0997・お買い物
Side:ミク
ガイアに移動してから三日。私達は既にバイクを葉月の傘下企業に預けたけれど、早々簡単には解析も終わらない為、まだ葉月家に逗留していた。魔法を教えたりとか、戦い方を再度教えたりなどしていたんだけど、今日は買い物に行く事に。
というのも、ヤエとサクラが子供の服などを買いに行くので、私達も一緒に買いに行く事になったのだ。なのでフィルもベルも一緒となる。何より買うのは子供達の物なのだから、一緒でなければ子供達のサイズに合うかどうかも分からない。
駐車場に停まった車から降りた私達は、ミツが用意していくベビーカーを見つつ準備が終わるのを待つ。今日フィルを抱いているのはアレッサだけど、私達は抱いたままなので問題なし。
「ミクさん達はベビーカーを使わないんですか? 流石に抱っこしたままは疲れますよ」
「私達はその程度で疲れる柔な体をしてないし、負担が掛かって痛む体もしてないからねえ。皆も妙な種族になってるし、そもそも怪物たる私が子供を抱っこする程度で参る筈が無いでしょ」
「そうね。わたしでも問題ないんだから、ミクに問題がある筈ないわ。そもそも下位の吸血鬼でさえ問題ないと思うから、人間だと苦労するんじゃない? それに子供は肌が触れている方が安心するらしいし。ね?」
「あー、あ! う、あう!」
「最近急に喋るようになったし活発に動くようになったんだけど、そっちの子達はどう? 子供といってもそれぞれの子で違うと思うけど、どんな感じなのか聞いておきたいのよ」
ベビーカーにカナタとカナデを乗せ終わったので、全員で歩いて店へとやっていく。子供の服は汚れて駄目になる事も多いのと、別に高級な服など求めてもいないので、今日は量販店に来ている。しま○らという所だ。
「彼方は……そうですね。急にだったような、ゆっくりと喋り始めたような。あまり覚えていません。何と言っても初めての子供ですし、観察している余裕は無かったです。夜泣きも結構ありましたし、大変でしたから」
「奏もそうでしたから、ダブルで大変だったんですよね。一人が泣き出すともう一人も泣き出すという感じで、お義母さんにもご迷惑をお掛けしました。とはいえ「子供ってそんなものよ」と笑っておられましたが」
「へー、そうなのね。フィルとベルはよく寝るのよ。ミクがある事をしているから夜泣きなんてせずによく眠ってくれるし、一晩中怪物が起きてるから私達はゆっくり眠れるのよねえ」
「一晩中起きてるって……ああ、そういえばミクさんって眠らなかったんですよね。確かに24時間ずっと子供の世話が出来る訳で。正直に言ってちょっと羨ましいです。私達では絶対に無理ですから」
「後で快眠の香りをエキスにしたのをあげようか? あまり吸ったら危険だけど、芳香剤のように使えば上手くいくよ。ちなみにロフェルやマハルの居た星のマンドレイクやアルラウネが持つ香りの一つだね。良く眠れるから快眠の香りと私が名付けた物」
「ミクの場合、喰ったらそれを模倣出来るから、そういう事も可能なのよ。そしてウチの子達はその御蔭で夜はグッスリってわけ。ミクに聞かなきゃ分からないけど、子供達は夜に起きる事なんて無いんじゃない?」
「おっと、ここが子供服のコーナーかな? 前にファーダが買って来てくれたけど、私達は来た事なんて無いものね。今まで縁が無かったし。子供の服って言っても色々とあるのねえ……。どれがいいかしら?」
「子供は汚れますし、取り替えたりも頻繁にしますから、汚れが目立ち難い服が良いんですよね。【清潔】の魔法で今までよりはマシだと言われますけど、それでも子供達は無関係に汚しますから」
「そうそう。それに父や母が高級な服をプレゼントしようとしてくるんですけど、それらは全て断っています。子供達が浮いてしまっても困りますし、可愛い服がないんですよね、高級なのって」
「素晴らしい素材だったり技術で作られてますけど、敢えて言わせてもらうなら、それだけでしかないんですよね。私としては子供を色々と着せ替えたりしたいので、そんな高級な服を持ってこられても……と思ってしまいます」
「そんなに高級なのは嫌なの? プレゼントしてくれるんだから貰っとけば良いじゃない、貰っておけば」
「言いたい事は分かるんですけど、桜のご両親の場合、着物関係の技術で織られた布で出来た物とかになるんですよ。京都だから。正直に言って、伝統技法で作られた布とか、人間国宝の作品とかを持ってこれられても……」
「本当にそうですよね。それはもう服ではなくて美術品ですよと、思わず口から出そうになりました。子供なんですから気軽に着せられる服がいいです」
「美術品と言われるような物を持ってこられたら、確かに子供にとっては過剰でしょうね。って、コレなんか良さそうね。きぐるみっぽい感じだし」
「ああ、よくある服ですね。動物シリーズとか、アニメのキャラクターのヤツとかありますよ。彼方と奏にはまだ早いんで、着せられずに見送ったヤツですけど」
「ベルは着られる年齢だし大丈夫そうだけど…………うん、似合いそうじゃない?」
イリュがベルにくっつける形で服を押し当て、サイズが合っているかを調べつつ、似合うかどうかを話している。私としては似合うかどうかと言われると、調べた限りでは子供服ってだいたいはこんな感じだと思っている。
似合う似合わない以前に、だいたいの子供に合うようになってるから大丈夫じゃないかな? ただしアニメのヤツは別の惑星に着て行けないから却下として、動物関係のヤツは大丈夫じゃないかな?。
「確かにそうでしょうね。動物ならともかく、アニメのヤツは絶対に奇異な目で見られますよ。特に西部劇みたいな星なんでしょ? おまけにバイクがあるくらいだし、色々と俺達の想像以上みたいですからね」
「そうですね。西部劇なのに王制が混じってるとか、ダンジョンがあってダンジョンマスターが居るとか。色々とアレな感じの惑星ですけど、銃があるとなると恐いですね。魔物だけなら良いのでしょうが……」
「魔物でも危険ではないですか? 決して大きな魔物だけとは限っていませんし、小さな魔物が大量に襲ってくる可能性もあります。そうなると戦うのは難しいのでは?」
「これも良さそうじゃない? ついでに食事の時の前掛けも欲しいわね。【清潔】を使えば綺麗になるとはいえ、まだまだ必要だしフィルの時にも使うでしょうし」
「そうねえ。赤ちゃん用は着心地のみで良いんだけど、ベルの方は色々と着させてあげないといけないわ。更に寒くなってきた時用に手袋とかも買っておきたいし、他にも要る物は色々とあるから探しましょうか」
イリュはベルを抱き上げてウロウロし始める。もはや他人の話を聞かない状態になってるけど、アレは放っておいて良いね。付ける薬は無いし、関わるだけ無駄ってヤツだ。お金は十二分にあるし、未だに若返りの薬は持ったままなんだよ。
お金が無くなったら売り払えば済むんだけど、実は既に本体が解析を終えていたりする。そして私は若返りの薬を生み出せるんだ。実は生み出せない薬があって、それが<霊薬>だったりする。だから<霊薬の薬壜>は私にとって手放せない物でもあるんだよ。
「若返りの薬が作り出せるとか、こんな所で爆弾発言をするのは止めて下さい。心臓に悪すぎます」
「本当に。ミクさんがメチャクチャなのはよく知っていますが、極めつけのような情報を急に聞かされても困ります」
「まあ、それでも敢えて言うなら、きっと今さらなんだろうなって思う。神様の創った最強の怪物が、そんな甘い事は無いよなって」
「それに絶対に誰にも奪われないんだから良いじゃない。ミクをどうこうするなんて不可能でしょ」
「「「………」」」
想像して、想像して、想像して、納得したみたい。まあ、私をどうにか出来るなんて、あの神どもぐらいだろうね。




