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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第6章 ティルシ王国編②
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第65話 共闘戦線

 町には悪魔が溢れかえっていた。悪魔は山羊の頭で人の体を持ち、鋭い爪とコウモリのような翼を持っていた。


「コロシテヤル、コロシテヤルゾ」

 

 悪魔たちはそうボソボソと呟き、町を徘徊していた。


「なんだこいつら。話には聞いてたが、マジで悪魔がいるなんてな」


「驚いてないで行くぞオスカル」


 2人は悪魔たちに向かって走っていく。


「影に沈め。クソ野郎ども!【影操作魔法 誘惑の沼地(セデューシング・スワンプス)】」


 悪魔たちの立つ床が真っ黒に染まり、泥濘む底なし沼のように悪魔たちが沈んでいく。中には抵抗する悪魔もいたが、黒い沼から伸びる手によって引き摺り込まれてしまった。

 

「私はお前たちのような悪を許せない。悪いが死んでくれ【植物生成魔法有毒な残虐性(ハザーダス・アトロシティー)】」


 地面から生えてくる紫色の花。その花は、悪魔に向かって毒気を吹きかけた。

 悪魔たちはもがき苦しみ、口から血を吐いて動かなくなった。


「あんまり手応えないもんだな」


「オスカル、あまり油断はするな」


 ヴァレリアがそう注意すると、真横の家の壁が突如として崩れ、悪魔が4体ほど飛び出してきた。


「やっば!」


 急な襲撃に反応できないヴァレリアとオスカル。すると、飛び出してきた悪魔たちの背後から2人の男女の声が聞こえてくる。


「俺から逃れられると思うな。お前らの刑は確定している。【召喚魔法|唯我独尊(アイ・アム•ザ•ロー)】」


 ザークの声と共に現れた大男たちが、3体の悪魔の首を掴む。その大男たちは、手に大きな斧を持っており、悪魔たちの首を一斉に切り落とした。


「私の魔法を喰らえ!【付与魔法 真紅の鼠(レッド・ノース) 藍色の馬(ブルー・サウス) 】」


 アーシュは悪魔の顔を殴り飛ばした。吹き飛んだ悪魔の顔は青く光っており、アーシュの拳は赤く光っていた。

 吹き飛んだ悪魔はアーシュに引っ張られ、再びアーシュに殴られる。それを数度繰り返したところで、悪魔は動かなくなった。


「あ、ありがとう」


 ザークは転んでいたヴァレリアに、手を差し伸べた。


「礼はいい。ベルクは妹の命の恩人だ。その友人を助けるのは当たり前のこと」

 

「いいのか?俺たちはお前を捕まえるかもしれねえのに」


 ザークにオスカルがそう尋ねる。


「それは2人だって同じだろ?2人はこんな大犯罪者を捕まえられるチャンスを棒に振ってまで、友のため、見知らぬ国の名も知れぬ町の市民のために懸命にはたらいている。それに、俺はそんな奴らが嫌いじゃない」


 ザークは少し笑い、そんなことを言った。


「兄貴!悪魔たちが!」


 アーシュの指差す方向には、悪魔たちがうじゃうじゃと蔓延っていた。


「話は後だ。手を貸してくれないか?」

 

 差し出されたザークの手を今度はオスカルが強く握った。


「俺もお前みたいなやつは嫌いじゃねえ」


 悪魔の大群を圧倒する4人。そことは別の場所、町の中心あたりで、アルフレッドとロゼが悪魔と戦っていた。


「な、なかなか怖いな......」


「何言ってるのお兄ちゃん!しっかりして!」


「実は俺、幽霊とか悪魔とか苦手なんだ......」


「もー、じゃー私の後ろにいて。たまには頼られるのも悪くないしね」


 ロゼはそう言って、アルフレッドよりも1歩前に出た。


「【加護拝受魔法不完全な天啓(インコンプリート・レベレーション)】」


 魔法を唱えるも、何も起きない。


「あれ?神様、調子でも悪いのかな?」


 ロゼはしょうがないと呟き、アルフレッドが持ってきた大鎌を借りる。


 ロゼは一振りで2体の悪魔の胴を切り離していく。悪魔も負けじと腕を振り回す。それを避けようと後ろに下がったロゼが足を滑らす。


「きゃっ!」


 ロゼに向かって悪魔の鋭い爪が襲いかかってくる。

 ロゼは思わず目を閉じて、頭を手で覆った。だが、悪魔の爪はロゼに当たることはない。


「ロゼに触るな!」


 悪魔の腹に振り抜かれたアルフレッドの拳は、悪魔を数メートル吹き飛ばす。


「1人にして悪かった」


 アルフレッドは手を引き、ロゼを立たせてあげる。


「ありがと、お兄ちゃん」


 2人は手を取り合い、悪魔たちの方へ向き直る。

アルフレッドが蹴り飛ばした悪魔を、ロゼが大鎌で切り裂いていく。

 悪魔がほとんど地に伏してしまった頃、2人の背後から大きな音が鳴り響く。


「逃げてくれ!」


 後ろから聞こえるアルスの声。そのアルスの前には、先ほど倒していた悪魔たちの3倍ほどの大きさ、実に4メートルほどの悪魔は、2人に向かい突進してきていた。


「ロゼ下がってろ!」


 アルフレッドは巨大な悪魔の腰あたりに手をまわし、悪魔の突進を止める。


「ホト!彼が止めてくれているうちにやってしまうぞ!【水精霊魔法霊水の大太刀(ウォーターソード・オブ・ザ・スプリット)】」


「わかりました!【血液操作魔法血液嗜食(ブラッディ・サイズ)】」


 アルスの手から水が吹き出て、それが大太刀の形に固まった。それをアルスは悪魔の右肩から斜め左下に思い切り振り下ろす。

 ホトは右手を高く掲げる。すると、周りで死んでいた悪魔たちの体から血が溢れ出し、ホトの右手へと集まってくる。やがてその血は大鎌へと姿を変えた。ホトはそれを、悪魔の左肩から斜め右下に思い切り振り下ろした。


 切り裂かれた悪魔は、グチャリと音を立てて地面に倒れた。


「あんたなかなか根性あるな!」


「ははっ、ありがとよ!」


 アルフレッドの背を叩くアルス。その時、遠くで大きな音が鳴り響いた。


 悪魔と戦っていた8人は、大きな音に反応してその方向へと走り出した。


***


 大きな破壊音が鳴り響く。


「さっきまでの威勢はどうした?」


 ルシファーはベルク、レナ、オーギ、ベルの4人を見下し、そう言い放った。

 4人の後ろの道は大きく抉れ、隕石が落ちたのかと思わせるほどの大きな穴が空いていた。それは、ルシファーの強さを物語っていた。


「あまり僕を舐めるなよ......」


 ベルはルシファーに向かって走っていく。

 余裕の表情のルシファーは、スッと右腕を上げるとその腕を素早く振った。一瞬消えたかのように思えるほど素早いその右腕は、ベルの首をはねる。


「わかるぞ。後ろだろ?」


 ルシファーはそんなことを呟き、後ろを振り向く。首がはねられたベルはボロボロに崩れ、正体を現した。首がはねられたベルは、蠅の大群だった。そして、本物のベルはルシファーの背後へとまわっていたのだった。


「これも通用しないのか。気持ち悪い」


 ベルがルシファーに振り抜いた拳は空を切る。

 ルシファーはベルクにはとても見えない速さで、ベルの背後に動いていた。そのまま、ルシファーはベルを蹴り飛ばす。

 ベルクは、飛んできたベルを受け止めた。


「大丈夫か?」


「なんとかね。人間なら死んでるよ」


 ルシファーは首をコキコキと鳴らして、こちらに近づいてくる。


「もう終わりにしようか」


 そんなことを呟くルシファー。


「もうオーギもレナも魔力が残ってない......。俺もあいつの動きを目で追うことすらできない......。どうすれば......」


「ひとつ僕に策がある」


 ベルはニヤリと笑いそう言った。



【魔法解説】


血液嗜食(ブラッディ・サイズ)

血から大鎌を作り出す魔法。

死んでさえいれば、自分以外の生物の血でも大鎌を作ることができる。

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