それぞれの会話
幸い、カレン達には気づかれずに済んだ。
ただ、俺の尊厳が少し減っただけで……グスン。
「お兄ちゃん、便所長かったぜ!」
「ほんとだ〜! うん○じゃね!?」
「そんな奴にお姉ちゃんは渡せない!」
「も、もう! やめなさいって! それに、この方は……」
「ふはは! そんなことでは我はへこたれん! カレン姫を守りたければ俺を倒すが良い!」
「なにを〜!」
「甘いっ!」
俺は迫り来る少年を、ベッドの上に向けてぶん投げる。
当然万が一にも飛びてて怪我がないように、ベッドの周りを風の結界で覆っている。
「うわ〜!?」
「楽しそー! 俺も!」
「わたしも!」
「良いだろう、どんどんかかってるが良い!」
そして、彼らが満足するまで相手をしたけど……流石に疲れた。
子供っていうのは、本当に元気だね。
でも、それが一番だ。
その後、外に出て木陰のベンチで休憩する。
子供達は相変わらず元気で、外を走り回っていた。
「ふぅ、子供の体力は凄いや」
「ユウマさんって、子供の相手も上手なんですね?」
「まあ、下に二人いるからね。それに領内の子供達の相手もしてたし」
「えへへ、今の見てたら想像つきました。貴族の方なのに、そういうことするんですね。平民ならまだしも、ここにいる子達は……」
「前も言ったけど関係ないよ。貴族だろうが市民だろうが、俺は同じ人間だと思ってるし。もちろん立場とか場面においては、そういったものも必要だけどね。ただ、少なくとも……子供達には関係ない話だ」
そもそも、俺にとっては守るべき民だ。
バルムンク家はこういう子供達の未来を守るために、ずっと国境を守り続けているのだから。
「ユウマさん……初めて王都で友達になった貴族が貴方で良かったです」
「そう? それなら良かったよ」
「その、何かお礼をさせてください!」
「それは前にも言ったけどいらないよ」
「でも、わたしの気が済みません! 今回だって、わたしが騙したようなのに……」
なるほど、そのことを気にしてるのか。
俺が気にしてなくても、根が優しいから気になるんだね。
そうなると……アレでもしてもらおうっかな。
「ふふふ、そこまでいうなら覚悟はいいかな?」
「は、はいっ、どんどこいですっ」
「それじゃ、失礼しましてっと……うむ、極楽だね」
俺はそのまま、横に座っているカレンの膝に頭を乗せて寝転がる。
風が吹き、上に見える木々が揺れる。
良き太ももの感触もあり、とても安らぐ。
「ひゃう!? あ、あのぅ? 何を……」
「何をって膝枕だよ。可愛い女の子の膝枕、それは全男の子の夢だよ?」
「も、もう、ユウマさんってば!」
「いやいや、嘘じゃないって。本当に気持ちいいや」
「な、なら良いですけど……」
そうして、子供達を見守りながら穏やかな時間を過ごす。
とりあえず、カレンには何も知られずに済んで良かったね。
◇
……肩がこるわ。
先程から、自分の話ばかり。
かといって、話を聞かないわけにはいかないし。
なにせ、話してる内容が内容だったから。
「兄上は優しいが、家臣の言いなりになってばかりだ。あれでは、強き王などにはなれない。というわけで……俺としては、自分が王位を継ぎたいと思ってる」
「そうなのですね。私は第一王子様をあまり知らないので、なんとも言えないですが」
「兄上はいつも他人の目を気にしてる。あれでは、王になど向かない。そこでだ、色々と功績を立てたいと思っている。それこそ、君の家との関係も含めて」
「それは、父上や母上と話し合いをしないことには返事できませんわ」
私とて侯爵令嬢として生まれたからには、ある程度の覚悟はできてる。
いずれは、王族やそれに連なる方に嫁ぐことを。
この方も悪い方ではないのですが、やはり他者を尊重する意識が欠けてますし。
それに、何か焦ってる感じがする。
「それは……うむ、そうだろうな。それより、一緒の部活をやらないか?」
「部活ですか? 私は、今のところ入る予定はないのです。実は、生徒会に誘われてまして……」
「そ、そうか、あの従姉妹殿に……」
「はい、先日お話しする機会がありまして」
ミレーユ様は国王陛下の姪っ子なので、この方の従姉妹でもある。
噂では小さい頃から頭が上がらないとか。
そして昨日、生徒会に誘われたのは事実だ。
受けるとかどうかは、まだ決めてないけど。
「う、うむ……ところで、最近魔物が増えていることは知っているか?」
「そうなのですか? 確かに、ここに来る際にも襲われましたが……」
あの時のユウマはカッコよかった。
私を気遣ってくれたし、兵士達が死なないように立ち回ってくれた。
「なんと? それは無事で何よりだ。他にも、そういう報告がいくつか来てるらしい。俺はそれを調べて、功績を立てたいと思っている」
「そ、それは危険では? 私達は、まだ冒険者登録もしていないですし」
「冒険者程度が倒せるなら問題あるまい。俺は兵を率いて、近いうちに調査に出るつもりだ。そうだ、君も来るといい」
「そもそも、許可が出ないと思うのですが……」
「そこが問題だ……どうするか」
まだ卒業まで時間があるから、焦ることはないのに。
でも、それを私の立場では言えない。
女性は殿方にそういうことを言ってはいけないらしい。
ユウマだったら、軽く笑ってくれると思うけど。
あの二人、今頃一緒にいるのかな? ……いいなぁ。




