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0998・バイク受領と星間移動




 Side:アレッサ



 わたし達がガイアに来て約三ヶ月。その間にアルデムに行ってロフェルやマハルの様子を見たり、二人にフィルとベルを紹介したりしていた。二人とも子供達の境遇にはいきどおっていたわね。当たり前だけど。


 その間にも何度も葉月の傘下企業である<葉月モータース>に出入りしていたわたし達は、この日、ようやく新型バイクを受けとる事になった。私のバイクだけ低いんだけど、これは仕方がないと諦めましょうか。


 それはともかくとして、ようやく出来上がったバイクはアーリーが作った物とは比べ物にならないほど洗練されていた。ついでに魔力のドカ喰い問題も少しは解決したらしい。理由はエンジンのパワーを使いすぎなんだそうだ。



 「元々のバイクには変速ギアどころかベアリングすら付いていませんでしたからね。そこまでの精度を出せない技術の星……と言いますか、西部劇みたいな星だと聞きましたので、流石にその文明度では無理だとは思いますが」


 「精度って、恐ろしく細かい数字で誤差も殆ど認められない領域でしょ? このガイアでなら出来るんでしょうけど、あの星ではまだまだ無理ねえ。バイクだって画期的すぎて、時代を先取りしている乗り物だもの」


 「そうそう。ガンマンみたいな盗賊が馬に乗って襲撃してくるのが普通よ? そんな文明の星に変速ギアはともかくベアリングだと言ってもねえ。原始的なギアなら水車で使ってるでしょうけど、ベアリングは無理でしょ」


 「ああ、そういう時代ですか……。どうこう言ってはならんのでしょうが、むしろその文明でよくぞバイクを作ったものです。その技術者を尊敬しますよ。たとえ天才が設計図を全て残していたとしても、実際に作るとなれば簡単ではありませんからね」


 「ええ。我々だって工作機械が無ければ作れないんだ。おそらくその職人は殆どを手作業だったりで作っている筈だから、まさにあのバイクは技術の結晶と言っていい。祖先が天才だとかは関係なく、アレを作った人物も十分に天才でしょう」


 「それを聞けばアーリーも喜ぶんじゃない? 技術者の名はアーリー・デイビッドよ。王都の一角で借金しながらも、色々な素材を試して何とか魔力の問題を解決しようとしていた技術者」


 「まあ、その借金は私達が代わりに返済してあげたけどね。素材面からアプローチしていたけど、どうやらアプローチの方法が間違っていたみたいね」


 「仕方ありません。どれだけのパワーがエンジンから生み出され、どれだけのパワーがロスしているか。それぞれの基準でも無ければ調べる事すら容易ではありませんからね。もちろん我々にはノウハウがありますが、一人での研究では行き詰まるでしょう」



 そんな会話をしながらも受け取ったバイクをアイテムバッグに入れていく。わたしが乗るバイクはスクーター型の物よ。ただし篭める魔力で出力は増大するから、普通のスクーターと違って軽く100キロは出せるみたい。最高速度は知らないけど。


 イリュのバイクはサイドカーが付いている物で、ベルを乗せられる物になっているわ。ちゃんとシートベルトが付いていて安全は確保できるようになってる。サイドカーの存在を知ったイリュがゴリ押ししたのよね。三ヶ月になった理由もそれだし。


 ミクのバイクはスーパーカブと呼ばれるバイクに近い形の物ね。あくまでも近いだけで模倣品ではないからセーフらしい。カルティクのバイクは3輪タイプのバイクよ。ただし前が2輪なヤツだけど。


 それらを全て受領したわたし達は葉月家の本邸に戻り、ハルカに挨拶をしてから途中になっていた星へと戻った。この星の名前が分からないからアレだけど、西部劇の星とでも呼称しましょうか。その方が分かりやすいし。



 「さて、戻ってきたは良いけれど、まずは東ガウトレアの第2南町に行きましょうか。宿をとって適当に町で一泊。動き出すのは明日からね。まずは情報を集めないとどうにもならないし」



 そう言って早速バイクを出したイリュは、サイドカーにベルを乗せてシートベルトをし、自分はバイクに跨っていつでも出発できる態勢に。仕方なくわたし達もバイクを出し、それぞれに乗って出発。


 フィルは七ヶ月を超えているので、既に粉ミルクを離れて離乳食を食べている。かつて餓死し掛かっていたとは思えないほど健康になっているし、ベルも随分とよく笑うようになった。ガイアに移動したのは無駄ではなく、子供達には大きくプラスになったみたい。


 わたし達は新しいバイクに乗って移動したものの、すぐに第2南町近くに着いてしまったのでバイクを降り、アイテムバッグに仕舞ってから歩いて町に入る。フィルはミクがおんぶしているけど、風を浴びて喜んでいたわね。今も手足を動かしているくらいだし。


 町に入ったわたし達は宿へと行って部屋をとり、少し遅めの時間だという事も気にせず食堂へと行く。初めて来た時に会った店員に注文すると、ついでにチップを払って情報を聞く。



 「別にお話ぐらい構いませんが、チップならありがたく頂いておきます。で、何を聞きたいんですか?」


 「ここ三ヶ月ほど私達はこの国に居なかったのよ。で、知っておいた方がいい大きな事とかあったか聞きたいわけ。情報にうといと不審者みたいな目を向けられるからね」


 「ああ、確かにそうですね。何でそんな事も知らないんだって感じで、嫌な目を向けられるんです。とはいえ知らないものは知らないですし、アレって嫌なものですよ。とりあえず、大きな事ですか……」


 「何も無かったのならそれで良いんだけど、何かあった?」


 「大きいと言いますか、何やら国が探している人達が居たそうです。どういう人達かは知りませんけど、この国から出て行ったとか言われているみたいですね。何でも王都でその人達を怒らせて、多くの貴族が殺されたそうですよ」


 「何それ、怖いわねえ」



 イリュが分かっている癖に、自分達じゃないとハッキリ見せ付ける態度をとる。この辺りは流石だと思うけど、本気で言っているようにしか見えないわね。ほぼわたし達の事だと思うけど、一応深堀してみようかな?。



 「貴族が殺されてるって事は、見つけ次第八つ裂きにでもするのかしらね? それとも火あぶり?」


 「いえ、どうにも一部の貴族が敵対して激怒させたらしく、王国としては敵対するつもりは無かったそうです。そんな話を兵士の人達がしていました。ただしここ一ヶ月ほどは捜索されていないみたいですけど」


 「さっきこの国に居ないって言ってたものね。捜索を打ち切ったんじゃないかしら。兵士だっていつまでも捜索している訳にもいかないし、それに中央ガウトレアならともかく、東ガウトレアではそこまで真面目にやらないでしょ」


 「ですね。その人達を探してどうするのかも知りませんし、その人達が出て行ったならそれでいいと思います。貴族を殺せるような人達と関わるのも御免ですしね。……あ! 今、っと。先に料理を運んできます」



 何かを思い出したらしいけど、勿体ぶってくれるわねえ。とはいえ料理を運ぶのは仕事なんだから、そっちを優先するのは当たり前なんだけど。でも、目の前でお預けされたような気分よ。


 ウェイトレスは料理をどんどんと運んできてくれ、ベルの前にも料理を置いた。フィルにはミクが用意している離乳食を食べさせているので、フィルの為に注文した料理は無い。味の濃い物を食べさせる訳にもいかないしね。


 七ヶ月のフィルにはまだ早いし、幾ら超人族でも体を悪くするかもしれない。今は離乳食で我慢してもらいましょ。ベルは問題ないから沢山食べなさい。


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