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第7話 黒猿と鉄球

 ここはファイス国。魔人を使うマフィア『ブラック・イービルズ』の本拠地のある国だ。


「失礼しますね」


 その国の国境で、騎士が外から来た商人や旅行者に話しかけていた。

 騎士の右手にはナイフが握られ、入国する者の手を取る。


「俺はこの道中、悪魔に会ってすらないんだが」

 

 手を振り払おうとする旅人の男の手を棋士はがっちりと掴んでいた。


「規則ですので」

 

 そう言って、騎士は指をナイフで少し切る。


「痛っ!はぁ、めんどくせぇな」


 旅人の指から垂れる血を、騎士は透明な液体の入る瓶の中に入れた。


「魔人でも、悪魔憑きでもありませんね」


「チッ、だから言ったじゃねえか。俺は悪魔に襲われちゃいねえんだよ」


「すみませんでした」


 頭を下げた騎士の前に2人の女が歩いてくる。


「お願いします」


 赤髪の亜人の少女は、素直に手を差し出してくる。

 騎士は少女を検査し、安全なことを確認した。


「エルミアはやらないの?」


 少女が隣の白髪の女にそう問いかけると、女は首に下げた悪魔狩りのペンダントを騎士に見せた。


「私は六翼だ」


「はい?」


 騎士は首を傾げる。


「いや、六翼は検査が免除だろ?」


「そういうわけには......」


 少し困った様子の騎士に、もう1人の少し歳の行った騎士が近づいてくる。


「おい新人、どうかしたのか?」


 困った様子の新人騎士にもう老騎士がそう話しかけた。

 

「それが、この人がですね......」

 

 そう言って事情を話し始めた。


 事情を話し終えると、老騎士が新人騎士の頭を叩いた。


「六翼は検査免除だ!しっかり覚えておけ!」


 老騎士はエルミアに頭を下げ、そのまま国境を渡らせた。


 2人が見えなくなった後、新人騎士が老騎士にぼやき始めた。


「悪魔狩りなんて、1番検査すべきじゃないですか?」


「深く考えるな。俺たち騎士は、上の言うことに従うことが仕事だからな」


***


 大量の悪魔と戦った5日後、2人は目的の街へと到着した。


「やっと着いたー」


 レナは手を大きく上げ伸びをした。

 

「マジで疲れたな。今日はもう休もうぜ」


「だめだよ。スカルさんの仲間に会いに行かないと」


「あー、忘れてた。めんどくせえな」


 エルミアは頭をかきながら、ため息をついた。


 2人はスカルに彼の仲間に伝言を頼まれていた。


「にしても、治安の悪そうなところだな」


 街は昼過ぎということもあり賑やかなものの、一歩路地に踏み入れれば犯罪に巻き込まれそうな、そんな雰囲気が漂っていった。そんな街にも関わらず、スカルの仲間の住処は中心街の外れにあった。


 2人はゴミが散乱する路地裏へと歩みを進める。

 嫌な匂いと奇妙な静けさは、レナの不安感を煽る。

 

 人にすれ違うこともなく汚らしい路地を歩くと、座り込む1人の男が数メートル先にいることに気づいた。

 彼はこちらに目を向けると、2人の持つ武器を見た後、2人の目をジーッと見つめる。


「何の用ですか?そんなに物騒なものを持って......。この先には私の家しかありませんが......」


 汚れたヨレヨレの服は、その男をこの路地に馴染ませていた。


「じゃあお前がスカルの仲間か?」


 エルミアが『スカル』という単語を発した途端、男の目の色が変わった。


「【生成魔法枷と鉄球(フェターズ)】」


 男の右足首に鉄球のついた枷が現れた。


「エルミア......何か変なことでも言った?」


「わ、私のせいなのか!?ちょっ、ちょっと待て、なんでそんなに怒ってんだよ!」


 男は飛び上がり、右足の鉄球を振り回すように蹴りを入れようと足を振った。

 レナは咄嗟に防ごうと戦鎚を地面と水平にし、足に戦鎚の柄をぶつける。


「う、動かない......」


 巨大な武器を軽々と持ち上げるレナの腕力にも屈しない男は、遂にはレナの戦鎚を弾き飛ばした。


「待て待て待て!『黒猿と鉄球』っ!」


 エルミアが急いでそう叫ぶと、男は魔法を解いて路地の奥へと歩き始めた。


「協力者なら早く来てください。紛らわしい......」


 ため息混じりの男の声は少し気だるそうだった。


「スカルさんから教えてもらった合言葉、早く言えばよかったね」


「ああ。でも、あんなふうに急に襲いかかってくるとは思わなかったな」


***


 中心街から外れたボロボロの路地裏。その道に面する壁に一つの扉があった。その奥では、レナとエルミアとスカルの仲間と思われる男が話していた。


「一体何故ここに?」


 男が2人にそう尋ねた。


「スカルのやつが、あんたに会えつってたからここに来たんだ」


「貴女たちは、この街の屑マフィアどもを潰しに来たわけじゃないんですね」


「それも目的です。でも、それはエルミアと私で解決するから......」


 そうレナが言いかけると、男が壁を思い切り叩いた。


「勝手なことしようとしてんじゃねえぞ。今何かされりゃ、俺の作戦が水の泡だ」


「......」


 いきなり大きな声を上げた男に2人は黙ってしまう。


「すみません。こちらも必死なもんで......。それと、それよりも聞きたいことがあるんです」


「私たちの方こそごめんなさい。それで、聞きたいことって?」


 男は謝るレナに少し困ったような顔をした。


「そうですね。まず、どうやってスカルに会ったんです?あいつはこの騒動が治るまで監獄に避難させておいているはずですが?」


「ん?なんだそりゃ。スカルは部下が監獄に迎えに来たとか言って、隣国の酒場で飲んでやがったぞ?」


 エルミアが首を傾げると、男の顔が青ざめていく。


「考慮してなかった......。バレてやがったなんて......」


 頭を抱える男は、青髪の短髪をかき乱した。


「どういうこと?」


 レナは1人悩む男の様子を心配しながらそう聞いた。

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