第4話 嘘吐き
レナたちは、酒場の周りの人々をひと通り避難させ、スカルの方へ行こうとした。
「こんにちは、貴女たちは神に騙されています。さあ、私と共に悪魔にその身を捧げませんか?」
避難させたはずなのに、1人の男が話しかけてきた。
「それ、私たちが悪魔狩りって知っての言葉なの?」
その男は僧侶のように頭を刈り上げており、細い目でコチラを見ていた。
「ええ、貴女方は悪魔を狩るという愚かな行いを進んで行う愚鈍な組織ということは重々承知です」
「お前......頭と一緒に脳みそまで刈り上げちまったのか?」
エルミアは頭を指でトントンと叩く仕草をする。
「実に不愉快な発言です。貴女たちには、悪魔の魔力が必要なようですね」
「本気で言ってるの!?」
レナは少し苛立ちを見せた。
「はい。この世界を変える為に必要な犠牲ですから。あ、もしかして、犠牲のない救いがあるとでもお考えで?」
「犠牲ない救いがないだって?そりゃあ、お前みたいに弱けりゃ、全てを守り切るのは難しいに決まってんだろ」
「はあ、私たちは根本的に話が合わないようです」
「はっ、そりゃ常人と狂人じゃ話が合うわけねえだろ」
「洗礼が必要ですね。【神秘魔法 月夜の黙示録】」
突如地鳴りが響き、空が真っ暗になった。
「危ない!」
レナがエルミアの頭上に思い切り戦鎚を振った。戦鎚は何かを砕いたような音をあげる。
エルミアが上を見上げると空から無数の石が降ってきていた。
「あ、ありがとよ」
「気にしないで。それよりあの人を......」
「任せとけ」
エルミアは刀を抜き、大きく飛び上がった。そして、直径40センチほどの無数の石を五つほど粉砕した。
「ここから見せ所ってとこかな。【再現魔法 鏡面の君】」
白黒写真に写したような色をした人間が地面から複数体飛び出し、先ほどのエルミアと全く同じ動きをして、空から降り注ぐ隕石たちを切り砕いた。
「ああ、それでは洗礼の意味がない......。仕方ない。少し厳しくいきましょうか」
「なんだよこれ......」
エルミアは頭を抱え、うずくまりだす。
「やはり、もう成っていましたか」
男はそう言い、エルミアに近づき彼女の髪を掴んだ。
「エルミアを離して!」
「ふふふ、ハハハハハハ!これは実にうまくやっているようですね。現に貴女はこれを仲間と認識している」
「どういう事?」
レナがそう言うと、空から唸り声のような音が響く。だが、彼女が空を見上げた時にはもう遅かった。
「冗談でしょ......?」
レナに迫り来る隕石は、前のものよりも一回りも2回りも、いやそれ以上に巨大だった。
レナが腰を抜かすと、その隕石は目の前で粉々に飛び散った。
地面に尻をつきへたり込んでいるレナに男は近づき、囁いた。
「これは後々、貴女の敵になる。どうか私に処理をお任せください」
急いでレナは立ち上がり、大きな戦鎚を男に向けて振り下ろした。
「愚鈍にも程があります。はぁ......」
一歩退いた男は、エルミアを抱えた。
「私の名はサリーです。気が変わったらお声かけを」
「逃かさないから!【水魔法 地動戦鎚】」
思い切り地面に叩きつけた戦鎚は、地にヒビを入れる。
「なんですか......これは!」
ヒビから水が溢れ出し、その水が蛇のように動き、サリーを包み込んだ。
「取り乱して損ですね」
どういうわけか、サリーを包んでいた水がいきなり弾け飛んだ。
「それでは」
「そいつを持って行く気なら、俺を倒してか行けよ!【召喚魔法 我儘にいけ】」
去ろうとしたサリーの前に、10匹もの大きな棍棒を抱えた黒い大猿が現れた。
「嬢ちゃん怪我は?」
いつの間にか駆けつけてくれたスカルが、レナの肩をポンと叩いた。
「大丈夫。それよりエルミアが......」
「貴方、あの演劇マニアはどうしたんです?」
サリーは少し嫌な顔をした。
「あいつの演劇は閉幕わっちまったよ。残念だったな」
「これは少し分が悪い。仕方ない、置いていきますか」
サリーはエルミアを放り投げ、人間とは思えない跳躍力で、近くの森に消えてしまった。
レナは急いでエルミアに駆け寄り、揺すり起こす。
「エルミア、大丈夫?」
「あー、クソ。足引っ張っちまったみたいだな」
唸りながら起き上がるエルミアは、とても顔色が悪かった。
「肩貸すよ。ほら、頑張って」
「悪いな」
「大丈夫ですか?」
スカルは少し心配そうな視線を向ける。
「気にするな。それと、明日あの酒場に」
「わかりました」
レナとエルミアは近くの宿屋へと向かって行った。
「レナ、ありがとよ」
宿屋のベットに寝かされたエルミアは、レナと目を合わせずにそう言った。
「どういたしまして」
ニコッと笑ったレナの顔を見て、彼女を疑っていたエルミアは気まづくなった。
私を二度も助け、私を殺す1番のチャンスさえ逃している。
レナが悪魔側と考えるのは、少し考えすぎだったかもな。
エルミアはそう思い、レナの目的のため協力しようと思った。
そう決心したのは、レナを疑ったことを償おう気持ちより、レナの人柄の良さに惹かれたからだった。
【魔法解説】
月夜の黙示録
空を暗くし、月を生成する魔法。
地上に複数の隕石を降らせる。
鏡面の君
真っ白なマネキンのような見た目の人形を召喚する魔法。
召喚した複数体の人形に、過去10分間のうちの任意の15秒以内の行動を再現させることができる。また、その時に身につけている物も質量、質感、匂いまで再現できる。
我儘にいけ
複数体の黒い大猿を召喚する魔法。
猿の体長は2メートルで、木の棍棒を持っている。




