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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第6章 ティルシ王国編②
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最終話 終わりはまだ先

ルシファーは天に手を伸ばし、太陽の光を集め始めた。光は次第に大きくなり、やがて半弧を形作る。

 

「なんだよあれ......。巨大な光の弓?」


 ベルクは一歩後退り、宙に浮くルシファーを見つめていた。おぞましいその姿と、強大な力を見せつけられ、足が震えるのを感じていた。


「僕ができる限り防ぐからベルクも逃げて!」


 ベルは両手を広げて目を閉じた。


「君が魔法を使うというなら、僕も使わざるを得ないようだね。【悪魔魔法 暴食の黒霧(ブラック・ミスト)】」


 手から黒く澱んだ霧が吹き出し、辺りを包み込む。その霧に触れた物は粉々に砕け、塵と化す。


「俺の光は霧を晴らす。そのカスのような魔力量で勝てるとでも思っているのか?【悪魔魔法明星の光(ジュピター)】」


 霧の中から聞こえる声。その声に続いて、光の矢が霧の中から飛び出してくる。

 その矢はベルクの前を走って逃げる皆の間に刺さり、凄まじい音を立てて爆発した。

 砂埃が舞い、視界が奪われる。視界が晴れると同時に、ベルクの前で皆が倒れ込んでいるのが見えた。


「ベルク大丈夫だ。ルシファーはなぜか魔法の威力を弱めて攻撃してきたから、みんな無事だよ」


「それならよかった......」


「いいや。彼がここで無意味に魔法の威力を弱めたとは考えにくい」


 ベルの放った霧が消え失せ、ルシファーの姿が露わになる。ルシファーの片腕は無く、不敵な笑みをを浮かべている。


「これで最後だ。【悪魔魔法光速の魔槍(ランス・オブ・ライト)】」


「待て!」


 ベルは手のひらをルシファーに向け、そう叫んだ。


「なんだ?」


「君にあげるよ。全て......」


「それでいいんだよベルゼブブ。お前は最初からそうしていれば良かったんだ」


「ルシファー......君は何を言っているんだ?」


「は......?」


「僕は今から魂を放棄する。それで、晴れて僕の魔力はベルクのものだ。僕の魔法もね」


「ベル......でもそれって......」


「安心して。僕みたいな悪魔、大罪を背負う悪魔は、罪が消えぬ限り死ぬことはない。ただし、僕という個体は消えるけどね。もしまた、暴食の悪魔に会ったなら、また君の料理を食べさせてあげてほしい......」


「......わかった」


「おい!勝手なことをするなぁぁ!」


 ベルは黒い靄となり、ベルクの体に染み込むように消えていった。


「面倒くさいことをしてくれる......!」


「言葉を選んだ方がいい。今俺は、無性にお前を殺したいんだ」


「下等生物が。所詮は青二才のガキ。すぐに殺してやる【悪魔魔法光速の魔槍(ランス・オブ・ライト)】」


「ベル、力を借りるぞ。【悪魔魔法深淵の魔刀(ソード・オブ・ザ・アビス)】」


 ベルクの手から出た黒い刀は、黒い霧を纏い、2メートルほどの大太刀だった。その刀を一振りすると、霧を纏う斬撃がとび、光でできた槍を持っていたルシファーの体を真っ二つにした。


「うがぁぁぁぁ......。なんてな。俺は光さえあれば無敵だ。決して死ぬことはない」


 ルシファーの体はあっという間にくっついた。


「それなら、光の届かない場所でお前を斬り刻むまで【悪魔魔法地に伏し闇に沈め(シンク)】」


 ベルクの手に黒い霧が纏わりつく。その手は見えないほどの速さでルシファーの胴体にめり込んだ。そのまま地面の下へ下へとルシファーを殴り、沈めていく。


「このガキが!」


 ルシファーの必死の抵抗により、ベルクの腹に風穴が空く。その穴はルシファーのように閉じることはない。血が滴り呼吸が荒くなっても、ベルクの猛攻は止まらない。

 

 ルシファーの体が5メートルほど地中に埋まる頃、彼の体の再生は鈍くなった。

 どんどん広がる穴は、ベルクの打撃の強烈さを物語っていた。


「お、おい。待て。待てよ!」


 へし折れたルシファーの体は、無残なものとなっていた。


「聞いてんのか!?」


 ベルクには聞こえていなかった。とびそうな意識をなんとかたもち、一心不乱に殴っていた。


「もういい!お前ごと死んでやるよ!」


***


「うぅ......」


 レナが目覚めた頃、ベルクの姿はなかった。その代わりに、巨大な穴が目の前には空いていた。

 他の皆は目覚めて、ライトに治療してもらっていた。


「ベルクは......?ベルクはどこ!?」


 叫ぶレナ。皆は首を振り、下を俯くばかりで何も言わなかった。

 あまりにも唐突な死。それは心に重くのしかかる。涙を出し、できるだけ軽くしようと試みるも、変わることはない。

 胸の苦しさで息の詰まるレナは、街に駆け出し、ベルクの名を叫んだ。


***


 ライトの魔法により、皆は無事、自国へ帰ることができた。


 ハイドニア帝国に戻ったヴァレリアは悲しみに明け暮れていた。その隣を歩くオスカルは、あまり関心のないような様子で、ただ前を向き歩いていた。

 やがて2人は別れ、別々の道を歩いていた。


「クク......フハハハハ!」

 

 突如として笑い出すオスカル。


「腕を矢でとばしておいて良かった。失敗作の猿どもは、アホばかりで笑えてくる。フフフ、まずは贄を調達しなければな」


 その夜、オスカルは皇帝の住む城に忍び込んで行った。


***


 翌日、カナイの町は瓦礫の撤去作業に追われていた。倒れた悪魔の死体を見つけた彼らは、驚きつつも復旧作業に精を出した。


「おい!この馬鹿でかい穴の中に人がいるぞ!それもまだ息をしている!」


 1人の住民がそう叫んだ。


***


 数日後、ハイドニア帝国の皇帝は国境を封鎖し、住民の出入りを禁じた。そして、数日間教会に行かなかった者、怪しげな物品を所持している者などを悪魔と繋がっている者として、次々と処刑していった。

 もちろん反対した市民もいた。しかし、その者たちも悪魔崇拝者だとして処刑した。

 僅か数年の間に、ハイドニア帝国の人口は6割ほど減り、その7割が皇帝による処刑によるものだった。

 

 人々は皇帝を陰で罵った。彼こそが本当の悪魔だと。ただ、彼が本物の悪魔だということは、誰も気づいてはいなかった。

 皇帝は突如として自らの本来の姿を露わにした。皇帝に憑依したルシファーは、すっかり魔力を取り戻していた。

 

 彼はまず強大な力を手に入れた。ベルクたちと戦った時の数倍の魔力量を。

 次に彼は兵力を手に入れた。残った市民を悪魔に、市民がいなくなれば、自らの魔力を使い悪魔を作り出した。

 

 世界に悪魔の存在、そしてその脅威が知れ渡ったのは、僅か数日後だった。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

第2期の1話は11月10日から投稿いたします。

よければ評価、ブックマーク等お願いいたします。

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