身分を求めたのかイマイチ情報が無くて判断がつかない。


 まあ、それはともかく、善人化も終わったしとっとと次の村へと行くか。まだまだ終わらせねばならない場所は多い。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:ミク



 昨夜ファーダが聞いたから大凡おおよそは分かったけど、どのみち分家の阿呆を制御できない程度の当主が悪いで終わる話だった。そのうえ遠慮なく書き換えて善人にしたので、こっちに言ってくる事も無いだろう。


 そもそも私達が悲鳴で駆けつけた時には既に死んでいたし、自分から護衛が要らないって言ってたんなら自業自得だ。そもそも護衛を置かなかった自分が悪い。とはいえ逆恨みとか罪を押し付けようだとか、面倒な連中だよ本当に。


 そんな事を考えていると、いきなりムクッとベルが起きた。いったいどうしたのかと思って近付くと、どうやら漏らしてしまったらしい。私はすぐにトイレに連れて行き、ズボンとおむつを脱がせて【清潔】を使い、綺麗にしたら新しいおむつを履かせる。


 その後ズボンを履かせたら、泣きそうな顔はしなくなった。危ない危ない。泣かれてたらフィルが起きてしまうところだったよ。出来れば自然に起きるまでは寝かせておきたいからね。


 ベルと二人で部屋に戻り、エアーマットに寝かせようと思ったら離れようとしなかった。仕方なく安楽椅子に座りつつ抱いていると、揺れが楽しいのかニコニコしている。どうやら座るというか、揺れを体験してみたかったらしい。


 なのでそのまま抱いていると、目を瞑ってうとうとし始めたのでそのまま寝かせる。椅子の揺れが丁度心地良いのだろう。少しの間だろうけど、そのまま二度寝させておこう。


 …

 ……

 ………


 準備を終えた私達は宿を出て食堂に行き、注文をした後でフィルに離乳食を食べさせる。ミルクの時もそうだったが、御機嫌にアムアムモグモグしているのを見ると元気は十分にあり余っているようだ。体も大きくなってきたしね。


 ベルはそんな弟を見ながら、食事が運ばれてくるのを待っている。ベルの方も食べるのが好きそうだけど、それ自体は悪い事じゃないのでスルーする。どのみち私の細胞を持つ以上は太りすぎる事も無いしね。


 食堂で朝食を食べた私達は、町の入り口から外へと出ると多少の距離を歩いていく。その後に見られていない事を確認し、【転移】の魔法で中央町の西へと飛んだ。その後はバイクを出して乗り、そのまま西へと進んで行く。


 アロトム王国は北ガウトレアの西に突き出た形でマルアエイ地方があり、そこに王都がある国だ。なのでこれからは西に進む必要がある。それと、ベルやフィルが寒さで震える事の無い今の内にアロトム王国を終わらせておきたい。


 アロトム王国は寒い季節には雪で閉ざされるほどに降るらしいので、あまり長居したくない国でもある。私達はそんな会話を【念話】でしつつ、一気に西へと進み、今日泊まる町まで進んで行った。


 今日は北ガウトレア第2西町だ。この西がマルアエイ地方なので、もうすぐこの国も終わるだろう。やはり北ガウトレアの北半分へと行かなくて済んだのが大きいね。ここまで早く終わるとは思って無かったよ。


 宿の部屋をとったら、町中をゆっくりと見て回る。正確にはベルを歩かせて運動をさせる為だ。今もベルは御機嫌にとてとてと歩き、興味のある方向へと進んで行く。危険ならノノが誘導するので、多少は目を離しても問題は無い。


 とはいえイリュという目を離す気もないのが居るので、安全は確実に担保されている。今も近くでベルに付きっきりだしね。


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