第64話 ルシファーの侵略
ベルク、オーギ、レナ、ライトの4人は、森の中にいた。ライトの魔法で、ルシファーから逃げたためである。
「町に戻らないとまずい」
ベルクはライトにそう告げる。
「いえ、町は危ないです。あの悪魔は町を潰す気でした。おそらく相当な数の戦力を持っています」
「だからって、見捨てるのは......。そうだ!ライトの魔法で、王都の騎士を連れて来れないか?」
「確かにそれなら......。やってみます。【空間魔法四つ目の進む道】」
ライトは空間の歪みを通り、王都へと向かった。
ライトの姿が見えなくなった時、1人の男が木の上から降ってきた。
「やあ、ベルク。また会ったね」
「ベル!もしかして、お前も町を......!?」
「ベルクは僕がそんなことをするような奴に見えるの?」
「いや、悪い......」
「いいよ、実際あの悪魔とは知り合いだからね」
「なんとかあの悪魔を説得できないか?」
「無理だよ。今ちょっと喧嘩中でね」
「それなら、一緒に戦ってくれたりは......」
「当然僕もそのつもりだよ。彼は残り7割ほどのベルクの負のオーラを奪いにくる」
「7割?」
「うん、ベルクはもう既に3割オーラを奪われている。そして、その分ルシファーは強くなっている」
「あの悪魔は心臓がどうとか言ってたが、心臓を取らなくても、オーラは奪えるのか?」
「心臓奪えれば、それが1番楽だね。でも、複雑な魔力コントロールさえできれば、胸に手をかざすくらいで奪えちゃうよ」
「それなら、ベルが俺のオーラを奪えば、あの悪魔に難なく勝てるんじゃないか?」
「それが1番楽だろうね。でも、君の命を考慮すると、それはかなり難しい」
「俺の命?」
「そう。オーラっていうのは、魂が体を持つ前に神から与えられるもので、魂と綿密に絡み合っているんだよ。だから、無理に剥がせば魂が傷つく。実際、体に変化がないだけで、既に少し傷ついている」
「う、嘘だろ!?あいつを倒せば治ったりとかしないのか?」
「申し訳ないけど、そんな都合のいいことはないかな」
「そ、そうか......」
「で、でも、これ以上何もされなければ、多分日常生活への支障はないよ」
「それならいいんだが......。あ、そういえば......
耳を貸してくれ」
ベルクがベルの耳元に口を近づける。
「神の兵士ってなんだ?」
「あ、言ってなかったっけ」
「ああ、一言も聞いてない」
「よく言えばベルクは、たまたま人間を救うヒーローとして選ばれたんだよ」
「え?だって俺は負のオーラがどうとかって......」
「実際ベルクは、前世で悪いことをやったんだろうね。でも、ベルク以上に前世で悪いことをしている輩は山ほどあるのに、ベルクの負のオーラを持っている者がいないのは不思議に思わない?」
「よくよく考えてみれば、確かに......」
「神たちは前世で悪いことをした人間に、莫大な負のオーラを与えて、転生させられるんだよ。それで、負のオーラは悪魔を誘き出すための釣り餌」
「それで誘き出した悪魔を俺が倒すってことか?だからヒーロー?だけど、悪魔に負のオーラを取られたらこっちが不利になるなんて、かなり欠陥じゃないか?」
「そうだね。それにもし僕が神で、本気で悪魔を根絶やしにしたいなら、負のオーラなんか付けずに、人間離れした力を与えて、神託で悪魔の居場所を伝えるよ」
「それならなんで......」
「僕が天使の頃、同じことを神に聞いたよ。そうしたら『一手で王の命に手の届く駒があっては、チェスは成り立たない』って言ってたよ」
「......?」
「神にとって現世は所詮ゲーム。人間は神たちの娯楽のための駒でしかないんだよ。だから、こんな回りくどいことをしてるのさ。あと、ベルクを選んだ意味は多分特にないよ。神たちは、前世に悪行をはたらいた人を、どう扱ってもいいみたいな風潮があるしね」
「ひどいもんだな」
話す2人の背後に、ぽっかりと穴が空く。その中からライトが出てきた。
「騎士たちは?」
「それが、国はこの町を見捨てるらしいです......。王都に守りをかためると言ってました」
ベルクがそう尋ねると、ライトは首を振って言う。
「どうにかしないと......。あ!思いついたぞ。ライト!少し手伝ってくれ!」
***
ライトの四つ目の進む道から、2人の人が出てくる。1人は甲冑を着た金髪の美少女、もう1人はボサボサの黒髪の気怠そうな男。
2人は、ベルクと目が合った途端、パッと表情が明るくなる。
「私を頼ってくれて嬉しいよ。ありがとうベルク」
「久しぶりだなー。会えて嬉しいぞ」
2人はヴァレリアとオスカル。
ヴァレリアは、帝都ハイルのギルドマスター。オスカルは、影操作魔法の使い手だ。
ベルクは町を救うために、今までの旅の中で会った友人たちの力を借りようと思ったのだった。
次に出てきたのは、狼の大皿の店主のアルフレッドと妹のロゼ。
ベルクはアルフレッドと熱い握手を交わす。ロゼは、成長したレナを見て少し困惑するも、ぎゅっとレナを抱きしめた。
他にも元女盗賊で今は王都シードで店を経営しているアーシュ、そしてその兄で盗賊のザーク、シーフ王国の元騎士団長アルス、元副団長ホト。
計8人の友人が、ベルクを助けにはるばる来てくれていた。
***
ベルクたちがカナイの町に着くが、まだ町は平和だった。
「おいベルク」
オスカルがベルクの近くに来て、小声で話す。
「どうかしたか?」
「お前の人脈どうなってんだよ。あれ、指名手配犯のアーシュ・ザークじゃねえか」
「そうだぞベルク。それにあの2人、シーフ王国のウンディーネ騎士団の団長と副団長じゃないか?」
ヴァレリアもオスカルに同調してそう言った。
「まあ、成り行きというか......」
苦笑いを浮かべるベルク。その後ろに緑髪の人が現れる。
「街の様子を見てきたけど、まだ悪魔は出てきていないよ」
背後から声をかけてきたベルに、ヴァレリアは青ざめる。
「べ、ベルク......なんでベルが......」
「ベルはみんなに危害を加えるつもりはないんだ。なんなら、この町を救うのに協力してくれる」
「そ、そうなのか」
ベルクは3人から離れ、みんなの前に立つ。
「みんな聞いてくれ。みんなには町に散らばってこれから出てくる悪魔たちを倒してもらいたい。それと、ライトは騎士団への連絡と、市民の避難を頼む」
みんなは散り散りに別れ、ベルクとレナとオーギとベルがその場に残っていた。
「2人とも、巻き込んでごめんな」
ベルクはレナとオーギにそんなことをポツリと言う。
「ベルクはレナを助けてくれたんだから、レナもベルクを助けるよ」
「そうだぜ!ベルクの敵は俺の敵だ!」
2人がそう意気込んでいると、空から声が聞こえてくる。
「感動的なシーンに邪魔して悪いが、死んでもらうぞ」
ルシファーがボロボロの翼で空に浮かんでいた。




