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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第6章 ティルシ王国編②
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第66話 覚醒

「おい、なんだよあれ」


 オスカル、ヴァレリア、アーシュ、ザークの4人は、ルシファーとベルクたちが戦っている場所に来ていた。そこについた途端、オスカルが驚嘆の声を上げる。目の前には、悪魔のような姿をした男がルシファーと戦っていた。

 

「あれ、ベルクか?」


 アーシュは悪魔のような姿の男を指差し、そう言った。


「剣さばきがベルクだ」


 ヴァレリアが言う。確かに男の剣さばきはベルクだが、6つの黒い翼が生え、手には底なしの穴のように真っ黒で2メートルほどある刀を持っていた。


***


 数分前。

 

「ひとつ僕に策がある」


 ベルはそんなことをベルグに言った。


「本当か!?」


「ただし、失敗すればベルクは無事じゃ済まない」

 

「そ、それでもいい......」


「決めるのが早すぎるよ。まず話を聞いて。ベルクは悪魔憑きって知ってる?」


「ああ、悪魔が人に取り憑いて操るアレだろ?」


「そう。そして、それをベルクにする」


「そうか、ベルが俺の体を操れば......」


「いや、体を動かすのはベルクだ。仮に僕がベルクを操作するんだとしたら、ベルクの自我が崩壊しちゃうんだよ」


「じゃあどうするんだ?」


「悪魔は元来体の中心部の魂に取り憑くもの。でも、今回僕は、ベルクの目と背と刀に取り憑く。まあ、魂から離れたところに取り憑いても、僕が少しでも気を抜けばベルクに危険が及んじゃうんだけどね。それでもやる?」


「もちろんだ。俺はベルを信じるからな」


 ベルの体は黒い霧のようになり、ベルクに纏わりついた。すると、ベルクの刀が黒い霧を纏い、目が赤く染まる。そして、背中からミリミリという音を立てて、6枚の黒い翼が生えた。


「無駄な悪あがきはやめろ。面倒臭いから、早く死んで欲しいんだよ」


 ルシファーがそう言い終わった途端、家の壁にめり込んでいた。


「やりやがったな......お前......」


 ベルクがルシファーに負けない速度で、ルシファーを吹き飛ばしていた。


「悔しかったら反撃してみろ!」


「数十年生きただけのまだけつの青いガキが!殺してやるよ......」


 何を思ったのか、ルシファーは胸に手をめり込ませる。


「絶対に殺してやるからな......」


 ルシファーが胸から手を離すと、手には黒い槍が握られていた。

 その槍をルシファーが投げると、10メートルほど地面が抉れ、家が倒壊する。

 だが、ベルクはルシファーを上回る速度で反撃を繰り返す。数十秒間攻撃を繰り返したベルクは、一度距離をとる。


「速度が上がれば良いというものじゃないことを分かっているのか?そんな弱々しい攻撃じゃ、かすり傷をつけるので精一杯だろう?」


 ルシファーは嘲笑するようにそう言った。


「ベルク、刀を使うんだ」


 頭の中でベルがそう囁く。


「だけどこの刀、めちゃくちゃ重くて......」


「自分の強みを忘れたの?その優しさからくる人望の厚さを」


 ベルクの周りには、町の悪魔を全滅させた仲間たちが、心配そうにベルクを見つめていた。


「みんな!5秒でいい。こいつを拘束してくれ!」


 ルシファーは眉間に皺をよせ、歯を食いしばる。


「お前......俺の相手がこの下等種族どもに務まるとでも思っているのか!」

 

「ああ、俺の仲間の方がお前なんかよりよっぽど強いさ」


「黙って言わせておけば!」


 ルシファーはベルクの横にいるレナに向かって槍を放った。

 ベルクは重い刀を抜き、なんとか槍を防ぐ。


「雑魚どもがいくら集まろうと、変わらないぞ!」


 ルシファーがベルクに近づこうとすると、足が少し動きづらいことに気づく。


「いくら悪魔だろうが、影はあるんだな。影がある限り、俺の魔法からは逃れられねえ【影操作魔法 拘束する影(バインディング・シャドウ)】」


 ルシファーの影が、ルシファーの足に絡まっていた。


「こんな低俗な魔法、すぐに蹴散らしてやるか」


「貴様の言う低俗な魔法とやらが、時には貴様を躓かせることを覚えておいた方がいい【植物生成魔法 蠱惑的拘束樹(チャーミング・アイビー)】」


 ルシファーの立つ地面からツタが10数本生えてきて、ルシファーを縛り付ける。


「何が躓くだ!お前らは道端の石ころ同然なんだよ!」


 ルシファーの槍が1人でに浮き上がった。そして、ヴァレリアとオスカルに向けて飛んでいく。


「そうはさせない!【水魔法銀の水飛沫(シルバー・スプラッシュ)】」


 レナが水を纏った戦鎚で、槍を叩き落とす。そして、叩き落とした槍を戦鎚で押さえつけた。


「レナちゃん、私も手伝うよ!ほら、お兄ちゃんも!」


 3人が槍を押さえつけると、完全に槍が動かなくなった。


「クソックソックソッ!お前ら悪魔の怒りを買うのがどんなことかをわかっているのか!」


「さあな、ご教授いただきたいところだよ」


 ザークはルシファーに近づいていく。


「【召喚魔法| |唯我独尊(アイ・アム•ザ•ロー)】お前は禁固刑だ」


 空に黒い穴がぽっかりと空き、そこから鉄格子が次々と降り注ぐ。それがルシファーを囲み、牢獄が完成した。


「レノラ、新しい魔法を見せてやれ」


「わかったぜ兄貴!【付与魔法後天的引力(ギフト・オブ・チーフ)】」


 アーシュが魔法を唱ると、ルシファーの体がわずかに光り、鉄格子に体が引っ張られる。ルシファーの抵抗も虚しく、体が鉄格子にくっついて身動きがさらに取りづらくなった。


「こんな鉄格子など鉄屑に......」


 ルシファーはなんとか鉄格子を掴み、壊そうとする。


「【生命創造魔法自由なる逃避行(フリー・トゥー・フリー)】」


 オーギの魔法が、ルシファーの腕を引っ張り、鉄格子から手を離させる。


「ホト、私たちもやるぞ!【水精霊魔法水精霊の涙(ティアーズ・オブ・ウンディーネ)】」


「わかりました!【血液操作魔法核心をつく杭(ステイク・スルー・ザ・ハート)】」

 

 ホトの血が鋭く尖り、ルシファーの胸を貫いた。そして、アルスの魔法で牢獄ごとルシファーは水に包まれる。


「みんなありがとう」


 ベルクは空中で刀を大きく振りかぶり、振り下ろした。

 

「やめろ......。おい!やめろぉぉぉ!」


 叫ぶルシファーの声ごと刀から飛んだ黒い斬撃が、ルシファーの体を斬り裂いた。


 ベルクはその場に倒れ込み、ベルクの体から黒い霧が湧き上がる。霧は固まり、ベルが現れる。


「どう?悪くない斬撃でしょ?本当は君にもう一撃お見舞いしたかったんだけどね」

 

「嫌味かお前......」


「君がそう感じるならそうなんじゃないかな?」


「殺してやる......。絶対に......」


 ルシファーの皮膚が裂け、本当の姿が露わになる。

 ルシファーは真っ黒の肌に、鋭く蛇のような目、歪なツノに、長い牙が生えていた。


「お、おい、あれまずいんじゃないか!?」


 慌て始めるオスカル。


「ま、まずい。逃げて!できる限り遠くに!」


 ベルは焦った顔でそう叫んだ。


 ルシファーは浮き上がり、手を太陽に向けて掲げた。


「全て消し炭だ」


【魔法解説】


蠱惑的拘束樹(チャーミング・アイビー)

10数本の蔦を生み出す魔法。

蔦は自由自在に動き、敵を拘束できるほどの頑丈さを誇る。


後天的引力(ギフト・オブ・チーフ)

磁力を付与する魔法。

生物にのみ有効な魔法で、その磁力はかなり強力。


核心をつく杭(ステイク・スルー・ザ・ハート)

血を操り、鋭い針のように固める魔法。

死んでさえいれば、自分以外の生物の血でも操ることができる。

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