1002・またも面倒事
Side:ミク
私達は北ガウトレアの北部にある大森林に入り、ガウルベアーという熊を討伐する強制依頼を熟していた。それが終わったので帰る途中、女性の悲鳴が聞こえたので現場に駆けつける事に。そこで見たのは熊に襲われる女性だった。
私は素早く女性と熊の間に入り込み、熊の攻撃を盾で受け止める。爪の攻撃だったので問題は無かったけど、圧し掛かりだったら面倒な事になってたね。それはともかく、女性を素早く後ろに下げてもらう。
「アレッサ! その女性を後ろに下げて!!」
「分かってる! とにかく動けっての!!」
アレッサが服を掴んで無理矢理に引き摺る。そうでないと動けないほどに震えていた。理由は横に倒れている男性だろう。既に首が噛み千切られており、死亡しているのは確実だった。おそらくそれで上げてしまった悲鳴なんだろう。
私は盾で流したり止めたりしつつ、女性の回復を待つ。正直に言って、こんな事をしている場合じゃないんだよ。女性の倒した熊は1頭倒れていて、それは小さい熊なんだ。おそらく子供を殺されてキレた母熊なんだろう。気持ちはよく分かる。
とはいえ弱肉強食、弱ければ喰われるだけだ。そもそも熊という生き物自体が強者であり喰う側なんだよ。それが喰われる側に回ったからと言って怒るのは筋が通らない。気持ちは分かるけど、でもお前達は散々強者として喰らってきただろうと言えば終わる話だ。
自分達にだけ都合の良い事を言ったとて通用はしない。だからこそ私だってベルやフィルに何も無いように見張ったり、確実に守れるようにノノを置いたりしてきている。ハンターが多いこの状況で隙を見せたお前が悪い。
私は母熊の猛攻を流して止めつつ、アレッサの方に問いかける。私達は既に8頭を討伐し終えている以上、この熊を狩る訳にはいかない。さっさと女性を復帰させて戦ってもらわないと困るんだよ。
「いちいち動揺してんじゃないわよ、さっさと戦いなさい! アンタが戦わなきゃ、死んだ人が無駄死にで終わるでしょうが!!」
「!!!」
女性は冷静に戻ったのか、新型のショットガンを持って私の近くまでやってきた。私は母熊の攻撃を最適なタイミングと力で流し、転倒させて隙を作る。アレッサならともかく唯の人間種の女性なら、これぐらいの隙が要るでしょ。
女性は流されて倒れてしまった熊に対し、何度も何度も頭へ発砲する。3発撃つとそれ以上は弾が出なかったのでギリギリだったみたいだけど、それでも母熊の生命力は無くなっているので死亡している。
女性は倒した事が分かったのか泣き崩れたが、私達は無情に現実を突き付ける。というより、ここが危険な森の中だという事を忘れてしまっているね。
「いちいち泣くな、ここは危険な森の中だ。大きな声を出していれば、いつまた熊が襲ってくるか分からない。とりあえず森を出るよ。そこの子熊と母熊で2頭だし、それで狩りは達成の筈。そうだよね?」
「は、はい……」
「だったら一旦私のアイテムバッグに収納する。そこの男性の遺体もね。その後は速やかに森を出るよ。分かった?」
「分かりました……」
一気に捲し立てるように喋り、急いでその場を離れる。せっかく助けたのに死んだら寝覚めが悪いからね。女性を立たせ、熊と男性をアイテムバッグに収納したら、私が先頭を進んで森を脱出する。
女性の足が遅いのでアレッサが活を入れ、出来るだけ早く森を脱出する事だけを考えさせる。仲間か恋人か知らないけど、死んだ者に引き摺られて、今を生きる者が命をおざなりにしていい筈が無い。もう少しシャキっとしてほしいね。
それでも浅い所だったからか、出るのにそこまで時間は掛からず脱出に成功。無駄な荷物を抱えた所為で、余計な時間を使ったけど仕方ない。それより女性がこの後どうするかを聞くしかないね。
「森を出てこれたけど、これから貴女はどうするの? 一緒に居た男性っていうのは多分仲間でしょ。弔いを含めて色々としなきゃいけないんだろうけど、運ぶ事は出来るの? 熊も含めれば凄い荷物よ」
「………それは、何とかなると思います」
「そう。とりあえず何とかなるっていう話をしてくれる? わたし達もずっと遺体を持っている訳には「貴様ら、御嬢様から離れろ!!」いかないからさ」
いきなり胸鎧を着た男達二人が私とアレッサに近付いてきた。それにしても御嬢様ねえ……また面倒臭いのを助けたもんだ。何でこんなのがハンターをやってるんだか。
私達は言われるがままさっさと離れる。いちいち鬱陶しい連中に関わりたくもないからね。だからこそ遺体をどうにかしたいんだけど、時間が掛かりそうだな。向こうから執事っぽいのとメイドっぽいのも来たよ。やれやれ。
「貴様らいったい何者だ! 事と次第によっては……!」
「先に言っておく。助けてやったにも関わらずこれじゃ、助けてやって損しただけだ。ここに全てを置いて行くから、お前達が何とかしろ」
「なに!?」
「熊の死体が2つに、その横にあった男の遺体だ。これが現場にあっただけだった。ではな」
「おい、待て!!」
私達は一切気にせずスタスタと歩いて去っていく。鎧を着た連中にとっては女性の方が大事だろうから、こっちには来ないだろう。私達はその隙に離れていき、途中でバイクを出して乗ると、速度を上げて森から離れる。
助けてやったにも関わらず面倒な手合いだったとは……。本当に助けるんじゃなかったという思いしかないね。悲鳴が聞こえても無視すれば良かったよ。
『まったくねえ。とはいえ熊狩りも終わったし、さっさと帰って子供達と遊んでれば癒されるわよ。いちいち鬱陶しい連中なんてそれで忘れられるわ』
『確かにそうだね。向こうが特に問題も無かったのはノノを通して分かってるし、町に着いたら合流してハンター協会に提出。それで鬱陶しいのも全部終わりだ』
私達は気持ち速度を飛ばし気味にして戻り、町の近くでバイクを降りて収納。町中へと入っていく。
イリュとカルティクは宿に居るみたいなので【念話】を飛ばし、宿から出てきたイリュ達と合流してハンター協会へ。受付嬢に狩ってきた事を説明すると、裏の解体所に出してほしいとの事で解体所へ。
そこには吸血鬼と思しき女性達が居たが、血があまりにも少ない事に驚かれた。なのでアレッサが簡単に説明する。
「わたしが吸血鬼だから、ウチでは血が残ったままのような死体は提出しないのよ。貴女達には悪いけど、血を残しておく意味も無いからね。諦めてちょうだい」
「同胞が居たのなら仕方ないね。それに同胞だったのなら、ここまで綺麗に血抜きがされているのも分からなくはないよ」
ガウルベアー8頭と書かれた木札を貰った私達は、協会の建物に戻って受付嬢に提出。それは受理され、私達が強制依頼を熟した証明書を貰った。っていうか唯の紙だけど、これがあるだけでもう請けなくて済むから助かるね。
もうやる事も無いのでハンター協会を出た私達は、ゆっくりと宿の部屋へと戻る。部屋に戻って一息吐いた私達は、女性を助けたが代わりに面倒な事になるかもと話すと、二人は思いっきり渋面をした。
「せっかく助けてやったのに、そいつが貴族関係だなんて不運としか言い様がないわね。そもそも何で貴族の女性が熊狩りなんてやってんのよ、意味が分からないわ。屋敷で大人しくしてろっての」
「本当にねえ。何故いちいち貴族女性が危険な熊狩りなんかをやってるのかしら? それはハンターや兵士の仕事でしょうに。まさか道楽でハンターをやってるんじゃないでしょうね」
そんな話をしていると、夕方になっていたので離乳食を出す。夜中の間に本体空間で作っているので、アイテムバッグの中には余っている。具材のパターンも色々とあるのでフィルも飽きてはいない筈。
その離乳食を食べさせていると、誰かが部屋をノックした。その瞬間、皆と顔を合わせて溜息が出た。私達を訪ねて来るヤツなんて、鬱陶しい連中絡みしかない。




