俺様金魚のルームメイト
後書き部分に二匹の写真を入れました。水が黄色く見えるのはうちの照明のせいですのでご心配なく。
ルームメイトの選定は困難を極めた。
何と言っても俺様イジケ魚のテンコと同居するのだ、どんな金魚にも荷は勝ちすぎる。
体長5センチ、和金にしては長い尾びれを得意げに揺らすテンコ、餌は独り占めしたいし、イラつくと壁に映った自分の姿とケンカを始める。
大水槽10匹所帯でイジケていたのは、リーダー格のヌシが団体生活を教えようとした結果だろう。
隔離したテンコとそのルームメイトのための新居、60リットル中型水槽に砂利を敷き水草を植え、隠れ家を作りフィルターで水を循環させた。
水質が落ち着くまでの1週間、「誰ならテンコと暮らせるんだ?」と逡巡。
テンコより大きすぎず、小さすぎない魚がいい。
候補はヒシ、ダイ、シャークの3匹。
ヒシはテンコに負けず活発。
ダイは浮いている餌は食べないほどシャイ。
どちらもテンコに合わない気がした。
ーーシャーク。
シャークとテンコは他の3匹と、大水槽を入手する前の冬を庭の水鉢で過ごしている。
まだみんな黒い稚魚で、テンコだけ額の右上に赤い点があった。
シャークをシャークと名付けたのは、他の魚より細身で、餌を咥えた途端くるりと反転する姿が鮫っぽかったからだ。
2022年3月から200リットル大水槽で暮らし、黒かった身体は赤白混合の更紗模様になった。
新居の中型水槽に、今では全身オレンジの尻尾の長いテンコと、まだら模様のシャーク、似合うと思った。
テンコがシャークを敵認定しないように、先にシャークを引っ越した。
翌日、小さな隔離水槽に居たテンコをシャークに引き合わす。
ふたりはルームメイトとして、うまくやっていけるだろうか?
そしてかれこれ14か月過ぎたのだが、直感に狂いなく2匹は絶妙なコンビになり、イジメもイジケも起こっていない。
並んで泳いでいたり、知らんぷりしていたり。
ただ眠くなると決まって、寄り添ってぷかぷか水中を漂う。
テンコは食事時だけはやはりテンコで、ちゃぷちゃぷ音を立てて浮いている餌を全部口に入れようとするのだが、シャークはそれを咎めだてしない。
3歩下がって眺めている。
そしてテンコが逃した餌を待ち構えて悠々と食べる。
テンコはそれが悔しくてシャークを追いかけるのだが、シャークも慣れたもので、追われついでにさらに餌をキャッチする。
幸せなのだろう。
その証拠に更紗模様の美人金魚とは思えないシャークの特技がある。
育てている10匹の金魚のうちダントツでーーーー
たなびかせるフンが長いのだ。