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君のための異世界放浪記〜奴隷猫耳少女は旅人に連れられ旅路を歩む〜  作者: みかん太郎
第1期 第6章 ティルシ王国編②
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第57話 第1試合


「なあベルク、あいつらの目的はなんやと思う?」


「わからない。でも、今は従うしかない」


「隙を見てディレクを奪えへんか?」


「いや、ディレクが俺たちにとって重要とわかった上で、ディレクを俺たちの前に出しているってことは、絶対に奪われないって自信があるってことだ」


 ベルクは向かい側の闘技場の観客席に捕まっているディレクを見て言った。


「そもそも、なんで1対1の戦いなんていう、まわりくどいことをするんやろな」


「俺たちをなるべくここに留めておくための時間稼ぎか?いや、そんなことをする理由がわからない。やっぱり、何かしらの儀式なんじゃないのか?」


 話すベルクとラウルの前、闘技場の中心で、殺気だったラバドルが対戦相手に睨みをきかせていた。


「めんどくせえからさっさと殺しちまおうかな」


 ラバドルは黒いナイフをホルダーから取り出し、両手にもって構える。


「ボソボソ......【水魔法 溶けるほど甘く(メルシングリー・スウィート)】」


 ラバドルは闘技場の真ん中で、背が高く髪の長い男と対峙していた。男の名は第4司祭シャイと紙に書かれていた。男は骨が目立つガリガリの顔で、青白い唇を振るわせ、何かを呟いている。


「なんつってんだ?ま、いっか。どーせすぐ死んで話せなくなるんだし」


 ラバドルは右足に力を込め、体を回転させる。

体と共に回転した刀身は、シャイの首を斬り落としてしまう。

 

 べチャリ。シャイの首は水のように溶けていく。


「魔法かよ。てことはまだ死んでないわけね」


 水で濡れた刀身を袖で拭い取り、シャイの残った身体を斬り刻む。だが、手応えは一切なく、とうとう身体全てが溶けて水となった。

 

 闘技場の床は石が敷き詰められてできており、その中にシャイだったものが入り込んでいった。

 僅かな水滴だけが残った床を、ラバドルは踏みつける。


「めんどくせぇ」


 ゴポゴポゴポ......。

 

 ラバドルの背後から変な音が聞こえてくる。


「そこか!」


 音が出る場所をナイフで突き立てる。ピチャッと水が飛んでくる。


「手応えがねえ」


 ラバドルはふと気がつく。ナイフについた水滴や、床に残った僅かな水たまりは一切動かないのだ。

 

 体から離れちまったせいか?とにかく、ナイフで攻撃すれば、少しずつ体を削れるのか。


「お前を倒すビジョンが浮かんできたわ」


 ラバドルは水が噴き出るおとを頼りに、飛び出してきた水を斬っていく。

 

 ゴポゴポゴポ。


 また背後から音が聞こえてくる。その方向に向き直り、ナイフを突き立てようとすると......。


「ガボボボボ!」


 音がしたのと違う方向から水が溢れ出してきて、ラバドルの顔を包み込む。ラバドルは思い切り水を掻きむしるが、顔を包み込む水は無くなることはない。

 やがてラバドルは動かなくなった。


「ボソボソ......」


 シャイは元の姿に戻り、ラバドルの顔を覗き込む。すると、カッとラバドルの目が開き、シャイの首をナイフで切り裂いた。


「油断して魔法を解くかと思ったんだけどな......。クソっ。まあいい。死ぬまで切り裂いてやるからな!」


 シャイの首は水となり、再び全身が溶ける。


 もう音には頼れなくなったラバドルは、四方八方から聞こえるゴポゴポという音で、混乱していた。


 どこから出てきやがるんだ......。


 そんなことを思っていると、また背後から水が吹き出し、今度はラバドルの手足を拘束する。


「お前の魔法は、一定距離まで離れちまった自分の体の一部はもう操れねえだろ?それなら、お前の体が蒸発しちまったらどうなるんだろうなあ!【空間魔法 模擬宇宙(シミュレーティッド・ユニバース)】」


 手足の周りの気圧が急激にさがり、水がブクブクと音を立てて沸騰する。


「うぐぁぁぁ!はぁはぁ、テメェも地獄に道連れだ!」


 ラバドルの手足は火傷で爛れ、その痛みで顔を歪めた。

 しばらくすると、水の姿だったシャイが人の姿へと戻る。シャイは右腕がなかった。


「もう水にはなれねえよな!てことは俺の勝ちだ」


 シャイは俯き、プルプルと震え出す。そして......。


「キエエエエエエ!」


 訳の分からない叫び声を上げて、ラバドルに襲いかかってくる。


「やっぱりテメェ1人で地獄に行きやがれ!」


 ラバドルは一瞬のうちにシャイの後ろにまわっていた。シャイは後ろを振り向き、再び襲い掛かろうとするが、ラバドルは振り向きもせず、ただシャイから離れるようにゆっくりと歩いていた。


「キエエエエエエ......。ふグゥ!」


 ラバドルは既にシャイを殺していた。シャイの首から血が噴き出し、シャイはその場で倒れ込み、動かなくなった。

 

「パストとか言ったっけ?余裕なくなってきたんじゃねーの?はっはっはっ」


 ラバドルはナイフをホルダーに差して、ニヤニヤした表情でパストの方を見た。


「ふふふ、別に勝敗は関係ないのです」


 パストはボソリとそう呟き、次の試合を始めようと皆に言った。



【魔法解説】


溶けるほど甘く(メルシングリー・スウィート)

自分の体を水にする魔法。

水が体から1m離れると、その水は動かせなくなる。


模擬宇宙(シミュレーティッド・ユニバース)

定めた空間内に真空に近い状態を作り出す魔法。

空間内に水があった場合、急激な気圧の低下により沸点が下がり、室温でも沸騰してしまうだろう。

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