表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/79

第3話 殺人劇は笑顔で終わる

「俺がマフィアを抜けた理由は、俺が刑期を終えて戻った時に、イカれた宗教を信仰してやがった上に、女子供からも金をむしり取る屑に成り下がってたからですよ」


「なんだよそれ?」


 エルミアは思ってもいない言葉に少し困惑した。


「人類の争いが絶えないのは、神が人類に魔法を与えたせいだ。だから、神を殺すために悪魔に協力しようつって。どうかしてるでしょ?」


「お前らのボスは私益だけを考える屑野郎だっただろ?そいつはどうしたんだ」


「俺が牢屋にぶち込まれた後のボスことですか?殺されたって聞きましたよ。今のトップは魔人です」


「そうか。それと、お前が前吐かなかったアジトの場所も教えろ」


「教えますから......。ほらこれ」


 スカルは地図に印をつけた紙を渡した。


「ふうん」


「今、新しくなったマフィア共に追われてるんですよ!助けてください!」


「知るか。もう用は済んだ。じゃあな」


 エルミアが去ろうとすると、酒場の壁がいきなり吹き飛んだ。


「奴ら追いついてきやがったのか!?くそっ、助けてくださいよ!」


 スカルがエルミアに泣きついてくる。


「少し足止めしとけ!街の人を避難させてくる!」


 エルミアがそう言ってスカルを一蹴し、レナと共に酒場の外へ出た。


「運が悪かったのか、はたまた誰かさんが呼び寄せたのか。どうなんだろうなぁ」

 

 エルミアはレナの肩を掴みそう言った。


「えっと......なに?」


「なんでもねえよ」


***


「なんでバレやがった」


 スカルは共にいた部下を逃した後、酒場に突っ立っていた。


 壁が破られた酒場には粉塵が舞っており、その中から1人の男が出てくる。


「こんにちは、スカルさん。ブラックイービルズを無断で抜けるとは、礼儀がなってないと思いますよ」


 きっちりとした七三分けの黒髪を櫛で撫でつけ、少し下にずれた丸眼鏡をかけた男がそう言った。


「礼儀がなってないのはお前の方だ。おれがイチから叩き直してやるよ」


 積もり積もったイライラをぶつけるように、スカルは腰のホルダーに入っていたナイフを抜いた。


「ひとまず、俺らの飲み代と店の修理費出せよ。【召喚魔法 悪ガキ同盟(ブラックイービルズ)】」


 スカルの足元から黒い物体が湧き出し、体を包み込んだ。しばらくすると、その黒い物体はスカルの体から離れ、体毛が真っ黒な猿へと姿を変えた。


「悪役っぽさが滲み出ていて実にいいです!」


 スカルの魔法を見た男は歓喜の声を上げた。


「いちいち癇に障るガキだな!」 


 スカルは手に持っていたナイフを思い切り放り投げた。

 それは微かに男の頬を擦り、飛んでいった。


「ふぐっ!」


 次の瞬間、男が妙な声を上げた。

 男の背後に飛んでいったはずのナイフは、男の肩に深々と刺さっていた。

 男が振り返ると、背後には赤い眼光で睨んでくる猿がいた。


「あぁぁぁ!私の完璧なシナリオが!」

  

 猿に殴りかかる男の拳は空を切る。

 猿はドロドロに溶け、床と一体化したように見えた。


「あ、あなたは悪役っぽさに少し欠けるところがあります!あなたは、理由なく人を傷つけ、殺し、完璧を演じて欲しい!」

 

 男は肩のナイフを抜き、地面に投げ捨てた。


「そして、最終的には私に惨たらしく殺されて欲しいんです!【演劇魔法 劇化する人生(マイ・ライフ)】」


 男が魔法を唱えた後、眩い光がスカルの目を覆った。そして、スカルの意識の糸はプツリと切れてしまった。


***


 血の匂いとカビ臭い匂いがスカル鼻をつく。


「ここ、どこだ?」


 スカルはまず妙に視界が狭いことに気がつく。


「くそっ、取れねえ」


 顔には仮面が付けられており、まるで釘で固定されたかのように動かなかった。

 次にあたりを見渡すと、背後には路地裏を模したハリボテ、正面には木でできた人形が大勢座っていた。


「ここは......劇場か?」


 彼は壇上に寝かされていたらしく、その奇妙な状況に困惑していた。


「さあさあ皆さん、開演です!本日の劇は、『快楽殺人鬼スカル』。屑野郎の悲惨な死を、どうぞお楽しみください!」


 パチパチと拍手を始める木の人形たち。


「かっ......くっ......」


 声が、でねえ......。


 スカルの自由が奪われた。

 声を出すことすら許されないスカルは、無意識的に観客席へと走った。

 1番前に座る人形を、いつの間にか持っていたナイフで突き刺す。


「死ね!死ね!死ね!ハハハ!」


 思ってもいない言葉が出るスカル。

 最初に刺した人形がボロボロになった頃、スカルは右隣の人形を引っ掴み、壇上へと持っていった。


「ゆっくり首を切り裂いてやろうかなぁ!」


 人形の首にナイフを押し当てていると。


「やめなさい。そんなことをして何になるんですか!」


 舞台袖からゆっくりと歩いてくる男は、酒場を壊して入ってきた男だった。


「黙れ!俺は人を殺すと気持ちいいんだよ!」


 男は素早くスカルに近づき、腹に魔法拳銃を押し当てた。


「随分と悪役向きになりましたね。あなたみたいに仁義やらを大切にする屑を見ると、私は虫唾が走るんですよ」


 そう囁いた後、男は拳銃を発砲した。


「あなたは部下に愛されていたそうですね。ブラックイービルズが乗っ取られるのを知った者たちによって、あなたは牢獄へと避難させられた。それも、多大なる犠牲を払って......。しかし、それも意味がなかったようですね」


 立て続けに3発撃ち込まれた銃弾は、全て貫通し、腹に風穴を開けた。


「ゴブっ......。俺は、犠牲にした部下たちを無駄だなんて思ってねえ......」


 ばたりと倒れたスカルに、観客席の人形たちが群がり始めた。


「フハハハハ!ああ、実にいいエンディング」


 いつの間にか劇場は消え、元の酒場へと戻ってきていた。


「お前は反吐の出る仁義に嵌められたんだぜ?」


 男の後ろにはニヤニヤした黒い猿がそう言っていた。


「なぜスカルの魔法が!?奴は死んだはずでは?」


「俺ら無法者でも、礼儀知らずじゃない。兄弟分の為なら命を賭ける事さえ厭わない」


 猿がドロドロと溶け、中からスカルが現れた。


「じゃあこっちのは!?」


 倒れていたはずのスカルの姿は跡形もなく消えていた。


「ま、待ってください!私はまだ演じ足りないんです!」


 ジリジリと詰め寄ってくるスカルに、男は嘆いた。


「笑えよ。演者なんだろ?」

 

「あへへへ、し、死にたくないんですよぉ」


 壁に追いやられた男に、スカルは思い切りナイフを突き立てた。


「ひ、ひぃぃぃ」


 男の顔の真横を通り過ぎたナイフは、壁に刺さった。


「二度と俺の目の前に現れるな。次見つけたら殺すからな」

 

「わかりましたぁぁ!」


 髪を乱しながら、男は逃げていった。


「まあまあ入ってんな」

 

 スカルは右手に持っていた布袋の中身を見た。それは、逃げていった男の財布だった。


「死神に報告しに行くか」


 ため息をつき、スカルは酒場の外へ出た。

 

「おいおい、一体どうなってる......」


 思わず息を呑んだスカル。それもそのはず、彼の見た空はおかしかった。

 真上にあったはずの太陽は月に姿を変え、真っ黒な空は彗星で埋め尽くされていた。




【魔法解説】


悪ガキ同盟(ブラックイービルズ)

自分の姿を黒い猿に変え、自分そっくりの魔法でできた人形を召喚する魔法。

黒い猿になれば、影に潜ることができる。

魔法でできた人形とは視界を共有でき、自分の意思で自由に動かすことができる。


劇化する人生(マイ・ライフ)

相手に隙が生まれた時(自分が深手を負い、相手が勝ちを確信した時など)に発動する魔法。

相手に自分が思い描く劇を演じさせることができる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ