0996・説明と雑談と近況
Side:葉月遥
ミク達が訪ねてくる時はいつも唐突だけど、必ず何かがないと訪ねては来ない。という事で身構えて話を聞いていたんだけど、何だか頼みごとがアレ過ぎて拍子抜けしたよ。
「つまり、別の惑星で作られたバイクを模倣するか改良してくれって事だね? まあ、それぐらいなら葉月の傘下に自動車企業があるから、そこに持って行けば済むよ。そこはバイクも作ってるしね」
「それにしても魔力で動くバイクですか。それって凄いですよね? 今もまだ魔力は研究されてますけど、魔力のみで走る車両ってありませんし、実用化のニュースも無かった筈。……でしたよね?」
「そうだね。まだ研究段階だし、そもそもガイアでは魔力というものの研究に手を出し始めたというか、そもそも魔力を認識したのがつい最近なんだ。まだまだ魔力の実用化にはほど遠いよ。むしろ魔力を実用化した製品が模倣出来るってだけで価値はある」
「違う惑星の人なのに、形がバイクっていうのも凄いですね。結局は同じ発想になるんでしょうか?」
「そうかもしれないけど、そもそも研究をしていた人物の名前が怪しいんだよね。ウェルキスカ王国の王都で会ったんだけど、その魔族の名はアーリー・デイビッドっていうんだよ。で、バイクを設計した人物の名はハーリー・デビッドソンなんだってさ」
「…………ハー○ー・○ビッドソン?」
「まあ、そう思うよねえ。他の星に転生する例もあるから、本人が転生した可能性が否定できない。ついでに魔力をドカ喰いするという問題以外は、このハーリー・デビッドソンが全て解決している」
「そこまで言われると、転生の可能性がどうしてもチラつくね。魔力なんていう物が判然としなかったんだろうけど、バイクという物の骨子は理解している筈だろうからさ。ただし、四人の内の誰かは知らないけど」
「うん? 四人? ……もしかして、ハー○ー・○ビッドソンって一人じゃないの?」
「そんな風に思ってたのかい? 違う、違う。ハー○ー・○ビッドソンは、ウィリアム・S・ハーレーとアーサー・ダビッドソンとその兄弟が創業者の会社だよ。だから別の惑星に転生したのが誰かは分からないね」
「誰であってもいいけど、わざわざハー○ー・○ビッドソンに似せた名前を名乗ったみたいね。もしかしたら自分を知っている人を探したかったのかしら? ほら、ラノベとかでも転生者が一人だと孤独を感じる描写があるじゃない?」
「ああ、だからハー○ー・○ビッドソンに似た名前にして、自分を訪ねてくる人を待ったって訳ですか。孤独を感じていたなら分からなくもありませんね。会えたかどうかは知りませんけど」
「多分だけど会えなかったんじゃないなかな? その子孫もそんな事は全く話してなかったし、400年前の天才とか言ってたからね。結局、魔力ドカ喰い問題は解決されてないし、それは400年変わらなかったみたいだから」
「あれ? バイクを持っているのですよね? でも解決していない……?」
「そりゃね。私達なら魔力をドカ喰いされても問題ないからよ。だから普通にバイクを使えるんだし、一応言っておくと魔族でも連続一時間ぐらいは運転できるのよ? だったら私達なら問題ないわ。そんなに魔力が少ない訳じゃないし」
「あ! あ! うーあ!」
「あぶぅ、あうあー!」
「う! あう、ばぁ!」
「んしょ、んしょ」
「何だか楽しそうだねぇ。というか、あの小さな子が遊んであげてる感じかい。それにしても産んだ訳じゃないって事は、どっかで拾ったか助けたかしたんだろうけど……連れ去った訳じゃないだろうね?」
「そんな事をする訳がないでしょ。あの子達はダスガンド帝国の帝都にある城。つまり帝城の塔に幽閉されていたそうよ。父親は正統な皇族であり、先代皇帝の息子。母親は先代皇帝の娘よ」
「……あれ? それって、まさか……」
「そう、近親相姦ね。でも子供の頃にすり替えられて、その後は幽閉されていたのよ。その星のダンジョンにはダンジョンマスターが居るんだけど、そいつと神が黒幕だったわ。下界に混乱を齎す為にやったそうよ」
「ダンジョンマスター……。いや、それはともかく神様がなんで?」
「そんなの知らないわ。事実として、神が混乱を齎そうと自分の任命したダンジョンマスターにやらせてたのよ。そして子供の頃にすり替えられて、その後は幽閉。皇帝の座を簒奪した後は、城の塔に幽閉場所を移された」
「そこで何としても本当の皇族の血筋を残す為に子供を作ったわけ。でも、結果は餓死。ミクが行った時には遅かったそうよ。生きていたのは子供達二人だけだし、その二人も飢え死にし掛かっていた」
「何て事を……!」
「その時に調べたらしいけど、子供達の体の中はボロボロ。ミクの血肉で内臓を含めて作り変えないと助からなかったみたい。その所為で二人は<超人族>という種族になっちゃったけどね」
「「「「<超人族>……」」」」
「多少のスキルと魔眼を持ってる程度だよ。些細な事でしかないね」
「いや、多少のスキルの時点で一個じゃないんでしょうし、魔眼って既におかしいですよ」
「そう? <超人族>としては普通かもしれないじゃん。今のところベルとフィルしか居ないから、本当のところは分かんないけどね。とはいえ全部ひっくるめて些細な事だよ。イリュとカルティクほど変わった訳じゃないし」
「そういえば幻想精霊とか仰ってましたね。それがどんな種族かは知りませんが」
「私は<幻想精霊種・空間>。つまり空間を操る事の出来る精霊に変わったのよ、神様に何かをブチ込まれてね。気付いたら種族が変わってたわ」
「私は<幻想精霊種・闇影>。闇と影を自在に操る事が出来るわ。闇と影の空間を移動したり、闇や影を槍にして串刺しにしたりと自在に操れるの。後、本体が別に出来たから、その本体を攻撃されない限り死ななくなったわね」
「「「「………」」」」
「いや、そんなに驚かなくても。アレッサだって<真・吸血鬼族>になったし、体が粉砕されて塵になっても復活するわよ? だからこそ私達は銃が当たり前にある星に居るんだしね」
「ああ、今居る星は銃があるんですか。そうなると不意の一撃で殺されたリしかねませんからね」
「ガイアの者に分かりやすく言うと、西部劇みたいな世界観に王制が混ざってる感じの星って言えば伝わると思う。ハンターが職業としてあって、決闘とかを町中でしてるよ。西部劇でよくある感じの撃ち合いだね」
「何となくは分かりますけど、何だか微妙な感じですね。魔法がある事を考えると、銃だけだと微妙に思えてくる……」
「まあ、言いたい事は分かるけどね。でも、その星では平民は魔力が少ないんだよ。貴族は魔力が多いらしいけど、碌に魔法の使い方を知らなくて使える者が少ない。結果として銃に頼った星の出来上がりって感じ」
「更に言えば、広域盗賊団とかも蔓延ってるっていう危険な惑星でもあるわね。そのうえ悪徳な神が下界を混乱に陥れる事もやってる」
「何だか、何でもアリですね。ガイアに産まれて良かったと思いますよ。子供達も含めて」
「そういえばタケルとミドリはどうしたの? 向こうは先に産まれてる筈だよね?」
「今は子育てに追われてるのと、翠さんはまた妊娠したそうです。まあ、お手伝いさんやメイドが居ますから、子育てには全く困っていないそうですけど」
「おめでとうと言いたいところだけど、出産から妊娠までが早すぎない? それって大丈夫なの?」
「まあ、医者が言うには問題ないらしいよ。アタシも初めて聞いた時には唖然としたけどね」
まあ、アタシ以上に驚いて放心してたヤツが居たんだよ。誰とは言わないけど。




