表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/1002

0096・悲しみのボス戦




 グダグダな休憩も終わり、これから出発するのだが、ボス戦の為の準備を入念にする<鮮烈の色>。それに比べて適当にダラダラしているミクとシャル。その理由は色々あるのだが……。



 「ミクとシャルは準備を整えなくていいの? 何だかやる気の無さそうな感じだけど、ここのボスはツインヘッドフレイム5頭だよ?」


 「始まってすぐ、ボスが出てきた途端に叩き潰せばいい。あたしとミクで2頭やれる。どうせボスは一旦止まるだろうから、続けて殺して更に2頭。この時点で4頭は殺せるんだよ」


 「ツインヘッドフレイムの頭は2つだけど、律儀に頭を潰す必要は無い。胴体を叩き潰せばそれで死ぬから、頭は無視して構わないんだよ。そっちはセティアンを主体にゆっくり戦ってくれればいい、引っ掻き回すのは私達の役だし」


 「そうそう。頭が2つかもしれないけど、その程度の魔物に負ける気は無いさ。あんた達は安全に戦いな。あたし達は少々他とは違って力があるからねえ、それ相応の戦い方があるのさ」


 「そ、そうか。じゃあ、任せるよ……」



 微妙に納得できない顔をしながらも、ボス戦へと挑む<鮮烈の色>。ミクとシャルもボス部屋に入り、後ろで入り口が閉まる。


 魔法陣が輝き、ツインヘッドフレイム5頭が出現した途端、ミクは【陽炎の身体強化】を、そしてシャルも【陽炎の身体強化】を使って一気に接近。胴体に武器を叩きつけた。


 ミクのウォーハンマーを受けた個体は、吹き飛んで壁に叩きつけられ死亡。シャルがメイスを叩きつけた個体は、一撃で内臓が破壊され苦しみの声を上げている。


 唖然としている<鮮烈の色>とボスのツインヘッドフレイム。しかしそんな隙をミクとシャルが逃す筈もなく、更に追撃を行おうと動き始める。


 この段になってようやく復帰したツインヘッドフレイムは、慌てて荒れ狂う暴虐に対処しようとするも、既に遅かった。その2つの暴虐は止まる事なく動いていき、片方は苦しんでいる1頭の胴体に再度メイスを振り下ろす。


 本来ならば第5エリアへの絶対的な壁として君臨しているツインヘッドフレイム5頭が、この時点で残り3頭しか残っていない。しかし、流石に壁と言われるだけあって、ここからはやらせないと牙を剥く。


 だが、荒れ狂う暴虐に対しては、あまりに脆かった。ミクは左手のカイトシールドを構えてダッシュ。胴体にシールドバッシュを行い吹き飛ばした後、一気に接近して倒れているツインヘッドフレイムの胴体にウォーハンマーを振り下ろす。


 シャルは左手でワイバーンの牙のダガーを取り出して投げつけ、怯んだ隙に胴体にメイスを連続で叩き込む。この時点で4頭が殺害され、残っているのは<鮮烈の色>に近い1頭だけである。



 「がんばれー。ここのボスはそこまで強くないから、<鮮烈の色>なら十分に勝てるよ。私達は血抜きとかしなきゃいけないし、自分達のペースで安全に戦って勝てばいいだけ」


 「そうそう。後は1頭だけだし大勢は決してるんだから、落ち着いてゆっくり対処しな。そいつを倒せば終わりなんだから、余計なケガとかすんじゃないよ!」


 「「「「は、はは……」」」」



 <鮮烈の色>の4人も、もはや苦笑いしか出てこなかった。あっと言う間に暴虐の嵐が吹き荒れ、あっと言う間に通り過ぎていったのだ。その結果、残ったのはボス1頭。


 ボスと<鮮烈の色>のメンバーは互いに見つめ合い、溜息を吐いた後で戦闘を始める。ボスにとっては絶対に負けしかなく、<鮮烈の色>にとってはお膳立てされた戦いである。


 両者共にまったく気乗りしない戦いであるものの、それでも戦わなければ終わらない。むしろ終わらせる為に渋々戦っているようなものだ。他の探索者が見たら、呆れてしまうだろう。


 そんな事はお構いなしのミクとシャルは、レティーとドンナに血抜きをさせつつ雑談をしていた。



 「それでメイスってどう? 何かボスが倒し辛そうな感じだったけど」


 「倒し辛いって感じではないね。相手の体の大きさがあるからさ、どうしても一撃では倒せないだけだよ。ミクみたいにポシェット型のアイテムバッグがあれば、好き勝手に武器を取り出せるんだろうけどね」


 「まあ、確かに。なら携帯性が良くて、パワーが篭められる物を考えた方が良いのかな?」


 「だからメイスで良いんだよ。そもそも一撃で沈めなきゃいけない訳じゃないんだ。一撃で気絶までもっていければ十分さ。こいつは頭が2個あるから分からないけど、普通は頭を全力で殴りつければ死ぬか気絶するよ」


 「後は戦い方でどうに、危ない! ……1対4なのに危ないね、ヒヤッとしたよ。もっと安全に戦えばいいのに」


 「いや、あれでも安全に戦ってるよ? というか安全に戦ってるから危なかったのさ。ミクの言う安全っていったい何だい?」


 「えっ? そんなのブレス吐かれそうになったら短剣を投げこむとか、魔法を飛ばすとか。とにかくブレスを吐かれないようにするのが安全でしょ? あいつブレスさえ吐かなきゃ、唯のザコだし」


 「「グルゥ………」」



 ツインヘッドフレイムの両方の頭から、悲しみの声が聞こえた気がしたが、ミクもシャルも無視した。むしろ<鮮烈の色>が戦闘相手にも関わらず同情してしまう始末である。


 そんな戦闘も、傷を与え続けた<鮮烈の色>が勝利を果たす。それでも彼女らの心に勝利の実感は無かった。1頭のツインヘッドフレイムを倒す時間より、ミクとシャルが4頭を倒す方が圧倒的に早いからだ。



 「おめでとう。ツインヘッドフレイムを倒せたね」


 「ミク、流石にそれは嫌味だから止めな。ミクが嫌味で言ってないのは知ってるけどさ、幾らなんでもそれは無い」


 「ははは……ありがと。アタシ達がどれだけ実力不足か分かったよ。あの<竜の牙>でさえ12人程で挑んだって知ってるのに、アタシ達なら4人で行けるって思ったのが驕りなんだろうね」


 「私はカルティクと2人で突破したけど? 今回はシャルと2人で突破する気だったし。まあ、<鮮烈の色>が居るから、今回は6人だけど」


 『<鮮烈の色>っていう4人組は必要? 言い訳にも使えないけどいいの? 流石に1対4で、あんなに時間が掛かったってなると、ミクとシャルの力がとんでもないのがバレちゃう』


 『流石にあそこまで実力が低いとは、主も思わなかったのでしょう。第4エリアで狩りをしているのですから、普通はもっと強いと思いますしね。とはいえ本気で戦っている感じもしませんでしたが、あれはいったい……』


 「そもそも<鮮烈の色>が普段の実力を出せば、もっと早くに倒せてた筈でしょ? 何であんなに梃子摺ったの? それに妙なミスも多かったし」


 「あのね、ミク。圧倒的な強者に見られて、普段の実力が出せる筈がないでしょ。私達の実力はその程度ってまざまざと見せ付けられた後、お膳立てされて「さあ、戦いましょう!」って言われても……」


 「うんうん、あれは余計な一言だった。アレが無ければ、もうちょっとマシな心境で戦えてたと思う! 幾らなんでもアレは無い」


 「確かに。ボスのツインヘッドフレイムとですら、通じ合ったくらいにアレは無いよ。もはや言葉にもならない感情だったけど、あの瞳を見れば分かる。あの時、確かに私達は通じ合っていた」


 「ああ、それは間違い無い。言葉とかを超えた感情でアタシ達は通じ合ってたね。その事だけは胸を張って言えるよ」


 「ボスっていうか、魔物と通じ合ってどうするの?」


 「「「「「………」」」」」



 そうだけど……そうだけど! お前が言うな!! という感情が吹き荒れるボス部屋であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ