暗躍する
孤児院に入ると、小さな子供達がやってくる。
そして、次々とカレンに突撃をしていく。
「カレンお姉ちゃん!」
「わぁーい! お姉ちゃんだっ!」
「ごめんね、みんな。なかなか来れなくて……」
すると、シエルさんが俺に近づいてくる。
「本当にありがとうございます」
「いえいえ、俺は何もしてませんよ。ただ、友達がいきたい場所についてきただけですから」
「……伯爵様以外にも、貴方のような貴族様がいるのですね」
「……こっちの貴族は違うのですか?」
「ええ、残念なことに。自分達さえ良ければ良いという方もいらっしゃいます」
「そうですか……」
学園に通ってから違和感はあった。
明らかに身分を気にしてるし、横柄な人達もいた。
俺が住んでるところでは、考えられないことだ。
なにせ、きちんと助け合わないと生きていけない。
「あの子の友達になってくれたのが、貴方のような人で良かった」
「俺もカレンと友達になれて嬉しいですよ。特に、ああいう姿を見てると思います」
「お姉ちゃん! あのねあのね!」
「ちょっと! 僕が話してたんだ!」
「はいはい、みんな聞いてあげるから順番にね?」
「「「はーい!」」」
そんな姿を見ていると、こっちまで幸せな気分になってくる。
それだけで、ここにきた甲斐があるってものだ。
だからこそ——それを無粋な真似で邪魔する奴には反吐が出る。
「シエルさん、トイレはどっちですか?」
「そこを出て、左に真っ直ぐ行ったところですよ」
「ありがとうございます。ちょっと長くなりますが行ってきます」
俺はそのまま、足音と気配を消して窓から飛び出る。
そして、木を伝って屋根を登っていく。
そこには、黒い衣装をきた人がいた。
「すみません、カレンの護衛の方ですよね?」
「なっ!? い、いつの間に……そんなバカな、俺が背後を取られるとは。なるほど、主人が言っていたことは正しかったのか」
「驚かせてすみませんでした。ただ、こっちにも訳がありまして……おそらく、襲撃者が来ます」
「何を言ってる? そんな知らせは——何? 襲撃者だと?」
その時、微かに空気が震える音がした。
おそらく、人に聞こえづらい笛の類だ。
エリスから、暗部の人間が使うと聞いたことがある。
「ほら、言ったじゃないですか」
「……なぜ、専門である我々よりも早くわかった?」
「常に周囲には風の結界を張ってるので。とにかく、彼女が気づく前に終わらせましょうか」
「そのために、わざわざ出てきたと……面白い少年だ」
「では、ささっと片付けましょう」
俺は風をまとい、宙を跳ねるように移動する。
当然、気配や音は遮断してるので相手に気づかれずに後ろに立つ。
前回のチンピラとは違って、こいつらは確実に始末しなきゃいけない。
何故なら最初から……俺達を殺すつもりで来てるからだ。
「こんにちは」
「だ、誰だ——グハッ」
振り向くところを、居合斬りで一閃する。
相手が殺す気できたなら確実に殺す。
これも、エリスが教えてくれたことだ。
それで見逃して、大事な人に何かあってからでは遅いと。
「さて、次々と行きますかね」
「き、貴様……」
「おっと、あっちから来てくれたみたい。まあ、狙ってやったんだけど」
「なにも——ゴフッ」
「だから遅いって、俺が何者か聞く前に攻撃しないと」
風の刃の放ち、首から血を流して地に伏せる。
そして、次々と芋づる式にやってくる相手を始末していく。
……こんなものかな?
俺の目の前には十人ほどの刺客が横たわっている。
すると、先ほどの護衛の方がやってきた。
「これは……道理で我々が楽なはずだ」
「すみません、仕事を奪ったみたいで。ただ、あの子は何も知らない方がいいかなって。もちろん、今のところはですけど」
「いや、こちらも被害が出ずに助かった。それに対応が早かったから、お嬢様にも気づかれていないし……それは我が主人も望んでいる。いずれ汚い物を見るまでは、健やかな成長を送って欲しいと」
「それなら良かったです。片付けは任せても良いですかね?」
「ああ、無論だ。早くお嬢様のところに戻ると良い」
「ええ、そうしますね」
俺は再び風をまとい、急いで孤児院に戻る。
どうやら、伯爵は良い人そうで安心だね。
ただ……俺のことを知ってる風なのはどうしてだろう?




