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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第1章 ハイドニア帝国編①
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第7話 幸せのドライフルーツ

体中が痛い。そう感じながら目を開ける。

 見ると、見知らぬ天井がそこにはあった。

 周りを見渡すが、自分が寝ていたのを含めて、4つのベットとそれと同じだけのベットサイドテーブルしかなく、人はいない。

 重い体を起こし、その部屋を出てみる。


「すみません、勝手に外出されては困ります」 


 部屋を出た途端、女の人がそう話しかけながら小走りで近づいてきた。


「えっと......ここは?」


「治癒院です。ベルクさん、あなたは街中で大怪我を負って倒れているのを、通行人に助けられてここに来たんです」


「ここは治癒院か......そうだ、俺の近くにレナ......いや亜人の女の子はいなかったか?」


「はい、その方なら同じ部屋に――」


「ベルクー」


 治癒院の看護師の声を遮るように俺を呼ぶ声が聞こえる。


「レナ!」


 よかった、無事で。その思いを込めて抱きしめる。


「うっ、いたたたた」


「ベットで安静にしててください。先生が後から来ますので」


「わ、わかりました」


 その後ベットに戻るが、レナが検査のためどこかに行ってしまい、特にやることがなく、なんとなく天井を見つめていた。

 どのくらい経っただろう。コンコンと扉を叩く音が聞こえたかと思うと、白衣を着た男が病室へと入ってきて、ベットの横に座った。


「こんにちは、私はエドガーです。目が覚めたみたいでよかったです。とりあえず意識が戻ったので、治癒魔法かけますね」


 エドガーは患部を確認して、魔法を唱え始める。


「【治癒魔法 蛇杖の神技(ロッド・オブ・アスクレピオス)】」


 魔法が唱えられた瞬間、体が光り始め、みるみるうちに怪我をしたところが良くなっていく。骨折したところは腫れがひき、切り傷は塞がっていく。多少の痛みと、疲労感以外は全て良くなった。


「はい、これで治療完了です。治癒魔法は、体力をかなり消耗するので、2日は入院していってください」


「わかった」


「全身にこんな怪我を負って一体何があったんですか?まぁ、とりあえずギルドの治安維持員に知らせておいたので詳細はそちらでお話しください」


「あ、はい」

 

 これからレナが狙われる可能性を考えると、ギルドに話すのが1番いいだろう。守ってくれるかもしれないし。

 そんなことを思っていると、エドガーが立ち上がり口を開く。


「2日間は絶対安静ですからね」


 わかったと頷き、それを見た先生は部屋を出ていく。そして、それと入れ違いでレナが戻ってきた。


「検査してたみたいだけど泣いてないか?」


「レナ子供じゃないもん。泣かないよ」


「そうだな、ごめんごめん」

 

 そのあとは、レナと話したり遊んだりして、あっという間に時間が流れた。

 レナをくすぐっている時に、部屋に1人の男が入ってきた。


「失礼します、あなたがベルクさん?」


「そうだが」


「僕はギルドの治安維持員のユーリです。お話を伺いにきました。」


 そう告げるユーリに、昨日起こったことを全て話した。


「ふむ、エドワードと名乗る男と、複数人の人攫いですか。ギルドがすぐ調査して、捕まえますので安心してください。それと、もしものことがあればこれを使ってください」


 そう言いユーリは、丸いボタンのついた魔道具を渡してきた。


「これは?」


「それさえ押せば、あなたのいる場所にギルドの治安維持員がすぐ駆けつけます」


「ありがとう、これで安心できるな」


 エドワードのような強さの男が複数人いたとき、俺だけじゃ絶対太刀打ちできないからな。これさえあれば、今まで通り外出できるな。


「それでは、捜査に進展があればまた伝えにきますね」


 そう告げユーリは病室から出ていった。

 ギルドへの帰り道、ユーリは独り言を呟く。


「猫の亜人の誘拐未遂......最近の誘拐事件と同一犯と見ていいだろうな、被害者はいつも猫の亜人、それもまだ成人していない者、くそ、もっと手がかりさえあれば......」


 その時ユーリの手首に痛みが走る。


「いたっ......な!?」


 ポトリと地面に何かが落ちる。

 

「僕の手が......」


「ごめんなさいねぇ、私に可愛い顔の男の子をいじめる趣味はないんだけれど、カルロス様の命令なの」


「うっ......あ、あなた、僕が誰だか知っての行いですか?」


「ええ、治安維持員の新リーダーでしょ?」


「知っていながらの行動でしたか、僕に手を出したことを後悔してください」


「手を切り落としても戦意を失わないなんて、伊達にリーダーなってないのね、でもね、世の中には根性だけじゃどうにもできないこともあるのよ、例えば、自分が遠く及ばない強者と対峙した時とかね」


「雷まほ、うぐぁぁぁぁ」


 ユーリが魔法を唱えながら女に近づいた時、右足が切り落とされた。


「ふっ、うぐぅぅぅ」


「ふふふ、これであなたを生かすも殺すも私の自由、これからができる行動は、私に嘆き媚びること、『助けてくださいー』ってね、ゾクゾクしてきたわ」


***


 2日後

 すっかり元気になった2人は市場へと足を運んでいた。

 

「レナ甘いものたべたーい」


「治療院の食事は、デザートなかったからな。俺も食べたくなってきたよ」


 甘いものを探し、2人は市場をうろうろしていると、レナがあるものを見つける。


「なにこれー」


「これかい?これはドライフルーツって言ってな、フルーツを乾燥させたものだ」


「これどんなフルーツ使ったの?」

 

「これはぶどうを干したやつだな。レーズンって言うんだよ」


「ベルク、これ買いたい」


「いいよ、俺も食べたいし3袋ほどもらおう」


「まいどあり」


 ドライフルーツか、フルーツの甘さが引き立てられて美味しいんだよなー。

 まてよ、ドライフルーツを使えば、あれが美味しくなるんじゃないか?


「なぁレナ、ドライフルーツを使った美味しいお菓子食べたくない?」


「なにそれたべたい!」


「じゃあさっそく材料を買いに行くか」


 2人はお菓子の材料を買うため、市場のお店を巡り、バター、小麦粉、砂糖、卵を買った。

 

「よし、作るぞ」


 宿屋のおばさんに調理室を借りる旨を伝え、キッチンの上に買った材料を並べる。


「レナもお料理してみたい」


「じゃあ、バターと砂糖を混ぜ合わせて」


「わかった」


 そう言い、体全身を使って一生懸命混ぜるレナを横目に、卵を割り、溶く。

 レナの混ぜるバターと砂糖が白くなったのを確認して、卵を数回に分け入れていく。


「ねぇベルク、つかれてきたー」


 材料を混ぜ合わせる手が遅くなってきた頃、レナがそう呟く。


「じゃあ変わるか?」


「ううん、さいごまでやる」


「じゃあ小麦粉入れるぞ」


「う、おもい」


「やっぱり変わる?」


「ううん、がんばる」


 いい感じに混ざったところで、ドライフルーツを加え、それらを型に流し込む。

 そして、180℃で予熱しておいた魔力オーブンで、170℃で焼く。


「わぁ、ふくらんできたよ」


 レナの言う通りみるみるうちに膨らんできた。

そこで切り込みを入れて、中まで熱が通るようにする。その後40分ほど焼いたら......。


「レーズン入りパウンドケーキの完成だ」


 パウンドケーキをさっそく切り分け、レナに渡す。


「あまーい」


 頬が落ちないよう両手で支えながらそう呟くレナを見ると、パウンドケーキ作りが成功したことが伺えた。

 自分の分のパウンドケーキを皿に乗せる。

 一口食べると、そのしっとりとした生地から深みのあるバターの風味が感じられ、思わず笑みが溢れる。そのちょうどいい甘さに、一口また一口と、手が伸びる。


「どう?レナがつくったからおいしいでしょ」


 誇らしげな顔でそう言うレナを褒めてあげる。


「ああ、レナが作ってくれたおかげですごく美味しいよ」


 パウンドケーキの甘く幸せな香りが、悩みを一時の間忘れさせ、2人に笑顔をもたらした。



【魔法解説】


蛇杖の神技(ロッド・オブ・アスクレピオス)

相手の怪我を癒す魔法。

治癒には僅かな魔力と相手の体力を使い、回復量は相手の体力に依存する為、体力のない者には使えない。


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