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田舎貴族の学園無双~辺境伯子息は常識知らず~  作者: おとら@9シリーズ商業化


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変わろうとする者

 その後、持っていたタオルで身体を包み、二人を野営地へと送っていく。


 幸い、誰にも見られることなく到着して……砦にいる女性の兵士に受け渡した。


「いやいや、危険が危ないところだった」


「それでは、意味が重複してる気がするが?」


「あっ、レオン……少し混乱中です」


 俺だって年頃の男の子。

 二人共タイプは違うけど、可愛い女の子だ。

 あんな姿を見ては冷静ではいられない……レオンの接近に気づかなかったくらいだ。

 むしろ、よくここまで頑張ったと褒めてあげたい。


「ふむ、どうやら何かあったようだ」


「それは内緒です」


「くく、それは面白いことがあったようだ」


「と、とにかく、俺は少し走ってくる!」


 そして、俺は煩悩を振り払うように野営地の外に走り出すのだった。




 ◇



 ……くそっ、自分が情けない。


 幼い頃から槍と炎魔法を鍛えて、ようやく身を結んできた。


 Sクラスにも入れたし、その中でも上位だという確信がある。


「それがどうだ? ……森の中で迷い、罠にかかり……まさかの時間切れとは」


 怪我を負うような真似はしていないが、それでも情けないことに変わりはない。

 これでは、成績にも響くだろう。


「冒険者になどなるつもりはないが、やはり実績は欲しい」


 何よりなれるのにならないと、ただなれないのでは意味が違う。

 他の奴らに馬鹿にされないためにも、親族から見限られないためにも手柄や実績が必要だ。


「だというのに……!」


 入学してから良いとこなしだ。

 獅子族とはいえ獣人に打ち勝てないわ、更にユウマ殿ような強者がいる。

 セリス殿の実家にも申し込んでいるが……あまり良い返事は貰えていない。


「このままだと役立たずの烙印を押されてしまう……!」


 ただでさえ第二王子という、第一王子の代用品という立場だ。

 最悪、王太子になれなくても何かしらの形が欲しい。

 ……俺が存在して良い理由が。


「そんなことは、母上の前では言えんがな」


 あの人は俺が王太子になることしか考えていない。

 俺が付き合う人や立場を勝手に決めてくる。

 それは俺のためではなく、自分の欲望のためだというのはわかっていた。


「……それでも、たった一人の母親だ。出来るだけ願いを叶えたいと思うのはいけないだろうか? そもそも、俺には親しい人もいない」


 俺に寄ってくるのは甘い蜜を吸おうという者ばかり。

 側近と呼べる者もいなければ、友と呼べるような者もいない。


「はっ……腰巾着なら、いくらでもいるがな。だが、わざわざ俺を探してくれるような者はいない」


 こうしてひと気のない場所に寄りかかっているが、誰も探しには来ないくらいだ。

 これでも、腐っても第二王子だというのに。

 所詮、何も持っていない俺など価値はないのだろう。


「そういえば。ユウマ殿のパーティーは一番の成績だったとか。チームワークも抜群で、いつのまにか仲間が増えていたな……まだ、ここに来たばかりだというのに」


 今思うと、俺に対しても自然に接していた。

 そういうところが、人を惹きつけるのかもしれない。

 少し、羨ましく思う。


「……あのように生きられたなら楽なのだろうか。俺も、獣人と仲良くしたり、もっとパーティーメンバーと仲良くするべきだったか」


 だが、今更そんなことをしていいのか。

 そもそも、周りが許してはくれまい。

 俺は今まで、散々好き勝手にやってきてしまった。


「もういいか……手柄とか、王太子とか……ん? 何やら騒がしい?」


 建物と建物の間にいる俺に、その会話が聞こえてくる。


「何だって!?」


「声が大きい……! 生徒達に聞かれたらどうする……!」


「す、すまん。しかし、本当か? ……魔物の群れが押し寄せているというのは」


「ああ、本当だ。何方向からか、こちらに迫ってきているらしい」


 ……なに? ここに魔物の群れが来ている!?


「ここ最近の魔物の活性化と関係が?」


「いや、それはわからない。ただ、すぐに生徒達にも気づかれるはずだ。今のうちに、態勢を整えるぞ」


「すまないが、話は聞いた」


 俺は隠れるのを辞め、二人の兵士の前に出る。


「こ、これはカイル様!」


「聞いていたのですか……」


「その戦い、俺にも協力させてくれ」


「それは……どうする?」


「しかし、王子を戦わせるわけには……」


「これは命令と思ってくれて良い」


 気分は良くないが、ここは押し通させてもらおう。


 手柄とか実績とかは、この際置いておく。


 ただ……このまま帰っては、不甲斐なさで自分を許すことができそうにない。


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